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銀婚式のお祝いをどうしようか迷って

 今年銀婚式を迎えるので、少し特別なことをしたいと前から話していた。

 住んでいたニュージャージーからほど近いニューヨーク市内で挙式したので、夫はニュージャージーやニューヨークを旅したいと思っていた様子。

 私は21年前の9.11の時から、行きたい気持ちを失ったまま。

 あの頃の私はほんの少し働いただけで昼夜問わず動悸がおさまらなくなり、その後祖父を亡くし、初めて自分で飼って育ててみたハムスターを亡くし。結果、自律神経失調症をひどくしてしまった。
 その後息子ができてふり回されていると、当時の気持ちも落ち着きつつあったのに、前の政権の時からアメリカに行くのが不安になってしまい。
 ただ迷う余地はあったのに例の感染症。
 はてさてどうしましょうね。と昨年から何となくの予定すら立てられない。

 そもそも。
 ビザの関係で私たちの入籍は5月だった。だけど挙式は8月。

 いつもお祝いが定まっていなかった。

 5月は家で軽く乾杯。8月にちょっとオシャレして外で乾杯ーが、よくあるパターンかな。決めていたわけでもなくて、「なんとなく」になっていた。

 夫は、私の、ゲームや映画など趣味関連の贈り物や、お菓子のおみやげなどにはマメで、急にプレゼントしてくれる。
 ごくまれ~~~にアクセサリーもサプライズでくれる。5年に1回もあるかないかなので、本当の意味での「サプライズ」。

 普段のプレゼントは、だいたいが誕生日なんかに私が「これがいい」と直接伝えるパターン。そんなに目が飛び出るような値段の物は家計にも影響出るからねだらない。
 ただ今回は花束が欲しくてね。ニューヨークで歩いている時に道ばたで、急に私の大好きなチューリップの花束をプレゼントしてくれたのは印象的だったけど、それっきりかしら。
 あとは母の日に息子に耳打ちして息子経由で渡してくれたけど、息子が小学生いっぱいくらいまで。

 25年前の挙式の花は、私がこだわりぬいた。その季節、ニューヨークで仕入れやすい物で完ぺきではなかったけどイメージには沿っていた。

 ピンクは小さい品種にしてオレンジや茶色っぽいバラを混ぜて、緑を見せてほしい。形を決めない自然な花束にしてほしい。などと細かく要望していた。下は太いリボンでまとめてあるだけ。とにかく花束が好きだ。私はそういうところはすごくありふれている。

 だから今年は夫に花束をねだっている。えーとそれをもらうのはもう少し先かな。

 さて。あとはどう祝うか。

 この田舎街に素敵なレストランは……あるにはあるけど、特別感のある所ってなかなかない。気に入っている所は値段もお手頃で、学生さんたちも楽しめる気軽な所。
 なんだか日常になっちゃうかあ。しかたないなあ。行き慣れた所にするかあ。とか惰性で考えていると、全然決まらない!

 夫には「なにか欲しい物ないの?」と聞くと「こういうのって、僕は時間とか思い出とかそういうものが良いなあ~」と言う。

 ああ。やっぱり特別感がほしい。

 5月は結局特に何もなくて終わったのでちょっぴりすねた。
 でもさすがに若い私たちではないので、すぐ「まあ良いか」ってなっちゃう。この「まあ良いか」はラクなのだけど、なかなかくせものだ。
 こういう大切にしたい思い出なんかも「まあ良いか」で過ぎ去ってしまいそうだからだ。
 私の両親は今年55年目のはずで、素敵なホテルの料亭に食事に行ったそうだ。うらやましいではないか。
 
 夫に「過ぎちゃったよ~」と話していると、唐突に提案された。

 札幌でお祝いしないかい? と。

 札幌出張は今年二回ある。

 提案された時、一回目の札幌出張には同行すると決まっていてもう予約済みだった。
 もちろん私の交通費や宿泊代、滞在費は自費。以前暮らしていた札幌がとても好きなのと、息子と晩ご飯どきに待ち合わせて顔を合わすのを楽しみにしていた。

 でもあともう一回は、一回目と期間があまり空いていないし経済的にも私はえんりょすると言っていたのに。

 えええ……行きたいけど。でもぜいたくじゃない? お金だって出ないよ。貯めないと減る一方になるよ。昨年は息子の大学入学とひとり暮らし開始もあったし。何かとついて行ったり様子見に行ったりとすごい使っちゃったし。
 とかごにょごにょ言っていたら「僕のヘソクリから出すから、札幌でお祝いしようよ。その出張の時だって、お祝いの晩ご飯くらい家族の時間取れるよ」と言う。

 ……!
 まー-よー-うー―――――!!

 夫はニュージャージーやニューヨークに行きたいからとか、ちょっとしたファンにかけるお金をちょこちょこ貯めていたらしい。
 でもしばらくはニュージャージー行きはダメそうだし、ファン(と言ってもおじさんです)のためにはチャンスを逃したし。
 「そんな顔見知りでもないおじさんのためにお金を出すくらいなら、愛する妻のためにへそくり使った方が良いじゃないか」とか舞台俳優のように大げさにどこか宙を見つめてこぶしを握って言うではないか! あれっ。こぶしは握ってなかったっけ。

 「いつかまた使う機会のために取っておいたら?」と言うと「いつかなんて来ないかもしれないじゃない。僕たちいつか死んじゃうんだよ。それがいつかもわからないよ」と言う。

 そうだね。最近、死を身近に感じてしまうニュースも多いものね。それにちょっと前まで元気だと思っていたあの人だってこの人だって……。二人でそんな話をする機会もほんの少し増えてきた。いつ病気になって動けなくなるかわからない。まわりの話を聞いているとそんな遠い話じゃないよね。

 なので結論は。

 「ええい。ぜいたくでも行くぞ!」

 というわけで6月と7月、行ってきたんです。感染急拡大の前で、まあ良かったのかも。まだ用心したかったので、誰かと会う約束するとかそういうことは慎重にしたためできなかったけど。ちょこちょこレポート書き始めているんで。
 たまっている映画の感想文と合わせて、また積極的に載せていきます。


読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。