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2023.03.25-26 子どもと大人のためのダンス「日本昔ばなしのダンス」 川村美紀子『じごくのあばれもの』 @埼玉会館

小さい頃に弟がやっていた、プレイステーションの「ウイニングイレブン」というサッカーゲームを眺めるのが好きだった。確かどちらかの川平さんによる絶叫的な実況のもと、Jリーグの選手達が点を取り合うのである。サッカーのルールは全く知らないが、画面を見続けていたおかげで当時のチーム名は今も覚えている。

そのうちのひとつ、浦和レッズが〝REDS〟だったことを私はいま、初めての浦和駅を降りるなり知らされている。全体的に赤いぞ、西口駅前。そうか、赤いからレッズだったのか・・幼少期に理解できず、その後も意識してこなかった〝REDS〟という言葉との出逢い直しをすませて劇場へ。

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彩の国さいたま芸術劇場の大人気シリーズ、子どもと大人のためのダンス第7弾 『日本昔ばなしのダンス』にて新作を発表させていただくことに。日本昔ばなしをベースに、お子さんから大人まで楽しめる作品をという企画。第7弾の今回は黒須育海さん『ごんぞうむし』& 川村美紀子『じごくのあばれもの』、ダブルビルの全4回公演は満席御礼。舞台上に組まれたお席から観劇していただく、アットホームなスタイル。

なお、彩の国さいたま芸術劇場の大規模改修(休館期間:2022年10⽉3⽇〜2024年2⽉29⽇)により、公演は埼玉会館にて開催された。

©大洞博靖


あっちこっちから飛んでくる子どもたちの声に、みるみる身体は変わってゆく。なんか静かになったなと思えば、目をみひらいて観てるっぽい・・じっとこちらを。「え、そこ?!」という場面で笑っていたり、びっくりして泣いていたり、年齢による反応がグラデーションをもって感じられたり。これまで舞台上で、しかも子どもたちとの交流機会がなかったかもしれないために驚き、というか面白さの衝撃でいっぱいです。お家でマネしたり、お話のきっかけにしていただけたらな。

SATの方々による日々の手厚いサポート、関わってくださったスタッフの方々、平山素子さんによるスタジオご協力まで、さいたまから生まれた素晴らしき劇場空間を感じています。以下長文となりますので、ご興味ある方はぜひご覧いただけたら嬉しいです。



『じごくのあばれもの』 あらすじ


まずは、埼玉県の昔ばなし(※ 諸説あります)『じごくのあばれもの』をベースのストーリーに選定。テレビアニメ版では冒頭「カンカンの日照りで作物が枯れるわ、病気は流行るわで大変じゃった!村でも町でも、たくさんの人が死んだ!」という軽快なナレーションから始まる。そんなテレビアニメ版『じごくのあばれもの』あらすじを、かわむら視点でざっくりご紹介。

生前にやり散らかした悪事により、鍛冶屋・医者・山伏の3人は地獄行きに。えんま大王から「剣の山を登れ」と命ぜられるも、鍛冶屋は剣を溶かして鉄のわらじを鍛造、鋭い剣を根本から蹴りとばして登山を完了する。怒ったえんま大王は「釜茹でじゃー!」と3人を熱湯風呂へ放り込むが、山伏による〝火遁の術・水の印〟の呪いにより良い湯加減に。全員ごきげんで歌っていると、えんま大王に飲み込まれて内臓へ到達。医者の指示で泣きや笑いの筋をいじったり、腹下し薬を塗るなどして尻穴から脱出する。知恵を駆使して楽しむ様子に、えんま大王は「地獄を極楽と間違えやがって、恥をかかせやがって」と激怒の末に呆れ、3人は娑婆に戻されて仲良く暮らしました。

放送日:1976年08月07日(昭和51年08月07日)
公演チラシ


果たして、こんなサイケデリックな作品に出てくれる方がいるのだろうか・・・。不安を胸にお二人へお声がけ、なんと出演いただけることに。両氏をはじめ、関係各所でご調整・ご協力いただきました方々、本当に本当にありがとうございます。


出演メンバー


米澤一平さん

お一方目は、タップパフォーマーであり音楽家、オーガナイザーとしても知られる米澤一平さん。彼の豊かなアート経験からうかがえる色とりどりの引き出しや、安定したアンバランスを縦横無尽に奏でめぐる音身体にあらためて脱帽。稽古中に自然発生するトークから新たなシーンが生まれたり、1人では思いつきもしないようなボールも投げかけられたりするなど新鮮。かわむらとは2017年よりライブセッションやイベントをはじめ、 静岡での路上パフォーマンス でもご一緒。舞台作品では初共演だったりします。

