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[ライブレポート]Double Rainbow=小沼ようすけ×宮本貴奈 with special guest 沼澤尚

日本を代表するトッププレイヤー、ギタリスト小沼ようすけと国際的に活躍するピアニスト・作編曲家、宮本貴奈によるアコースティック・ジャズ・デュオのDouble Rainbowが、かわさきジャズ2023の公演【Double Rainbow=小沼ようすけ×宮本貴奈】に登場。スペシャルゲストに多才なスーパードラマー沼澤尚を迎え、さらに特別な一夜となった。

19時。老若男女のオーディエンスの期待が溢れるなか、拍手とともにパープル系のワンピースにシルバーラメのアクセントが美しい衣装の宮本貴奈(p,vo & E.Org)と、グレーのスーツというシックなスタイルで小沼ようすけ(g)がステージに登場する。

Double Rainbow

1曲目は、宮本のグランドピアノから放たれる音色、小沼(g)の温かいギターサウンドから、何かが始まるような期待感が感じられる「The Dolphin」。小粋なリズムとともに海辺の朝のような情景が目に浮かんでくる。

続いて、オレンジの照明に照らされ穏やかなギターの旋律が心地よく包んでくれる、小沼作曲による「The Unchaging Road」。宮本による寄り添うピアノサウンドと、曲の後半の泣きのエレキギターが叙情的である。

 温かいオーディエンスの拍手を受け、宮本の「皆さん、こんばんは!Double Rainbowかわさきジャズ、楽しみにしてまいりました!」と挨拶し、2人がお互いを紹介。小沼のソロツアーや宮本のオルガンついてのトークにオーディエンスも楽しそう。

和やかなムードのなか、2人のセッションからジャズの名曲「Fly Me To The Moon」へ向かう。ウキウキするようなリズムが会場を優しく包み込み、Double Rainbowの演奏で聴ける大好きな曲、この瞬間に嬉しくなる。

オーディエンスから盛大な拍手が溢れ、小沼が「ここで、スペシャルゲスト、コロナ禍でもライブができていたのは、この方のおかげだと思います。」と沼澤尚(dr)への想いを語り、宮本と沼澤が初共演だということにも触れ、沼澤を紹介する。

沼澤 尚

 トリオ編成での1曲目は、宮本のカウントから始まるハービー・ハンコック作曲「Tell Me a Bedside Story」。この曲は、Double Rainbowのアルバムに収録されており、沼澤が加わることによって、さらに新たな世界観で力強さが感じられる一曲になっていた。続けて、宮本作曲「陰陽フェルマータ」でも、宮本の哀愁漂う歌声に心地よく引き込まれていく。

宮本貴奈

宮本が「皆さん、楽しんでいらっしゃいますか?」の問いかけに、オーディエンスが大きな拍手で答えると、小沼作曲「Flyway」でファーストセットを締めくくる。曲全体を包み込んでくれる小沼のギターの音色と、宮本の重厚感あるオルガン、沼澤の繊細かつ力強いドラムテクニックに圧倒されるのであった。

 休憩後、拍手とともに「音楽のまち・かわさき」マスコットキャラクターのミュートンのぬいぐるみと一緒に、宮本が登場し、今年4月より、ミューザ川崎シンフォニーホールのホールアドバイザー(ジャズ部門)に就任していることなどトークしていく。彼女が大好きで素敵な八ヶ岳の森にインスピレーションを受けた宮本作曲「Fragrant Forest 香る森」からセカンドセットの1曲目を飾る。続いて、小沼が登場し、彼の初のソロ最新アルバムから小沼作曲「Keisho~継承」を奏で、卓越した演奏技術をみせていく。

小沼ようすけ

そして沼澤も加わり、チック・コリア作曲「500 Miles High」。宮本の歌とオルガン、小沼のギターと沼澤のハイハットのグルーブ感が素晴らしく、楽曲の中に吸い込まれていく。

宮本の軽快なオルガンサウンドから始まる宮本作曲「Because It’s Friday」は、3人が特に楽しそうに演奏していて、最後は、みんな笑顔だったのが印象的であった。続いて、「After the Rain」では、赤い照明とともに宮本のピアノから小沼のエレキギター、沼澤のドラムが重なって怪しげな雰囲気の曲調で展開していく。そのまま宮本作曲「Rainbow」では、小沼のギターメロディーとともに宮本がオーディエンスに優しく微笑みかけてピアノ演奏し、曲後半では沼澤のバスドラムの力強さのサウンドからクライマックスへと向かう。

 盛大な拍手に迎えられ、宮本と小沼が登場し、かわさきジャズを通して、新しいとびらが開いたことや今回の公演のPAスタッフ、Double Rainbowのプロデューサーへの感謝の気持ちを伝える。沼澤を紹介し、ハロルド・アーレン作曲「Over the Rainbow」でアンコールを締めくくっていく。

ピアノにチョコンと乗っているのが「音楽のまち・かわさき」のマスコット、かわさきミュートン

宮本は、ピアノだけでなくピアニカも駆使し、オーディエンスに微笑む。終演後、たくさんの歓声と拍手に包まれるなか3人で肩を組む姿は、まさにRainbowがかかっているようであり、私やオーディエンスの心にまでその希望に満ちた明るい虹が届くようにすら感じられた。

公演中のMCで宮本が「どこか別世界に連れていってくれる」と言っていたのが印象的だった本公演。いつか、またこのトリオの演奏が聴けることを願って。

Text:Chisato(かわさきジャズ公認レポーター)
Photo:Tak. Tokiwa

●公演情報

「かわさきジャズ2023 Double Rainbow=小沼ようすけ×宮本貴奈」
日時:2023年11月1日(水)開演19:00
会場:ラゾーナ川崎プラザソル
出演:小沼ようすけ(g)、宮本貴奈(p,vo & E.Org)、Special Guest:沼澤 尚(dr)

●セットリスト

01. The Dolphin
02. The Unchaging Road (小沼ようすけ作曲)
03. Fly Me To The Moon
04 .Tell Me a Bedside Story
05. 陰陽フェルマータ(宮本貴奈作曲)
06. Flyway (小沼ようすけ作曲)
<INTERMISSION>
07. SOLO(貴奈)
Fragrant Forest 香る森(宮本貴奈作曲)
~SOLO(ようすけ)
KEISHO (小沼ようすけ作曲)

08. 500 Miles High
09. Because It’s Friday(宮本貴奈作曲)
10. After the Rain
11. Rainbow(宮本貴奈作曲)

Enc. Over the Rainbow