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【学校教育#2】心を亡くす教員、離れていく子どもたち

先日、息子が通う小学校から1通のメールが届きました。内容は「働き方改革の一環で、欠席した児童に放課後担任からの電話連絡は今後いたしません」というものでした。
私も元教員なので、学校や先生方の気持ちや多忙さもわかりますが、とうとうこんなことまで学校が通達するようになってしまったか・・・というのが率直な感想です。
学校・教員の仕事のブラックさが、今さかんにテレビやネットで流れていますが、最近の学校は以前よりも仕事量が増えたのでしょうか?教員は以前よりも仕事をするようになったのでしょうか?

今の先生は働き過ぎ?

20年前との比較

私が教員になったのはちょうど20年前です。当時を思い出してみると「よくここまでやっていたな」と本当に思います。
毎朝7時頃に出勤。先輩の先生の机拭き、お茶汲み、職員室のごみの回収から始まってようやく授業の準備。7時45分には教室へ上がり,子どもの出迎え、宿題チェック、連絡帳への返事書きなどをしていました。
今の学校はどうでしょう?先輩の先生の机拭き、お茶汲みなんて今はもうほとんどやっていないのではないでしょうか。
私にようやく後輩ができた10年前くらいまで(当時は採用が少なかったのでなかなか下が入ってこなかった)は、まだその慣習が多少残っていて「そんなことはしなくていい。その時間を授業の準備にあてたほうがいい」とさかんに言っていましたが、今はもうそんなことをする若い先生はいません。文化もないし、指導する人もいないので当然ですが。

放課後も、昔は休んだ子どもの家庭に電話連絡するのは必須でしたし、「しておいたほうがいいよ」とも教えられました。18時〜19時頃、保護者の帰宅に合わせて家庭訪問に行くこともよくありましたし、管理職から命じられることも普通にありました。仕事を終えて学校を出るのが21時を過ぎるのもしょっちゅうでした。
これが健全だとはまったく思いませんが、はっきり言えるのは「昔の方が、今よりも働いていた」ということです。
今は時間外勤務を管理職や先輩教員が命ずるのなんてできませんし、教員不足の今、若い先生に辞めてもらっては困るというので、先輩教員が指導をためらう場面も多く見られます。

なぜ仕事が減っても忙しいのか?

上に書いたようなことの他にも、ICTの導入によって授業の準備は楽になったし、通知表や指導要録だって手書きからPC入力になってかなり楽になりました。通知表の所見も1学期は廃止というところがほとんどです。
宿題の準備だって今は学校支援員の方がやってくれるし、宿題の丸付けも家庭にお願いするようになりました。
やっぱり以前に比べて明らかに教員の仕事量は減っています。なのに今の先生方は、なぜこんなに忙しいと感じているのでしょうか。

教員の仕事のスタンダード化・マニュアル化

この記事の冒頭で、学校からのメールを紹介しましたが、このように最近は授業や子ども・家庭との関わり方など、担任の個性や思いが発揮されるようなクリエイティブなところにまで、スタンダード化・マニュアル化の波が押し寄せているのが、教員が忙しさを感じる1番の原因ではないかと思うのです。「忙」とい漢字は、「心」を「亡くす」と書きます。自分がやりたい仕事ではなく、やらされている仕事だから心を亡くしてしまい、忙しく感じているのではないでしょうか。

スタンダード化・マニュアル化も必要性があって生まれたことは理解できます。何でも「子どものため」というパワーワードで、教員の善意や責任感をあおり、それに応え続けてきた熱心な教員にばかり過重労働を強いてきたことは事実です。
一方で、まったくやる気のない、働かない教員がいるのも事実で、最低限やらせるためには、スタンダード化・マニュアル化は必要なことだったなのでしょう。
しかし、それでも私は「教育」という、人と人という感情を持ったもの同士が関わり合う行為において、スタンダード化・マニュアル化はやはり適さないと考えます。

そして学校教育におけるスタンダード化・マニュアル化で一番心配されるのは、子どもたちの心が学校から離れていくことです。

学校から離れていく子どもたち

不登校の数が過去最多を更新しているのは、みなさんご承知のことと思います。私は今、不登校の中学生を2人預かっていますが、そのうちの一人は、担任からは電話連絡のみで、家庭訪問は1度もないそうです。管理職の介入も一切ありません。
一方で、もう一人の子は先日校長先生と面談(と言っても形式的なものでなく)したそうで、その時「この本おもしろいよ。明日感想聞かせてね」と言って本を渡されたそうです。次の日も学校へ行くと、今度は違う先生から声をかけられて、また何か渡されたそうです(課題ではない)。
この2つの対応、どちらが子どもの心を揺さぶるかは一目瞭然ですよね。この2つの中学校はどちらも県内では大規模の学校で、生徒数も職員数もほぼ同じです。なのにこの対応の差。
結局、一人の子は少しずつ学校に心が向くようになり、もう一人の子は依然として心を閉ざしたままです。

学校教育におけるスタンダード化・マニュアル化によって、学校・教員は心を亡くしていく。心を亡くした学校・教員によって、子どもの心はどんどん離れて不登校になっていく。こんな悪循環が今の学校教育では起こっています。
この悪循環を断ち切るためには、まずは学校・教員の心を取り戻すところから始めるべきではないでしょうか。

本日も、最後までお読みいただきありがとうございました。
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