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こどもの体格が平均よりだいぶ大きい。出産から思春期までのこと。

赤ちゃんが小さく生まれたり、お子さんの体重が増えず悩んでる人からしたら、
何言ってんだ、と腹立たしく思われるかもしれないけども、
すごく大きいのもそれはそれで苦労はあった。
健康上の心配が少ないとはいっても、多数派と違うと何かと不便が生じやすい。

こどもが生まれたときの体重は、平均よりは大きい、くらいだった。
私は学校で小さい順に並ぶと前から三分の一辺りだったので、
平均以上の子が生まれるとは予想外だった。

出産予定日の少し前、骨盤のレントゲンを撮った。
もしかしたら赤ちゃんの頭が大きくて骨盤を通らないかも、
と医師がみたからだと思われる。
レントゲンの結果、一応大丈夫、という判断で普通分娩の予定になった。
こどもは予定日の9日後に生まれた。
ナースステーションでは帝王切開になるのではと噂になっていたらしい。
帝王切開にはならなかったが吸引分娩で、お腹もグイグイ押されてやっと出た。
出血も多めだったから、お産が終わって分娩台の背もたれが起こされた瞬間に
貧血で目の前が真っ暗になり、なにも言わなくても顔色を見た看護師さんが
「あ、車いす持ってきますね」と言い、個室まで送ってくれた。
普通は歩いて戻るものらしい。
母子手帳には“児下降不全、児心音低下にて吸引分娩”と書かれている。
こどもの方も大変だったようだ。
吸引で吸われた所の頭がとんがっていた。何日もかかってだんだん直った。
難産の定義は知らないけれど、私の気持ち的にはあれは難産だったと思う。
しかし破水して陣痛促進剤を点滴され、かかった時間は5時間だったため、
夫は短時間だから安産だったと言い張り、その話の度に口論になった。

「この細い(?)腰でよく産んだわ」と助産師さんに言われたほど、
私にしては大きい子を産んだと思った。余裕で3kg以上あった。
私も夫も生まれた時は小さめで3kgなんて全然なかった。
私の母も夫の母も小柄だ。
孫を初めて抱いたおばあちゃんたちは「こんなに重たいの?」と驚いた。
しかしこの時はまだ新生児の平均よりやや大きかっただけ。

その後、こどもはぐいぐい大きくなった。
たぶん、もっと大きくてタフなお母さんのお腹に入ってたら、
もっと大きく生まれてたんだろう、と思うくらいの勢いで。
私はどちらかというと貧血体質で、
胎児にとっては栄養も酸素も必要最低限だったのかもしれない。
貧血ぎみの私の母乳では全く足りないのでミルクをグビグビ飲んで育った。
眠りから覚めるたびに空腹で耐えられないかのように大音量でギャーと泣いた。
ミルクの支度が遅いと地団駄を(宙で)踏んで怒って泣いていた。

1か月検診で医師が「でっかいなー!」と言った。5kgちょっとあった。
3か月で7kgを超え、
1歳で13kg、80cm
3歳で23kg近くなり、105cmを超えていた。
母子手帳の身長体重グラフは、色のついた幅の中に九十何%が入るらしい。
こどものグラフは最初こそその中からスタートしているものの、
すぐに飛び出して、その後はその範囲の上をずっと行っている。
私「じゃあこのグラフの上と下に数%ずついるってことか」
夫「そうだね。100人赤ちゃんがいたら」
私「大きい順でベスト3に入るくらいってことか」
夫「そういうことだね」

このころ悩んだのはベビー服。
0歳の最初のうちは着物みたいな形の服なのでよかった。
ちょっと大きくなって上下別の服になり、上はTシャツ、
下はズボン型のものを着せたい時期に困った。
市販のもので着れるものがない。
大きいなら大きいサイズを買えばいいじゃないか、と思っていた。
おむつなんかはそれでいいのだけど、服はそうはいかなかった。
普通の体格で身長80の子と、ずっと早く80になった子は違う。
体の各部の比率が全然違う。
赤ちゃんは月齢が小さいほど頭でっかちで手足が短い。
それをそのまま拡大した形で大きいんだから、大きいサイズを買っても、
身長に合わせて買ったら形が合わなくて細くて着れないし、
幅に合わせて買ったら袖もズボンも長すぎる。
Tシャツは、大きい頭が通るよう襟ぐりの大きいのを選んで袖をまくった。
ズボンは裾を折り上げるにしても長すぎた。
ドリフのコントの志村けんと加藤茶の松の廊下みたいになってしまう。

