【書評】ヤクザ作家の爆笑ピアノレッスン～『ヤクザときどきピアノ』（鈴木智彦）
久しぶりに声を出して笑った本です。ヤクザものの潜入ルポで知られる鈴木智彦さんのピアノレッスン体験記、『ヤクザときどきピアノ』。
１、内容・あらすじ
『サカナとヤクザ』『ヤクザと原発』など、潜入ルポで知られるライターの鈴木智彦さん。
小さい頃から実はずっとピアノに憧れがあったという鈴木さんは、ある日ABBAの映画を見ていた時に流れた『ダンシング・クイーン』に激しく感動します。
「ピアノでこの曲を弾けるようになりたい」
鈴木さんは片っぱしからピアノ教室に電話をかけまくり、ついに見つけたピアノ教室に通うことに。
鈴木さんは５２歳、譜面の読み方も知りません。目標はコンクールで『ダンシング・クイーン』が弾けるようになること。
波乱の挑戦が始まります──。
２、私の感想
重厚な小説を読んだ後の「箸休め」として手に取ったのですが、そんな表現が失礼なくらいに面白かったです。
ひたすらに笑えました。タイトルからしてもう秀逸です。
５２歳のピアノ未経験者、しかも職業はヤクザ取材が専門のルポライターがピアノを一から学ぶ……というこのギャップがたまりません。
鈴木さんは全くの白紙状態だけあって、レッスンの随所でいちいち感動します。それが読み手にも伝わってきます。
ピアノのことが初心者目線でかなりわかりやすく詳しく書かれていて、とても勉強にもなります。物事が上達する時の過程もよくわかります。
初心者でも、いや、初心者だけに、技術的なブレイクスルーは毎週のようにあった。どうしても弾けず、引っかかり、苦労する部分をくり返し、反復して練習すると、ある日、さらっとできてしまうような事態が頻繁に起きるのだ。前日、何回も練習して突っかかっていた箇所が、いったん寝て、翌日起きるとスラスラと弾けたりする。
そして、ところどころでヤクザに例えたり、それ関係の記述が出てくるのが面白くてたまりませんでした。
抗争事件が頻発し、レッスンに行けない日が増えていた。レッスンの前日に事件が起きると、いたたまれない気持ちで、暴力団を逆恨みした。
新しいことを始める勇気がもらえる、そんな一冊でした。
３、こんな人にオススメ
・ピアノに興味がある未経験者
ピアノの歴史からレッスンの詳細から、色んなことがわかります。
・新しいことを始めようと思っている人
人生に遅すぎるということはないんだなあ、と思わされます。
・裏社会に興味がある人
作者の本業はこちらですから、裏社会のこともよくわかります。
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