「共感を得るタイプ」のリーダーシップ

最近、僕が意識してうまくいっているなぁと思う「共感を得るタイプ」のリーダーシップについて言語化しておく。

いろんなタイプのリーダーシップ

リーダーシップといってもいろんなタイプのリーダーシップがある。昔ながらなイメージだと「引っ張るタイプ」とか。最近は協同や協働が大切だといわれ「支援するタイプ」のリーダーシップが話題になることが多い。

僕はかつては「引っ張るタイプ」だった。自分のやりたいことに他者を巻き込み引っ張っていく。あるとき気づいた。ついてきていない人がいる。あと、自分の器以上のものは得られない。

みんなで意見を出し合いながらみんなで作っていくと、自分一人では思ってもみなかったより良い結果が得られる。「全体は部分の総和に勝る」というやつ。そういう体験を何度かしているうちに「支援するタイプ」のリーダーシップの面白さにはまっていった。ファシリテーションを学び実践し手応えを得た。「支援するタイプ」のリーダーシップを発揮できる自信がある。

「支援するタイプ」のリーダーシップは、他者のリーダーシップを後押しする。リーダーシップはその人の『やりたい!』という気持ちから生まれる。メンバーの背中を押すことでチームはより良くなる。リーダーシップは誰もが持っているものなのだ。

ふと思う。他者の『やりたい!』を支援してきたけど、自分の『やりたい!』はどうなる?チームの一員として『やりたい!』を言ってみたこともあるが、うまくいかなかった。やりたい気持ちが強く押しつけがましくなってしまった。シニアの意見は思いの外重く受け止められてしまう。

支援することと自分のやりたいことを主張することは両立できないのか?そういう悩みを抱えつつチームを支援していて最近気づいたことがある。みんなが僕と同じ言葉遣いをしている。みんなが僕と同じような振る舞いをしている。

支援するときにいつも意識しているのが、「腹落ちした」とか「納得した」とかこちらの話に共感してもらえてるかどうかである。腹落ちしていない、納得していないと感じたときは別のアプローチを取ってみたりしていると、そのうち「腹落ちした」「納得した」と相手が言う。それを積み重ねているうちに、メンバーは僕と同じ言動をするようになった。

「共感を得るタイプ」のリーダーシップ

どうやら「共感を得るタイプ」のリーダーシップというのがあるらしい。これもリーダーシップなんだと気づいた。相手に共感してもらい相手を動かす。いや、相手に動いて頂くために共感してもらう。共感は本人の意思だ。腹落ち納得すれば自分事として動く。共感できる言葉遣いや振る舞いを真似するようになる。

自分が相手を動かしたいと思うなら、相手の共感を得る。指示命令でもなく、説得でもなく、支援でもない。共感を得るのは難しい。時間もかかる。しかし、共感を得られたら自分と同じ言葉遣い振る舞いを相手がしてくれるようになる。あたかも自身の考えや価値観かのようにそれを語るようになるのだ。

そんな僕が、共感を得るためにしていることは何か?

相手に共感する』から始める。相手の考えや価値観を受け止める。自分と異なる考え方もある。「なるほど!」と受け止める。「そうだよね!」のように同調とは違うので注意する。あくまで「そういうこともある」と受け止める。「そういうこともあれば、こういうこともあるよね」という多様性を尊重した場を作る。

重なりや共通点を見つける』。異なる意見に思えても抽象化したり深掘りすることで共通点が見えてくる。その共通点を使って仲間意識を醸成する。自分との共通点を見つけると親近感を覚えやすくなる。「類似性の法則」というらしい。

主語を私にする』。あくまで自分の意見として伝える。個人の意見であり、みんなで検討の余地があることを認識してもらう。「私は◯◯したい」と伝え、私の想いに対して相手に共感してもらう。共感するかどうかを相手に委ねる。いわゆる「Iメッセージ」。

時機をうかがう』ことも重要。相手が目の前のことで忙しい時に伝えても、相手には受け止める余裕がない。こちらが思いついた時ではなく、相手が立ち止まって余裕がある時に伝える。もしくは、何かに躓いて立ち止まってしまった時に伝える。その時がくるまで胸に秘めて待つ。焦らない。

