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なれないお年玉

お笑いコンビ、ランジャタイ伊藤さんから電話があった。

「お年玉あげるから遊ぼうよ」

実は友達欲しいけど上手く伝えられない、金持ちボンボン少年のような誘い方だった。

いままで一度も伊藤さんからお年玉を貰ったことがない。

そもそもゴリ安な定食屋さんに一緒に行っても どちらが支払うか、先輩後輩問答無用。

極限まで財布を出し合わない、お間抜け武士の居合いみたいな事も多々あった。


昔一度、すき焼きやろうよとお家に招き、伊藤さんが買ってくると言ってた和牛。

手ぶらで来たので             「何も持ってきてないじゃないですか!おそろしい!」

そう告げると                ポケットから、ポリ袋の片隅に牛汁がタポンタポンに溜まり、しなしなになった和牛を一枚ひねり出してきた。  

「はいこれ」    

余りの衝撃に卒倒しかけた。  

伊藤さんは嘘か誠かも分からないこんなお間抜けをいつも繰り返す。

お笑い芸人という道があってよかった 

本当にそう思うし、とても羨ましく思う。

たしか7年くらい前?初めて会った日も

「伊藤の家遊びにいくじゃんね」       ガロインというコンビの薗田さんに連れられ  当日、中野にあった伊藤さん家に向かった。

尋常じゃない妖気を放った、築年数が半端ないおんぼろお家だった。

2階に上がる階段は武者返しのようであり    どんな将軍が住んでるか興奮してならなかった。

戸をあけると、将軍は床几(しょうぎ)ではなく、溢れ返ったゴミの小山に鎮座していた。

荒「あ、荒波といいます」

伊「はい」

はい、、、か。


なかなかのVネックを着てるなあと思った。

そしてとにかく、不思議領域に満ち溢れた、目がキラキラした、不思議な髪型をした子供宇宙人に思えた。

たぶん悪い人ではないんだなあと


「ぽっきんアイス食べる?」

そう突然言って将軍は立ち上がり、ギチギチで窮屈そうな冷蔵庫空けた。

「ああああああ」


力の抜けたツッコミも虚しく         冷蔵庫の物がどっさり外に飛び出した。

意外に気にすることなくぽっきんアイスを拾った。

伊藤さんがぽっきんアイスを折ろうとした。 

↓(これです)

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(ぽきゅ)

「あ、ああああああああ」


まだ完全に固まりきってない、アイスの汁が、 レーザービームのように吹き出した。

そして両目めがけて真っ直ぐ飛んでいった。

「ひやああああああ」


完璧に痛がっていた。

見知らぬ人間に、突然ひねりっ屁をかけられた表情だった。

とんでもなく笑った記憶がある。

仲良くなった。

「お年玉あげるから遊ぼうよ」

年月だけとてもたった            高円寺の少し築浅なアパートにお年玉を貰いに向かった。

とっ散らかっているけど、前よりは少しこざっぱりした部屋です

ポケットからは、ポリ袋に裸でねじ込められた和牛ではなく

落書きのされた綺麗なポチ袋が出てきた。


信じられなかった              余りの衝撃に卒倒しかけた。

その場ですぐさま空けてしまった。

お金が綺麗に折り畳まれて入っていた。


けちんぼ合戦を続けていた          あの伊藤さんから、、信じられなく嬉しかった。


「何が起きたんですか?ありがとうございます。これは嬉しすぎます。なんで今更?」


「国ちゃん(相方)が愛されてる理由が分かったよ」

「はい?」


「俺も愛されるよ」


なるほど、、、


理由はどうでもよくて            嬉しかった出来事だった。

拗ねてヘソ曲がりでついてないさと運を呪っても

何の先も読めない不意打ち続きの世の中なら         

誰かが笑って喜ぶならと動きだせたら

ようやく前より、素直に笑えて生きれそうです。



このお金は未来、伊藤さんの髪がパサパサになっても大丈夫なようメンテナンス代としてとっておきます。

荒波タテオ












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