幸いだったのは私の母が洋裁が得意なことだった。
こどもが5歳くらいまで、ズボンは“おばあちゃん工場”に頼んでいた。
最初はかぼちゃパンツみたいな短いのから始まり、
サイズが合わなくなるたびに3枚4枚づつ作ってもらった。
母は嬉々として採寸していき、生地やワッペンを選んで作ってくれた。
工場ならぬ実家のミシンの小部屋で。

6歳くらいでやっと市販のズボンがはけるようになった。
でも幼児向けのゴムですぽっとはけるタイプはサイズ的に無くて、
ふつうのジーパンの小さいサイズをはいた。
10cm以上裾を折り上げてまつり付け、背が伸びると折り直しながらはいた。
丈がちょうどよくなる頃にはウエストがきつくなって買い替えた。

服の悩みが解決する頃、逆にオムツが悩みになった。
昼のおむつは3歳4歳で取れたものの、おねしょは続いていて、
これ以上大きくなったらビッグのおむつでも履けなくなってしまう、
大人の介護用おむつを履くしかないのか?と調べて悩んでいた。
これはギリギリでおねしょがなくなって、子供用おむつまでで済んだ。

足も大きいので靴も困った。
子どもが履きやすいマジックテープでペタッとできるデザインが、
サイズが上がると少なくなり、ひも靴が多くなる。
まだ蝶結びできないし、ただでさえ身支度にモタモタする子なのに、
と履きやすい靴を探すのに苦労した。

おんぶ紐は耐荷重が重いものを探して買ったけど、
首が座って使いたい時期にはほぼ使用できる体重の上限だった。

チャイルドシートは新生児用を早々に卒業し、
その次の小さい子用も早めに使えなくなり、
小学生くらいが使うタイプに変えたものの、
これも体型の違いで、カーブがなんか合ってないね、しょうがないけど、
という感じで使い、そのうち、もうチャイルドシートいらないね、となった。

抱っこやおんぶももちろん大変だった。
乳児期は、横抱きで立って抱いてゆらゆらしたり室内を歩いてあやしていると、
腕から肩背中はずっと筋肉痛、腱鞘炎の手前みたいな感じで、
こちらが重さに慣れてくるころには、こどもはさらに大きくなっている。
筋肉痛、慣れる、重くなる、筋肉痛、の無限ループに思われた。

ある日、立っての抱っこに疲れ、私が体育座りをして膝にこどもを乗せ、
ギッコンバッタンして遊んでいたら、私が後ろにぱったんといってしまい、
こどもが胸と腹の上にぺったりと乗っかり、重くて動けなくなった。
私「う、うう」
こども「うきゃきゃ」
私「ぐうう」
夫「おう、お母さん倒して遊んでんのか。楽しそうだな!」
私「ぐえええ」
こども「うきゃきゃきゃきゃ」
私「・・・」
夫「ん?なんだ?助けて欲しいのか?よいしょ」
私「はああー。窒息するかと思った」
夫「お母さんも楽しんでるのかと思ったよ」
私「自分は柴犬なのに秋田犬産んじゃったみたいな気分だよ」
夫「ああそう」