鍛冶屋 → よねざわ役
タップ、それは靴の裏についている金属を音へ変える錬金術師・・・鍛冶屋では?というシンプルな想いから、ご本人役をお願いしてみました。

©大洞博靖


青沼沙季さん
お二方目は、ダンサーでありシンガーであり、さらに教員としてのお顔もお持ちの青沼沙季さん。これまたさりげないアイデアマンで、かゆいところに手が届く「そこそこ!」的な視点からの問いで動きが発展したり、幾度となくヒントを頂戴したり。作詞の面でも言葉と感情の流れをしっかり汲みとりながら、ますます伸びやかにアップグレードされゆく魔法のような身体歌。楽譜が不在のオリジナルソング、すぐに口伝でモノにしていただける器用さ。かわむらとは、2014年&翌年に開催された 多摩での路上パフォーマンス にてご一緒。舞台作品では初共演です。

医者 → 美容整形外科医役
ストレートに美容整形外科医役をお願いしました。手術衣には一部、取り外し可能なパーツも。

©大洞博靖


川村美紀子:山伏 → おじさん役

かわむらはおじさんになりました。ラップしたり踊ったりしますが、基本的には「マジで感謝」と言い、割と本気で合掌しています。

冒頭、突然始まるミュージカル
©大洞博靖


顧客満足度オンリーワンを目指して


「今だけ限定無料でくす玉をひっぱることができる、くす玉★チャンスタイム!」力を貸してくれた勇気ある1名さまへ、出演者のサイン入り色紙(プリクラ付き)をプレゼントするコーナーも。毎度のお子さんたちの勢い&めくるめく表情に、ひたすら驚かされるばかり。大人な皆さんによる、温かいまなざしも幸です。

©大洞博靖
稽古終わりに撮りました


⳹ 地方での再演、大募集 ⳼

謎のイメージ画像

彩の国さいたま芸術劇場 シリーズ第7弾 - 子どもと大人のためのダンス 「日本昔ばなしのダンス」川村美紀子『じごくのあばれもの』& 黒須育海さん『ごんぞうむし』地方での再演にぜひ一票を!

当日パンフレット(川村美紀子作品)


ミラクル衣装コーナー


衣装か、美術か、なんなのか。村上美知瑠さんの大胆な宇宙的発想に、いつもワクワクしながらご一緒させていただいています。「赤ちゃんってね、生まれてからしばらくは、自分と外界との境目があいまいで・・・」数年前に伺った彼女の感覚、ハッとする。私はいつからガリガリ引くようになったのだろう、生きるための境界線を。気楽にも苦痛にもなりうるっぽいジャンルやスラッシュ、人との距離感。たまにはちょっぴり、ぼやかしてみてもきっと楽しいかもしれないなぁ。彼女と話していると、おいしいまかないのような心手を感じとったりする。物理的に不可能なものもあるかもだけど、踊り、歌、音、声、光、暗闇、年齢、性別、時間、空間、演者、観客、裏方、大人、子供、身体、じゃないもの、とかとか交わりながら。

村上美知瑠さんによる、創作の旅をチラリ。

よねざわ氏(背後) & おじさんの手ぬぐい
さわり心地・質感
こだわりの布プリント
ハイパーリアリティ・焼き芋
くす玉 製作中。舞台スタッフ陣の手腕により、見事なバランスで吊るされる


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考えて聴き、やってみて楽しみ、とても幸せな時間でした。どんな状況でも楽しく冷静に進む『じごくのあばれもの』原作の3人も、こんな感じだったのかな。私は罪状を、医者の架空請求は違法手術へ、山伏の霊感商法は特殊詐欺に、鍛冶屋の不良品製造をいい人なので人数合わせとしたものの、原作での善悪の判断基準は絶対的な正しさを示す閻魔帳および助手からの密告によるもの。登場人物の3名は各自控訴しているふうにも見える。真相はいかに・・?


あらためまして雨の中ご来場くださいました皆さまへ、誠にありがとうございました。いつかまた、お目にかかれましたら幸に思います。



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▼ 川村美紀子ウェブサイト|

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