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【百話完結済】令和に開く耳嚢

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昭和から平成、令和に至るまで、筆者が見聞きした怪談の数々を綴ってみました(虚実織り交ぜフェイク盛り盛り)。もしやこれは……?と思いあたる節があるやもしれませんが、ただの偶然ですよ… もっと読む
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記事一覧

100.開闢

「99.あわい」を読み終えたHさんは言った。 「私……この感覚わかるかもしれない。時間や空…

かわこ
4か月前
8

99.あわい

 Gさんは幼い頃から本が大好きだった。 「保育園行き出したのが四歳なんですが、その前から字…

かわこ
4か月前
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98.暗い家

 Cさんが大学一年の時の話である。  サークル合宿の帰り、先輩Dの車にCさんと同学年の女…

かわこ
4か月前
9

97.賽の河原

 Aさんは自他ともに認める「山男」だ。登山歴はゆうに40年を超える。  そんなAさんがはじ…

かわこ
4か月前
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96.インターホン

 Zさんが久しぶりの平日休みで家にいた時のこと。  昼食を食べながら録りためた海外ドラマ…

かわこ
7か月前
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95.湿気る

 Xさんは就職と同時に家を出て、一人暮らしを始めた。  大学の卒論が終わってから急に思い…

かわこ
8か月前
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94.崖上り

 Uさんには忘れられない出来事がある。 「夏休みだったかな、河原で友達と遊んでて。川といっても涸れ川で、特にその年は雨が少なかったから、水は真ん中辺をチョロチョロとしか流れてなかった。川上の方だと木陰も多くて涼しかったし、人もいないしで遊ぶにはちょうど良かったんだよね」  近くには民家もなく、野球をしたり、鬼ごっこをしたり、虫取りをしたり大騒ぎをしても誰にも叱られない。 「場所によっては河原から上の道まで崖みたくなってるところもあって、これが大きな石が突き出してたり、木の根も

93.前触れ

 Sさんは代々続くとある家業を営んでいる。 「十年くらい前に爺さんが亡くなったんだが、ち…

かわこ
8か月前
8

92.こわいはなし 山編

 学生時代に登山部だったOさんから聞いた話である。 「俺自身の体験じゃなくて代々の部員か…

かわこ
9か月前
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91.名に呼ばれる

 Lさんの息子が仕事でちょくちょく隣のM県を訪れるようになった。 「帰りに海沿いの町に寄…

かわこ
9か月前
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90.プラスとマイナス

 Jさんは人の死期がわかるのだという。 「道歩いてる知らない人でも、三十歳前後かなとか、…

かわこ
9か月前
8

89.針さし

 Iさんは小さい頃から「こわい話」が大好きで、沢山本を読んでいた。 「その中でもすごい異…

かわこ
9か月前
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88.目に映る碧

 コロナ禍も少し落ち着いた春、Hさんは友人と日帰り旅行に出かけた。  行き先は隣県の広大…

かわこ
9か月前
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87.水を得た魚

 毎年夏が近づくと思い出すことがある。 「私が小学生の時はスイミングスクールなんてなかったから、みんな学校で泳ぎ方を教えてもらったのね。田舎だから敷地も広くて、低学年用の水深50cmくらいの小ブールと普通の25mプール併設。一、二年生は小ブールで遊んでるだけだけど三年生になると碁石拾いがあるの。私、どうしても水の中で目が開けられなくてね」  川遊びもしょっちゅうしていたDさん、水が怖いというわけではなかった。 「碁石は拾えたのよ。目測をつけておいてエイって手を突っ込めばいいだ