見出し画像

カンヌライオンズ2024速報 by 銀河ライター【Day4】

早いものでフェスティバルも佳境に。今日も7部門が発表になっています。

①ラグジュアリー&ライフスタイル部門
②クリエイティブ・ビジネストランスフォーメーション部門
③クリエイティブ・イフェクティブネス部門
④クリエイティブ・ストラテジー部門
⑤クリエイティブ・コマース部門
⑥ブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門
⑦イノベーション部門

早速グランプリを見ていきましょう。


※クレジットは以下の順です。

施策タイトル
企業名(ブランド)/商品名
企画+制作会社
エントリー国


ラグジュアリー&ライフスタイル部門


LOEWE X Suna Fujita

LOEWE
LOEWE, MADRID
SPAIN

ファッションメゾン「LOEWE(ロエベ)」 は、京都を拠点に活動する陶芸制作ユニット「Suna Fujita(スナ・フジタ)」とコラボレーション。陶芸家のアーカイブから5つの陶磁器作品をベースにした特別なコレクションを発表するほか、作家のクラフトマンシップを丁寧に伝える絵本やコマドリ映像なども制作している。2024年新設された「ラグジュアリー&ライフスタイル部門」の初グランプリ。

【参考資料】



クリエイティブ・ビジネストランスフォーメーション部門


REFURB


PHILIPS
LEPUB, AMSTERDAM
NETHERLAND


2023年、EU圏域では5,000万個の贈り物が返品され、1,000万個以上がそのまま埋立処分されたと推定される。企業は、古い製品を再チェック・再梱包・再出荷するよりも、新品の購入を勧めるものだし、多くの人にとって返品はひと手間だ。

家電メーカー「フィリップス」は、返品された商品だけで構成されるリファービッシュ品(整備済み中古品)のエディションを開発。その謳い文句は"新品より良い(Better than new)”。新品同様のコンディションで、より低価格、より長期にわたる保証を実現した。

リファービッシュ品に特化したEコマースサイトをグローバルに展開し、プロモーションも実施。アースデイには、フィリップスはすべての新商品の製造を中止し、ウェブサイトでも新製品の販売を停止した。

キャンペーンの一環として、返品されたギフトの山をARインスタレーションとして公開。そこからデジタル・ストアへ誘導し、商品を購入できるようにもした。プロモーション期間中に、52000台の返品製品が販売され、185トンの廃棄物と推定277トンのCO2排出を削減した。



クリエイティブ・イフェクティブネス部門


IT HAS TO BE HEINZ

HEINZ KETCHUP
RETHINK, TORONTO
CANADA

この5年にわたるハインツの一連の取り組み「IT HAS TO BE HEINZ」が受賞した。欧米圏では「ケチャップと言えばハインツ」と言えそうなほどメジャーなブランドだが、150年の歴史をへて競合も増え、インフレ、サプライチェーンなどの新たな課題に直面する中、広告は機能訴求のアプローチが中心になり、人々のブランドへの愛着が薄れつつあった。ハインツはカスタマーとのあいだにエモーショナルなつながりを再構築する必要に迫られていた。

一連のキャンペーンのうち、以下のような施策はカンヌでも受賞している。

★ケチャップ色をした570ピースの真っ赤なジグソーパズル(HEINZ KETCHUP PUZZLE/2020年)。

★「ケチャップを描いてください」キャンペーン。そう言われるとだれもがハインツのロゴを描いた(HEINZ DRAW KETCHUP/2023年)。


★ハインツのボトルに質の悪いケチャップを詰め替えるレストランや家庭がある。それをやめさせるための「ケチャップ詐欺」キャンペーン(HEINZ KETCHUP FRAUD/2023年)ーーほか多数

「IT HAS TO BE HEINZ」において、ハインツはユーザーに自社ブランドの優位性を主張することをやめた。「ハインツでなければならない」と言ってくれる人が世界中にいるのなら、それをみずから言う必要はない。替わりに、ブランドの核を発掘して伝えようとした。それは「ハインツはケチャップである」というシンプルすぎる真実だった。

5年間の取り組みの結果、2019年以降、世界のハインツケチャップの売上は前年比+12%の成長を遂げた。さらに競合他社から+3.2ポイントのシェアを奪い返す。小売売上高は47.24%増加した($578MM/2019年→$851MM/2023年)。


