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[イベントレポート]いろいろねいろJAM① ミュージシャンたちの入念な準備~「ひとつのスープ」を作るために

川崎市では、「いろいろねいろ」をキーメッセージに、市内の学校、施設、イベント等の身近な場所で、多くの市民がインクルーシブ音楽に触れる活動を展開しています。
かわさきジャズは昨年、障害のある人の音楽アクセス向上に取り組む英国のアート団体ドレイク・ミュージックの協力を得て、東京交響楽団との協働により障害のあるなしに関わらず誰でも参加できる音楽ワークショップ「かわさきBRIDGEオーケストラ」を実施しました。今年もその続編として、川崎市との協働により「いろいろねいろJAM」を10月14,15日に開催。その様子をお届けします。(この記事は全3回の第1回です)

日本の6名のミュージシャンと、英国から専門のファシリテーターが参加

このプロジェクトは、「障害のあるなしや楽器経験の有無に関わらず誰もが参加できる音楽ワークショップと公開ライブ」です。大勢で音楽を演奏するには、参加者に楽譜を配布して練習してきてもらうという方法もあります。しかしそれでは、「楽譜を読む」「楽器を楽譜通りに演奏できる」というスキルのない人は参加しにくくなってしまいます。このプロジェクトは、音楽を予定通りに演奏することではなく、楽曲のグルーヴを共有し、その人の表現やその場で起こる即興的なアイデアをすべて許容して、”間違いのない”その時だけの音楽を作り上げることが目的です。間違えたら恥ずかしいのではなく、こうやって自分も音で表現できるんだ!と思ってもらえることを大事にしています。
そして、それをお客さんの前で披露し、ステージとして成立させるためにはプロフェッショナルなミュージシャンのサポートが不可欠です。そのため、今回もクラシック、ジャズのミックスによる6名のミュージシャンにファシリテーターとして参加していただきました。
演奏や教育の経験があったとしても、このようなワークショップを誰もができるわけではありません。昨年に引き続き、今回も英国から障害のある人との音楽活動を専門的に行っているベン・セラーズさんをお招きし、ミュージシャンへのトレーニングセッションを行いました。

いろいろねいろJAM 参加ミュージシャン

ベン・セラーズ(ドレイク・ミュージック )
南條 由起(ヴァイオリン)
新澤 義美(打楽器・東京交響楽団)
北山 絢萌(スティールパン)
相澤 亙(ピアノ)
佐藤 央基(ドラムス)
若井 敦彦(ベース)

入念な準備を重ねて臨んだトレーニングセッション

今回参加したミュージシャンは、ワークショップのファシリテーション経験が豊富なメンバーや、学校での教育経験のあるメンバーもいれば、いろんな人と一緒になって音楽をつくるという経験が初めてだったり、これまで演奏してきた音楽もジャズ、クラシックとバックグラウンドも様々。初めてのミーティングの前に、夏ごろから個別やグループで日英をつないだオンラインミーティング(時差があるので夜中のことも!)を重ね、トレーニング当日を迎えました。

この日は午前10時から午後19時すぎまで、長時間にわたるトレーニングセッションが行われました。
ベンさんが最初に伝えたことは、「みんなで一つのスープを作る」ということ。それぞれが持ち寄った材料を平等に使って美味しいスープにしましょう、と。個性を活かした音楽づくりの原則を素敵な言葉で表現されていました。

翌日には一般参加者を迎えての音楽づくりワークショップを行うので、真剣なリハーサルが続きます。ただ教えてもらうだけでなく、アイデアを出し合いながら進めていきます。


誰かと音楽するときの、心から感じる「楽しさ」をシェアしたい

長時間にわたり、初めて取り組むベンさんとのセッションとリハーサルを終えたミュージシャンたちは疲労困憊かと思いきや、異口同音に出てきた言葉は「楽しかった!」。何人かはそれが音楽を始めたときの最初の動機であったし、初心を思い出したという話も。明日、初めて会う参加者のみなさんとも、「誰かと一緒に音楽する楽しさ」を伝えたいという思いを共有してこの日は解散しました。

インクルーシブ音楽プロジェクト「いろいろねいろJAM」|かわさきジャズ (kawasakijazz.jp)