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【書評】滅亡を前にして見つける幸せ~『滅びの前のシャングリラ』凪良ゆう

『流浪の月』で本屋大賞を受賞して一躍有名になった、凪良ゆうさんの最新作『滅びの前のシャングリラ』です。心にズーンと来る作品でした……!

※書評一覧の目次はこちら

1、内容・あらすじ

舞台は我々が今生きているこの世界。

ある日突然、首相が会見を開きます。「約1ヶ月後、地球に巨大な小惑星が衝突します。人類のほとんどが助かりません──」

学校は休校に、会社も休みになります。人々は絶望にかられて荒れ果てます。ライフラインが止まり、店は略奪され、自殺者が多発し、社会は大混乱に陥ります。

そんな中で、今までの人生をうまく生きられなかった4人の人物の「残り1ヶ月」が描かれます。

学校でいじめを受けている高校生の江那友樹。その母親で恋人を捨てた元ヤンの静香。ヤクザにいいように利用されて人を殺してしまった目力信士。本当の自分を捨ててまで上りつめた歌姫の地位が全く幸せではない山田路子。

この4人の人生が奇遇にも交差し、滅亡を前にして生きる意味を見つけます──。

2、私の感想

『流浪の月』もそうでしたが、あっという間に作品世界に引き込まれてぐいぐいと読み進めてしまいました。凪良ゆうさんの文章には、どこか人を引きつけるものがあります。

読み終わってから私はしばしぼーっと考え込んでしまいました。「面白かった」というような単純が感想がすぐに出てこない小説です。ぜひ、読んだ人と感想を語り合いたいです。

4人(正確に言うと5人)の登場人物に共通していたのは、「本当の自分に立ち返ること」だったように思います。我が身に引き寄せて色々と考えさせられました。

小惑星衝突が判明してからの荒廃した世の中の描写は真に迫っています。確かにみんなこうなってしまうのかも。そして今の政府なら、小惑星が来ることも隠蔽するんじゃないかな、とも思いました。

4人目の主要人物、山田路子は芸能人ですが、彼女の絶望を読んで最近の芸能人の自殺を連想しました。もしかしたら原因はこういうことだったのかも。

印象的な文章がたくさん出てきます。私はここに線を引きました。

正しく平和な世界で一番欲し、一番憎んでいたものが、すべてが狂った世界の中でようやく混ざり合ってひとつになった。神さまが創った世界では叶わなかった夢が、神さまが壊そうとしている世界で叶ってしまった。ねえ神さま、あんたは本当に矛盾の塊だな。

『流浪の月』も傑作でした。私のnoteの記事の中でアクセス数がNo. 1です。こちらもぜひどうぞ。

3、こんな人にオススメ

・生きる意味がわからない人
4人の生き方が、何かを教えてくれると思います。

・「滅亡もの」が好きな人
こういうタイプの滅亡ものはありそうでない気がします。

・関西の方
最後の章で関西人がたくさん出てくるのですが、これがまた愉快。関西人のたくましさを感じました。

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