見出し画像

大河「光る君へ」(7)おかしきことこそ

 今更ですがこれまでの「光る君へ」感想記事のタイトル画像の殆どは
「よそほひの源氏物語」:東京国際フォーラム
 にて撮影したものです。御簾いいですね御簾。
 そうそう80代母、
「初めはまひろと道長の恋物語だけ集中しとこと思たけど、何もかも面白すぎて心がザワザワするわ……」
 だそうです。完全にオタクな発言ですね。さっすが我が母である(自画自賛)。
※「源氏物語を読みたい80代母」のための企画です。最終回までこの形式で続ける所存。思いっきりネタバレ全開なのでご注意くださいまし。
お喋り役の平安女房ズは以下:
右近(右)、侍従(侍)、王命婦(王)、少納言(少)

侍「右近ちゃああああん!」
右「侍従ちゃああああん!」
侍「ちょっとちょっとさあヤバない?!ヤバすぎ!って毎回言ってる気がするけど!七回目にしてもうアタシの胸☆キュン度が限界突破よ!!!」
右「侍従ちゃん語彙力なさすぎだけど今回ばかりは全面同意!散楽団のピンチに颯爽と現れて『道長である!』とか、連れていかれそうになったまひろちゃんを庇って手ひっつかんで走るとか、少女漫画展開そのものだもんね。特に私のイチ推し・直秀くんの『邪魔だった?』もよかった(かわいい♡)。でもなんといっても極めつけはあの騎馬打毬だきゅうシーンよね」
侍「いやもうさぁ青春キラッキラ☆すぎて尊すぎてしんどい……アレはかんっぜんに、運動系部活で活躍する男子にキャーキャー騒ぐ女子の図よね!」
右「ほんそれ。まさかの直秀くんまで参加の変則F4、絵面の良さといったらもう……これは女子全員惚れてまうわ間違いなく」
少「素敵でしたわね。見入ってしまいました」
王「それぞれの目線が面白かったわね。あからさまにバッチバチのききょうさん、見てないふりでガッツリひっそり視線を絡ませるまひろちゃん、ニコニコ笑顔で縁談持ちあがってる相手をチェック・あら中々いいじゃない?ターゲットオン!の倫子さま」
右「少納言さん王命婦さん!いらっしゃい」
侍「ヤッホーカモンカモンー♪♪て、王命婦さん!倫子さまターゲットオン道長くん☆なのあれ?!」
王「どうみてもそうでしょ。まひろちゃんには可哀相なことになるけど、はなから太刀打ちできる相手じゃないしね」
少「まひろさん今回も本当にお気の毒でしたわ……ひと目道長さまのお姿を見たくていらしたのに、偶然あんな酷いやりとりを聞いてしまわれて」
右「まさに『雨夜の品定め』@変則F4のロッカールーム、よね。侍従ちゃんと私みたいにツッコミまくりの場外乱闘できるならいいけど(ひかるのきみ「帚木」参照)まひろちゃん単独、しかも諦めようと揺れ動いてる時にアレじゃあさ。そりゃ文も燃やしちゃうわ」
侍「もったいなーい!でもさー道長くん自身は特にヤバい発言してなくなーい?あの時のヒカル王子とおんなじで(エッヘン!)」
右「なんで侍従ちゃんがドヤ顔(笑)」
少「私、どうしても紫上を連想してしまうのですけれど……結局は後ろ盾となる実家が太くないと正妻になれない、という平安貴族の常識は十分ご承知でも、ああして目前に突きつけられては……打ちのめされますわ」
王「為時パパ、兼家さまに肩たたきされちゃったしね。あれで当分出世の目は消えたし、それどころか完全排斥もあり得る。別に本気でスパイしなくても、適当に定期ご報告しとけばいいだけの簡単なお仕事だったのに」
右「ああもう為時パパって本当にさあ(溜息)まひろちゃんも同調しちゃってたよね。いや正しいかどうかじゃないのよ、現実みてねって話よ。真っ正直すぎて要領よく立ち回れない、ほんと似たもの親子」
少「似たもの親子といえば……私、兼家さまが悪夢を見て子供のように動揺なさったお姿をみて、少しホっとしましたわ。人間らしい感情、弱い部分もお持ちなのだと。道兼さまとも間違いなく親子なのですね」
王「そうね。むしろ今一番怖いのは長男の道隆さまかもね。道兼さんもあえなくコロっと騙され……いや、まったくの嘘偽りではないんだろうけど、人心操作の手口よね。
『わしは(お前の気持ちを)わかっている』
『お前を置いてはいかぬ』
多大なコンプレックスを抱えつつ愛に飢えまくりの道兼くんにはてきめんに効くセリフ……痺れるわねウフフ」
侍「王命婦さんのツボがわからない……いやわかるけどわからないいい(困惑)」
右「次回予告がまた匂わせまくりね。まひろちゃん、何だかワンサカ恋愛フラグ立ってない?モテ期ってやつかしら」
少「待ちきれませんわ……道兼さま少しでも幸せになってほしい」
侍「ま、また来週うー!!!」

 さてさてもう七回目。あっという間です。
 初めはまひろが外を出歩いているだけでヒエー!と思っていた私ですが、回を重ねるとともに慣れて、
「これはドラマ化に必然の表現なのである」
 という割り切りに至りました。今回の打毬の会も当然のごとく、運動会テントよろしく御簾も几帳もなんもない開けっ放し、倫子さま・赤染衛門・清少納言・紫式部がそろい踏みというありえない絵面でしたが、すんなり受け入れてる自分がいて逆にビックリした次第。だって、平安の有名人が四人並んでんですよ?で、変則F4が目の前で打毬してんですよ?これはもう存分に楽しむしか選択肢ないですよね、ね?(にじりより)
 考えてみると、平安時代の恋の形ってすごく映像にし難い。特に初期のときめき的なところは。
「家の奥まったところにいて滅多に姿を見せない女性に対し、男性は周囲の噂を頼りに下人や女房の伝手を探り・文やら歌やらをやりとりして想像の翼を広げ・思いを募らせる・御簾や几帳や屏風の向こうの気配を感じ取って一喜一憂」
 なんて、実写じゃほとんど無理じゃなかろうか。アニメでもかなりキツそう。
 そもそも御簾や几帳や屏風なんて実のところ物理的な障壁でもなんでもない、単なる概念。この大河では、表現に邪魔なその「概念」を全て取っ払ったオープンな形で、平安の恋を令和的に可視化しようと目論んでるんじゃないでしょうか。「目で語る」場面が多いのがその証左、かもしれません。
 そうそう、去年の「源氏物語アカデミー」での山本淳子先生の講義
「原文購読 『若菜上 ~六条院の蹴鞠の場面を読む~」の中で、
・恋に身を投じる柏木と「蹴鞠」に身を投じる若者たちの対比
・蹴鞠に熱中する「乱りがわしい」状態だからこそ恋に落ちる
というお話がありまして、まさにこの打毬の会だなと思いました。それも一人だけじゃなくその場にいた複数人一気に。お得感(?)ありますね。
 来週はまた、政治も恋も大きく動きそうな予感。楽しみです!

「文字として何かを残していくこと」の意味を考えつつ日々書いています。