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秒読みに入ったイスラエルとイラン戦争    (川上高司 国際政治学者)

イランが4月13日夜から14日にかけて、イスラエルに対しド限定的なローンおよびミサイル攻撃を行った。イスラエルの1日の在シリアのイラン大使館空爆への報復であったが、イスラエル領内を攻撃するのは異例だ。それだけに戦火の拡大が懸念される。
 
イスラエルは、シリアの革命防衛隊への空爆を頻繁に行い、昨年12月には革命防衛隊の上級軍事顧問が殺害された。この時にイランは翌1月にモサド(イスラエルの諜報機関)の拠点であるイラク北部のクルド人自治区にミサイル攻撃を実施した。これに対し、イスラエルはイラン大使館空爆を行っている。このように、イスラエルのパレスチナのハマス殲滅が周辺地域に拡散するばかりか、イスラエルとイランとの最終戦争にまで発展しようとしている。
 
その中での今回のイランのイスラエル国内施設へ対する攻撃であった。イランの標的は4月1日にシリアのイラン大使館領事部ビルを空爆したイスラエル軍の戦闘機の発進基地を含むが、、本格的な戦闘を避けるため、被害を最小限に抑える報復攻撃であったと考えられる。また、イスラエルもミサイルやドローンのは大部分を迎撃したものの、攻撃に強く反発しており、中東情勢は緊迫している。
 
紛争のエスカレーションラダーを押さえるべく、イランも自制を効かせているが革命防衛隊に近いイランのファルス通信は、軍事筋がヨルダンの動向を注視していると伝えた。同筋は、ヨルダンがイスラエルに協力した場合は「次の標的」になると警告している。
 
紛争がいつグローバルに拡散し、かつてのアルカイダの米国同時多発テロ(9.11テロ)の到来なる可能性も否定できない。今回のイランのイスラエル攻撃にあわせ、中東各地の反イスラエル勢力もイスラエルを攻撃したと伝えられている。問題は、イスラエルのネタニアフ首相がパレスチナ自治区への攻撃がいつまで継続させるのか。それを欧米が説得できる可能性は低く、リスクは上がったままである。
 
アメリカはイスラエル防衛のためには躊躇しないが、同時に中東への戦争の拡散は避けたいところである。米上院の民主党トップ、シューマー院内総務と共和党トップのマコネル院内総務は13日、イランのイスラエル攻撃を非難する声明をそれぞれ発表し、イスラエルへの支援を含む緊急予算案を早期に承認するよう下院に要求した。しかし、「もしトラ」(次期トランプ政権の誕生かも)現象で上院は緊急予算案を超党派で可決したが、下院では共和党議員の一部が反対し、審議が滞っている。
 
すべてが、11月の大統領選挙をにらみながらの攻防となっており、それだけにアメリカ大統領選挙の世界情勢に及ぼす影響は大である。

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