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制作メモ おじさんのミノタウロス

毎年、年末年始に干支の木彫りを作っている。戌年からはじめて今年は辰年。去年までは実在の動物だったけれど、今年作った龍はついに想像上の生き物だった。
実在の動物以外にも、こんなふうにもっと想像上の生き物、怪物、モンスターも作りたい。

モンスターで何がよいかいろいろ考えたけれど、今回はミノタウロスにしてみる。ミノタウロスは人間をたべるモンスター。
以前、人を襲ってるヒグマをかわいく作ったらプチ炎上した。私としては、「かわいくキャラクターとして消費される動物」「人間の感情とは関係なく動物は動物として生きている」といったようなことなどを作品にこめたつもりだった。
なので今回は、明らかに人を襲う化け物をかわいく作ったらどうなの?というような意識もあって作ってみることにした。

リサーチ

ミノタウロスは、ゲームなどのモンスターとしてもおなじみの半人半獣の怪物。頭が牛で体が人間。描かれているものによっては尻尾はあったりなかったり、手足も蹄になっていたりなっていなかったり。

元のミノタウロス自体はギリシャ神話の怪物で、クレタ島の迷宮ラビュリントスの奥にいる。人肉食するので迷宮に閉じ込められて、9年ごとに7人の少年、7人の少女を生贄として得ていたが、英雄テセウスに倒されることになる。
ミノタウロスは、クレタ島のミノス王の義理の息子?でもある。ミノスは王になる前、海王ポセイドンから白い雄牛を授かり、その雄牛の神威で王になった。そして、その雄牛はいずれポセイドンに生贄に捧げる約束であった。しかしミノス王は雄牛を気にいり、別の牛を生贄に捧げた。怒ったポセイドンは王の后が雄牛に欲情するように呪いをかける(?!)。后は名工ダイダロスに雌牛の模型を作らせ、その中に入り……そして生まれた子がミノタウロス。
なんだかかわいそうな生まれのミノタウロス。そりゃ素直にはそだたないわ。

ちなみにギリシャ語でミノタウス、ラテン語だとミノタウス。

デザイン

顔が牛なだけではなくて、やっぱりたくましい上半身にしたい。首や肩の筋肉もモリモリにしたい。
人間の首の位置に牛の頭が来るより、頭は前に少し落として牛っぽさをだしつつ、その首を支えるために僧帽筋や背中の筋肉がたくましくなるようにしよう。

最終的にはこんな感じ。

首肩腕のシルエットの一体感や、逆三角形の体も意識。
上半身と比して小さい下半身だけれど、しっかり上半身を支えるように、筋肉をつけて、直立ではなく少し足を拡げて立つような感じに。角はどちら向きにひねらせるか悩んだけれど、少し前に飛び出るような感じに。

描いてみたら、ポロシャツ着てそうなので着せてみた。
急に親しみのもてるおじさんという感じになった。どんな人なのかキャラクター性も感じるようになった気がする。それにポロシャツでギチギチの体の感じも出せでそう。

素朴さと力強さとかわいさをかんじられるようなった。

制作

材料に下描き。今回は色塗りするつもりなので材はバスウッド。

バンドソーでガガッとノコ入れ。ノコギリで細かく切り落としてしまっても良いけれど、最近はこんなふうにノコ入れて平刀などで削ぎ落とすこちらのやり方を選ぶことが多い。ノコ入れ自体がやりやすくなるのよね。

バリバリっと正面からと側面からの形に平刀で削ぎ落とす。

顔の塊を出す。

なんとなく耳や体も出す。

もう少し彫って髪の塊感も出してみた。

前髪や角ももう少し出したところ。

もっと彫り込んだところ。だんだんとシャープになっていく。

ざっくりと彫れてきたので、服のディティールを彫り出す。木彫りは削り出すことしかできないので、完全に形がいいバランスになる前に、ディティールをつくりながらバランスを取っていく。(彫りが足りなかったらディティールごと削りおとすことはできる)

ポロシャツの襟やポケット、袖を彫り出す。肩の縫い目の部分を彫り込んだ方が筋肉質にみえそうなので彫ってみる。
グーグル画像検索で「ポロシャツ ガチムチ」「ポロシャツ マッチョ」「ポロシャツ おじさん」など検索してさんこうにした。

彫り終わったところ。
ベルトやのベルトループはうるさくなりそうなので彫らないことにした。上半身と下半身のディティールのバランスを考えてのこと。彫るのもめんどそうだし。
ポケットのラインとチャックの部分だけ彫って「ズボンらしさ」がでるようにはした。
靴も履かせるか悩んだけれど、服を着ている感じがでるように、ほんの少し細く段差を彫って履かせることにした。

彩色、色ははじめから緑のポロシャツのイメージだったのでみどり。ズボンはブルージーンズにするか茶色にするか悩んだけれど、茶色に。
肌の部分は色を塗らずに仕上げて、服と肌の違いを出してもよい気がしたが……やっぱり塗ることにした。

完成

やさしさ、つよさ、ぼくとつさ

肩周り、背中周りもバキバキ。

狙ったわけではないけれど、ガチャの動物たちと並べてちょうど良いサイズ感だった。

木彫りの犬たちともちょうど良いサイズ!
小型犬愛好家のミノタウロスになった。

並べるだけでも、このミノタウロスさんがどんな人か想像されて、更に日常なども想像できるようになってくるようなきがする。

こんな風に物語性が生じるような作品づくりも面白いかもしれない。物語そのもでなくても、説明しきらないでも、見る人がいろんな想像力を働かせたくなるような作品づくりをしたら面白いかもしれない。

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