幼稚園では年少さんくらいだと泣いた子などは先生に抱っこされているけど、
うちのこどもは先生に「重いからごめん先生無理だけど」と言われていた。
背も大きいし(だいたい2学年上のイメージ)、プクプクしてたから。
私は乳児期からの延長上で抱っこしていたけど、
年少の頃は「よいしょ!」だったのが、
徐々に腰を入れて「ハッ!よっこらしょ!」と気合いが要るようになり、
さらには重量挙げのように「フン!ハアーッ!」とやるようになり、
そのうち7歳くらいでは、腕力的にも身長的にも抱っこは無理になってきた。
おんぶしようとしても、しゃがんだ姿勢から手をつかないと立てなくなり、
手をついても1ミリも上がらなくなり、上げるより潰れそうになり、
「ごめん、もう無理だ」とおんぶと抱っこを卒業した。
こどもは残念そうだった。私も残念だった。
もっと力持ちだったら、こどもが望む限り抱っこしてあげたかった。
体は飛びぬけて大きいけど、心は普通より幼いくらいなので。

地元では小学校に入ると交通安全のためヘルメットがもらえる。
もらった時からすでに被れるギリギリのサイズだった。
ランドセルがちっとも大きく見えない。
3年4年生と同じくらいの身長。30kgを超えていた。
しかし運動はすごく苦手なので動きは未就学児に近い。
頭でっかちで、背が高くて重心が高く、運動が苦手、なのでよく転んだ。

そろそろ自転車の練習をしようかという頃には、
ちょうど良いサイズの自転車には補助輪付きのものはなかった。

10歳何か月かくらいで急に声が低くなった。
あれ?と思ってるうちにお父さんより低い声になった。
声変わりって中学生くらいのイメージでいたから、もう?と思った。

9歳からホームスクーラーだったので学校の健診に行きたくなくて、
近所のクリニックで健診をしてもらったとき、
大きすぎるし思春期が早いから専門医に診てもらったら、と言われた。
ネットで調べると、思春期早発症、というものがあるらしい。
そうなのかな?年齢的にはそれに当てはまると言えなくもない。
若干不安になったけれども、目の前のこどもは普通に元気。
それに、思春期早発症を検索すると、背が小さいまま成長期が終わってしまう、
という問題が主なようで、うちの子はまだぐんぐん伸びてるし、
この辺で止まっても成人男性として変じゃないくらいすでに大きい。

いつも診てもらっている児童精神科の発達外来の先生に、
生まれてからの身長体重グラフを作って持っていって聞いてみた。
「うーん。この人の場合、急に大きくなったわけじゃなくて、
ずっと大きいですよね。グラフの線も自然に上に、+2SDに沿っているし、
おそらく、ただ大きいだけじゃないですかね?
お父さんもお母さんもそんなに大きくないのに、なんでか分かりませんけど。
この感じだとまだ伸びそうですよねえ。
大きくなりすぎるほうだと、先端巨大症っていうのがあって、
ジャイアント馬場みたいに顎がぐっとのびたりするんですけど、
そういう顔つきにもなってないですしねえ。
まあ、様子見でいいんじゃないですかねえ」
ただ大きいだけ。やっぱりそうなのか。
仮に検査するとなると大きい病院で結構大変かもしれないというので、
様子見でよくて良かった。
自閉症で偏食の子の検査入院なんて心配事の山でしかないから。
こどもは私と夫の大きくなる遺伝子をかき集めて生まれたんだろう。
この子はなにかと多数派とは違った発達をするけど病気はほとんどしない。
まずはほっとした。

12歳、私の背は追い越され、夫の背に追いつきそうになっている。
こどものお古を私が着ている。
10歳くらいからぷくぷくではなくなり、筋肉は少なく、
華奢でシューっとしてきたので余計に背が伸びて見える。
小さい時から「大きいね」と言われ続けたこどもは、
「大きいと言われるのに飽きたからもう言われたくない」と言った。
おばあちゃんたちは「大きくなったね」を封じられてしまったので、
孫の成長の喜びをどう表現しようか苦悩している。
欧米に行けばみんな大きいから小さくてかわいいと言われるかもしれないよ、
と私が言ってみたけど、あまり慰めにはならなかった様子。

どのくらいの身長に落ち着くのか、意外と普通に収まるのかもしれないけど、
最近、家では、身長を計らせてくれないので今いくつあるのか分からない。
私「目の前に肩があるってどういうことだ?今何cm?お父さんに追いついた?」
こども「気にするな!」
私「うー、計りたい計りたい計りたい!」
こども「だめだ!」
私「ううう」