結果はすぐに出ないと心得る』。一度で共感してもらえるとは限らない。時機(タイミング)が悪いこともある。前提となる考え方の違いがあって伝えたいことが理解してもらえないこともある。今はそのときではないだけかもしれない。いつか共感してもらえると信じて、相手の負担にならない程度で少しずつ伝える。積み重ねる。

しっかり対話する』。伝えて終わりではない。相手のリアクションを観て、相手が腹落ちしていない納得していないというシグナルを受け取る。「腹落ちしませんか?」「どう感じてます?」と納得できない部分を聴く。そうやってしっかりキャッチボールする。相手の想いを傾聴する。

しつこくしない』。共感してもらえないとついつい力ずくで共感させようとしてしまう。共感は他人に強制されてできることではない。「共感しろ」と命令されてできることではない。共感してもらえなかった事実をありのまま受け止めて、今のアプローチ(伝え方だったりタイミングだったり)を見直してみる。内省する。

身近な人に限定する』。共感してもらうには時間もかかるし丁寧な対話が必要。接する機会が少ない人とはなかなか時間をかけて対話ができない。逆に身近な人であれば共感してもらいやすい。共感してくれた相手が自分と同じように振る舞うことでさらに広がっていく。共感の波紋が広がっていくのだ。また、遠くにいる人に共感してもらいたければ近づいて身近になればいい。

まとめると、小為自然。これは僕が作った造語。支援することと自分のやりたいことを主張することの両立に悩んでいたときに無私や無為自然、老荘思想に出会った。確かに、無私や無為自然が大事なのはわかる。でも、それで私はどうなる?私も大事にしたいぞと。有か無か、0か1かではなく、その間があっていい。ちょっとだけ私の作為を混ぜさせて欲しい、そう思って小為自然に辿り着いた。自然な流れの中で、無理なく少しだけ介入する。大きなことはしない。小さなことを積み重ねる。それが『共感を得るタイプ』のリーダーシップに大切な心構え。

ちなみに

検索すると出てくる「共感型リーダーシップ」といわれているものと「共感を得るリーダーシップ」は別物と考えている。共感型リーダーシップは共感することだけを重視しているように思う。ここではさらに先の「共感してもらう」ことを重視している。共感し、共感してもらう、そういう好循環を作りたい。

共感を意識するようになったのは odd-e の江端さんが講師だった認定プロダクトオーナー研修(Scrum Alliance Certified Scrum Product Owner®)を受けてから。江端さんが「相手に動いて頂く」という言葉を使っていて「頂く」という表現が気になった。相手に動いて頂くにはどうすればいいか?と自問自答して辿り着いたのが「共感を得る」なのである。

以下は、この言語化に役立った書籍など。

『宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいく チームの話』
4つのタイプ(スタイル)のリーダーシップとチームビルディングの話。

『完璧なリーダーはもういらない』
リーダーシップとは Want(やりたい気持ち)である。リーダーシップは誰もが持っている。

『モチベーション3.0』
自分事として動いてもらうには内発的動機付けを刺激する。

『アジャイルリーダーシップ』
他者がリーダーとして振る舞えるように支援するリーダーのリーダー。

『多様性の科学』
多様性は生き残るために非常に重要な要素。様々な意見を受け止める。

『学習する組織』
物事はいろんな要素が複雑に絡んでいるので、結果が出るのに時間的遅れが発生する。システム思考。

『ネガティブ・ケイパビリティ』
期待した通りにいかなくても、その状態を維持し続けることで、いつかうまくいく。ネガティブな状態にとどまる。

『目からウロコのコーチング』
ホステスさんによる傾聴の話。Iメッセージも。

『マインドフルネスの教科書』
事実をありのまま受け止め、対処する。

『アサーション入門』
相手も私も大事にするアサーティブコミュニケーション。

『老荘思想でザッソウ』
ソニックガーデンの代表・倉貫義人氏と仲山考材の仲山進也氏が老荘思想についてザッソウしているポッドキャスト。

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