“ハロー どうも 僕はここ”

BUMP OF CHICKEN/Hello,world!(初稿:2016/06/11 更新:2019/11/09)

“ハロー どうも 僕はここ”

「この歌の力はこのワンフレーズに凝縮されている」と気付いたのは、この歌がリリースされてCDショップの展開を見て歩いている時に、このフレーズだけが書かれたPOPを見つけたことがきっかけだ。

正直、ファーストインプレッションはあまり覚えていないほど、初めてこの曲を聴いた頃はあまりピンと来なかった。

本曲「Hello,world!」は、TVアニメ『血界戦線』のために書き下ろされた。バトルアニメならではの疾走感をBUMP OF CHICKEN最速を誇るBPMとBUMPならではのギターサウンドで見事に描き上げ、オープニングテーマとしてアニメの世界観に見事に溶けこむ一曲である。

なぜここまでこのワンフレーズにこんなに心を掴まれるのか、しばらくずっと考えていたのだが、アニメをちゃんと観たのをきっかけに考えていたことをまとめてみようと思う。

この速いBPMに対して比較的ゆったりとしたサビのメロディ、駆け抜けるようなサウンド、BUMPらしいと思いながらも新しいと感じる。
では、既存のBUMP曲でどんな曲と比べて新しいと感じるのか考えたところ、最も構造が近いのは「カルマ」だと思った。

「カルマ」は混沌と未来への希望を歌った歌だ。

“必ず僕らは出会うだろう”

印象的なサビの歌詞は“出会うだろう”と未来のことを歌っている。
また、“記憶を疑う前に 記憶に疑われてる”というフレーズや“汚れた手”、“十字架”のような語からは、何か迷いや自虐のようなものが見て取れる。

言うなれば、現在地に満足しておらず、先や未来を見ている曲だということだ。

一方で、「Hello,world!」は今の自分で戦っていくしかないんだという歌。

“これから迷子の続き”と言いつつ、“もう駄目って思ってから わりと何だかやれている”と歌う。そして“ご自分だけがヒーロー 世界の真ん中で/終わるまで出突っ張り”、“隠れたってヒーロー 守るものがある”と自分に言い聞かせるように、いつまでも戦っていかなければいけないことを鼓舞するようなサビに繋がる。

これは、今に満足できず未来に夢を見たり、未来を信じて頑張ったりするのではなくて、どんなに今の自分じゃ足りなくても今の自分でしか戦えないということを書いた詞だと思う。

だから“ハロー どうも 僕はここ”なんだ。

“体だけが確か”という歌詞があるが、まさに今この自分で戦っていくしか術がない。だから、僕はここで戦うんだ、そういう決意表明であり、同時にそういう“君”への応援歌なのだ。

どんなかっこわるくても、悪あがきでも、それを認める、そしてそこから一歩を踏み出す。それが真の強さなんだと、強く訴えかけてくる力が“ハロー どうも 僕はここ”にはある。だから、このたったワンフレーズにグッとすべてを持っていかれるのである。

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