クリエイティブ・ストラテジー部門


A PIECE OF ME

KPN
MINDSHARE, LONDON
UNITED KINGDOM

ケースボード、下はミュージックビデオ本編


ある調査によると、10代の若者の33%がセクスティング(性的動画を他人に共有する行為)の経験があるという。だが、動画が第三者に共有されることで、うつ病や自死など深刻な結果を招きかねない。

インターネットをより安全な場所にしたいと考えるオランダの大手通信会社KPNは、オランダで人気のシンガーソングライター「MEAU(モウ)」とコラボレーション。Z世代に共感され、メディアに取り上げられ、親や教師がセクスティングの危険性を10代に伝えるきっかけになる楽曲とミュージックビデオ「A Piece of Me」を制作した。



クリエイティブ・コマース部門


RENAULT-CARS TO WORK

RENAULT
PUBLICIS CONSEIL, PARIS
FRANCE

フランス人の10人中4人は、公共交通機関がゼロの地域(モビリティ砂漠)に住んでいる。こうした地域で仕事をするためにはクルマの所有が必須だが、多くの職場で最初の3ヶ月間は試用期間となるため、ローンを組むことができない。そのことで就業を断念する人も多く、失業率が全国平均より高いとされる。

「すべての人のためのモビリティ」「インクルージブなクルマづくり」をミッションに掲げる ルノー・グループは、この課題を改善するためのイニシアチブ「CARS TO WORK」を立ち上げた。試用期間の3ヶ月間は無料でクルマを提供し、正式に採用されたら手頃な価格で車を購入することができる。

フランス全土のモビリティ砂漠地域にある50のディーラーが参加するネットワークを構築し、初年度には6000車を利用可能にした。公共雇用サービスや金融機関とも提携。移動の手段だけでなく、職探しやローンの面でもサポートし、利用者の就職率を地域平均の2・5倍に押し上げたという。


ブランド・エクスペリエンス&アクティベーション部門


THE FIRST EDIBLE MASCOT

POP-TARTS
WEBER SHANDWICK, CHICAGO
USA

アメリカのクラッシクな朝食のアイコン「POP-TARTS(ポップタルト※パイ生地に甘いフィリングを挟んだ軽食)」は、Z世代のファンを獲得するため、朝食からスナックへの脱皮を画策していた。そこでブランドは「全米カレッジ・フットボール」のスポンサーとなり、ポップタルトがあらゆるシーンで気軽に食べられるスナックであることをアピールしようとした。

ポップタルトは従来のスポーツ・スポンサーシップの常識を打ち破るため、全米カレッジ・フットボウルのポストシーズンに開催された「ポップタルト・ボウル」の第1回大会で、世界初の“食べられるマスコットキャラ”をデビューさせた。それを食べる権利があるのは、勝利チームである。

キャラは試合の6週間前にネットでお披露目され、様々な憶測を呼んだ。試合当日には様々な悪ふざけを行った挙句、トースターの形をしたステージの上で「スポンサードの罪で死ぬ」ことを予告し、手を振りながら火花を上げるトースターの中に消えていった。その後、勝利チームの選手たちが、キャラ型の巨大なポップタルトを味わうシーンがテレビを通じてレポートされ、ネットでバズりまくった。


イノベーション部門


VOICE 2 DIABETES

KVI BRAVE FUND INC
KLICK HEALTH, TORONTO
CANADA

インドは糖尿病患者の数が世界第2位。しかし、その半数以上が距離や費用などが理由で未診断のままだという。モバイルに搭載されたAIツール「Voice to Diabetes(糖尿病のボイスサイン)」は、通話中の音声分析を通じて2型糖尿病のスクリーニングを行うことができる。

Mayo Clinic誌に発表された研究は、インドの267人の参加者を対象としたもので、192人が糖尿病でなく75人に既往歴があった。参加者はスマートフォンのアプリを使い、短い音声クリップを2週間にわたって毎日複数回録音。18,465の録音を分析した結果、糖尿病患者とそうでない人の14の異なる音響的特徴が特定され、高精度の糖尿病識別ツールが作成された(女性の場合はピッチの変化が重要であり、男性の場合は声の強弱の変化が重要だった)。

「Voice to Diabetes」は女性で89%、男性で86%のスクリーニング精度に達しているという。世界では2億4千万人の成人が自覚のないまま糖尿病を患っているというデータもあり、声を通じた診断が確立されれば状況は変わるかもしれない。ほかの疾病も声の兆候から診断できるようになる可能性もある。

明日はいよいよ最終日。今日はこんなところで

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?