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ロシアのウクライナ侵攻 権力者の立場から勝手に考えてみる

 ロシアのウクライナ侵攻で、世界はロシアへの非難ほぼ一色です。個人的には軍を動かしても「脅し」までと予想していたのですが。理由は、侵攻すれば他国から警戒されるし、経済制裁は食らうし、戦費もかかるわけでロシアのデメリットが大きすぎるから。なのに戦争は起こりました。そこで権力者(ロシアのプーチン大統領)の立場になったつもりで、何でこんな悪手を選んだのか考えてみました。

 地図を眺めて思うのは、旧ソビエト時代から国家の威信が低下したロシアの姿です。以前であれば東欧諸国まで影響力があったのに。かつては米国と世界を二つに割ったほどのパワーがありましたが、すっかり忘れ去られている気もします。今や世界のツートップといえば、米国VS中国ですからね。

 そしてプーチン大統領は、ロシアで独裁に成功して政権を維持し、メディアを支配下に置きました。一方、反対派を排除したことを考えると、自分の評判を気にするのでしょう。ついでにいえば隠し豪邸も報じられたりして、自らを律して質素に……というタイプでないのかもしれません。

 ともあれ、ロシア国民のために働けば、それでも歴史にある程度の名声を残したのでしょうが、それで物足りないのが人間なのかもしれません。そして後世にたたえられる、分かりやすい華々しい成果と言えば、やはりソビエト連邦orロシア帝国の復活になるのではないでしょうか。

 ロシアがウクライナに侵攻して2週間以上が経過しましたが、ウクライナの抵抗は頑強です。かつて冷戦時代のハンガリー動乱やプラハの春では、ソ連軍は一気に侵攻・鎮圧したわけで、その成果と比べるとずいぶん見劣りがします。

 さらに他国の反発と、経済制裁が予想以上なのも確かでしょう。ロシアも西側諸国と貿易をしているので、心中穏やかではないはず。リースされた飛行機を返さないとか、ロシアで事業を停止した企業を接収するというのは、後々のことを考えると大きな信用喪失ですが、言い換えるとそれだけ追い込まれているのではないでしょうか。何より独裁政治の弊害で、「ヤバいからやめるべき」と止めてくれる側近もいないのかもしれません。権力者はいつかはその座を失うわけで、後進のことも考えるべきですが、そこの苦労は考えていないわけです。

 さりとて今さらウクライナと停戦しても、ウクライナとの仲は修復不可能でして、賠償金の話も出るでしょう。何より「今回の侵攻を決断した責任は?」という話になるわけで、権力者の政治生命はおろか、評判は地に落ち、命の危険もあるかもしれません。そうなるとウクライナを屈服させて成果を上げるまで戦う!……になってしまうのかなと。

 ウクライナ全土を征服するには相当てこずりそうで、仮に全土を制圧したとしても、維持するコストも莫大。ウクライナの人々の憎悪を買い、さらに西側諸国の経済制裁が解けるか……といえば、まあ無理でしょう。おまけに東欧諸国のロシアに対する警戒感が最大限に高まり、やりにくくなることこの上ないわけです。ウクライナがロシアにつくメリットを作れず、NATOに入りたい!となった段階で「負け」だったのかもしれません。

 要するに、進む(戦争継続)も引く(停戦)も地獄だけど、現状を打開するには、「とりあえず戦争継続」という答えしか出ないわけで、何ともやりきれない気持ちになります。

 古代中国の兵法家・孫子も、戦わずに敵を屈服させるのが最も良い策であると説いているのですが、その教訓は生かされなかったようで残念ですね。

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