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僕の身長は、日本人女性の平均。満員電車はやっぱり辛い。

僕は、満員電車の女性の気持ちが誰よりも理解できる男性、だと自負している。
そして、ある意味、女性よりも危険な立場に置かれた、か弱い男性なのである。

158cm。

これは日本人女性の平均だそう。そして僕の身長でもある。

満員電車はつらい。特に夏場は壮絶だ。

目の前にはワイシャツにたっぷり汗染みのできた中年男性の背中。
皆、吊り革に捕まるため、一生懸命に腕を上げ、僕らの目の前に脇を近づけてくる。


誰も悪気があるわけではないと分かっているものの、とてもじゃあないが、おっさんの汗染みに密着することを強いられる満員電車は耐えられたもんじゃない。


おっさんたちは扇風機の回る吊り革近くに顔を出し、汗をかいた額を冷ましている。一方、僕らはおっさんの背中とお腹に囲まれ、酢えった匂いと、やたらとまとわりつく湿気の中で、空気を吸いたいような吸いたくないような矛盾した気持ちを抱えながら、なんとか酸素を体内に取り込む。


満員電車における女性の辛さについて取り上げられることはあまり多くない。それは、僕が男性で、女性同士での話を聞かないからかもしれないが。

網棚に荷物を乗せるのすら一苦労な身長の低い人間は、身長の高い人間が思っているよりも、満員電車におけるストレスが大きい。


そして、繰り返すが、僕は女性の平均身長である。


これは満員電車では凶器であり、人生を棒に振るリスクでもあり、申し訳なさと諦めの混じったなんとも言えない感情を生み出す仕掛けでもある。

イメージしてほしい。満員電車で身動きが取れず、このまま10分を過ごさなければいけないとしよう。時々強い揺れが来て、前後左右の人により押しつけられる。

目の前、息がかかる距離に異性の顔面が存在する。身体の向きを変えたいが少なくとも10分以上は難しそうだ。何かの拍子に背後から押される恐れがあり、一瞬の油断もできない。相手に息を吹きかけるわけにもいかず、呼吸も億劫になる。

できればスマートフォンをいじるなり、文庫本やKindle端末などを片手に、意識を遠ざけ、物理的にも障壁を築きたい。


しかし、ここで問題がある。僕は男性で、目の前にいるのは女性なのだ。

僕がスマホや本を胸の前に掲げることは不可能に近い。目の前の女性の胸に接触せずに腕や手を掲げることは極めて至難の技なのだ。

もちろん、最新の注意を払えばできなくはないだろう。しかし、揺れる電車の中である。どうしたってリスクはゼロにはならない。


僕は僕なりに、これまでの人生で築いてきたものがある。
これが一瞬で崩れるリスクを抱えながら毎日通勤するというのは、リスクと守るもののバランスが明らかに取れていない。


満員電車で居場所を確保し、吊り革に手を預ける体躯と身長は、すでにおっさんにほど近い僕には手に入らない。

そんなわけで、僕の家探しの優先順位の上位には、いつも「満員電車の回避」がランクインしている。



※再掲:低身長は服や靴を選ぶのも一苦労。誰が悪いわけでもないんだけれど。

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