源氏物語を読みたい80代母のために 22 (源氏物語アカデミーレポ③)
諸般の事情で暫く更新できませんでした。やっとやっと!落ち着いたので今週中には何とか全部のレポを仕上げたい!(あくまで目標←)
さて一日目最後の講座は
「源氏物語と陰陽道」中島和歌子
中島氏単独の本は見つけられず、研究論文まとめみたいな本を借りた。
こちらもまた2008年刊行である。そうそうたる面々の内容充実本だが、さすがに返却期日までに全部は読み切れなかったのでまたいつか借りようと思う。(なんと大学時代の恩師(故人)の本も取り上げられている!ので) 中島氏の持ち分は、やはり今回の講師の中にいらっしゃる藤原克己氏の論文「源氏物語と浄土教 ~宇治の八の宮の死と臨終行儀をめぐって~」についてである。八の宮は最期まで娘たちの行く末を心配し続けていたため往生できなかった・そのため阿闍梨が常不行をおこなったというエピソードから、作者自身の信仰への態度を読み取る。あまりじっくりとは読めていないのでイマイチ自信が無いが、何事においてもバランス感覚に優れている紫式部の特徴がここでもまた出ている、と思った。
で、講義である。まず以てレジメのページ数がヤバイ。二段組で十ページもある!これを一時間半?無理じゃ?つかこれで一冊本書いてくださったらいいのに!という充実っぷり。
まず陰陽道とは一体何なのか、平安時代においてどういう役割を果たすものであったのか、というお話。驚いたのは「陰陽道」そのものは完全日本オリジナルであったこと。
陰陽寮の官人の活動範囲(学術や副業を含む職務)の拡大によって日本で形成された、現世(来世とは無縁)での物事の吉凶(是非ではない)に関わる禁忌と術(占術や呪術)の集合体。
ということらしいです(←何もわかってない)。私がうっすらと知ってたのは陰陽五行説を下敷きにしてるということくらいで、中国辺りから伝来した何かなのかなーという超浅い認識。道教や密教、医術など外来のもののみならず、日本古来の「神」も混然一体となって独特の進化を遂げたということらしい。色々取り入れて受け入れてアレンジしちゃう国民性がここにも。
陰陽寮というのは今で言う国土交通省とか厚生労働省みたいなものだろうか。占いや医療だけではなく暦つくったり天文観測したりもしていた、れっきとした官職なのである。
三大職務が「占い」「呪術・祭祀」「日時や方角禁忌の勘申」、これがそれぞれにメチャクチャ種類があってこれだけで講義数回分ある(確信)。用途に応じて適切な建設地を選ぶ「相地」(いわゆる風水)、小説やアニメや漫画でよく出て来る式盤を使う「式占」、それぞれに細かい要素や決まりごとがくっついて体系を成していて、とても一回聞いただけでは理解しきれないし追い切れない。
考え方の基本として面白かったのが、
「災害」や要地での「怪異」の責任者が帝
であること。同じく内裏の責任者でもあるが故に、やたらと宮中での物忌が多かったと。なるほど「世が乱れる」とはこういう意味か。譲位の理由にしたりされたり、は正当な行為だったんだな建前上は。そしてこれを最も重視したのが藤原摂関家であると。多分だけど、悪いことが起きたら全力でこの手の「対応」にかかり、改善したら「吉兆」として今までの悪い事チャラ!な勢いで大々的に喧伝したんじゃないかなあ。常にそういうポジティブな姿勢でいれば、実際うまくいくことも多かっただろうし、神仏への感謝も深くなろうというものだ。単に運が良かっただけではない、自分から運を掴みにいった、まさに「稀なるご威勢」の一族。
と、ここまでで相当時間が押してしまい、肝心の源氏物語との関わりが十分に聴けなかったのは少し残念だった。でもこの前提があればこそだもんね。難しいところだ。以下、必死で取ったメモと私見を交えて。
源氏が、ここという時に頼るのはいつも仏であり、神ではない―――というのにはなるほどと思った。確かに祓いや禊みたいなことは紫上が危篤の際ですらしていない。
それと柏木!柏木が「徐々に信仰から脱落していく」という表現には唸った。「陰陽道」は誰もが盲信していたわけではなく、的外れだと感じることも多かったのだ。方違えにかこつけて別の目的を達成する、というのも普通にあったことで、だからこそ柏木も
「もし女三の宮が大した身分でなければ、ちょっとした物忌やら方違えやらで外出も容易だろうし、こっそり会う算段もつけやすいのに」
と思ったわけなんですね(ひかるのきみ「若菜上」十八)。いや君、「大した身分」だからこそ執着したんでしょうが、というツッコミはさて置いて。
柏木は中々革新的?な存在で、臨終近くなった時、女の死霊の仕業だとする占い結果を自嘲気味に嗤う場面なんてかなりぶっちゃけてる。作者も読者も(もしかしたら道長も)、実の所その手の「占い」が当たるも八卦当たらぬも八卦、という程度であることは心得ていたんでしょうね。
以上、とりとめもなくなってしまったが、一日目レポようやく終了である。大学の講義数日分どころではない、下手すると前期これで終わっちゃうんじゃ……という勢いのボリュームを一気に浴び、母も私も脳みそフル回転状態の二時間半でした。
【80代母のつよつよエピソード】
母は帰宅するなり、
「お腹空いた」
と夕飯の残りの混ぜご飯を私の分までついでくれて、漬物とともにあっというまに完食。
「お代わりは?いらないの?もう私はお腹がすいてすいて」
母、二杯目も完食。
つよい(確信)。
明日も早いし(8:15集合)ということで10時台には布団に入り、二人とも朝まで爆睡したのでした。
<つづく>
※まだ一日目なのか……今週中に終わるんだろうか(弱音)。
「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。