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カンヌライオンズ 2022速報 by 銀河ライター【3日目】

カンヌライオンズ 2022速報(3日目)です。今日はビジネス系とイノベーション系の各部門が発表に! さっそくご紹介していきましょう。

※クレジットは以下の順です。

タイトル
企業名(ブランド)/商品名
企画+制作会社
エントリー国

クリエイティブ・ビジネス・トランスフォーメーション部門

Piñatex
Dole Sunshine Company+Ananas Amami/Piñatex
L&C,New York+Suitcase Production,New York
USA

フィリピンでは、毎年250万トン以上のパイナップルが栽培されている。その果実は包装され、世界中の人々の食卓に上る一方で、パイナップルの葉は廃棄される(1トンのパイナップルの実ごとに3トンの葉)。それを放置すると有害なメタンガス等が発生する可能性もある。

そこで、世界最大のパイナップル生産者であるドール・サンシャイン・カンパニーは、アナナス・アナム社と提携し「ピニャテックス」を開発・製造した。パイナップルの葉の繊維からつくられたこの皮は、無害であり、動物を殺すこともなく、サステナブルである。

現在ではHUGO BOSS、ナイキ、H&Mを含む200超のブランドが、この素材を自社プロダクトに活用。「ピニャテックス」には農村に、雇用と所得の向上をもたらすポテンシャルもある。2025年までに廃棄物ゼロを目指して取り組みを進めている。

クリエイティブ・ビジネス・トランスフォーメーションでは、「①クリエイティビティ」「②勇敢さ」「③インパクト」の3つを基準に審査した。「ピニャテックス」はブランドによる本物のパーパス・ジャーニー(purpose journey)を感じさせるアメイジングな施策だ。これこそがサステナブル。大企業とベンチャー企業の双方が価値を高め合う"クリエイティブの民主化"がここにある。

審査員長Ronald Ng氏(MRM/Global CCO)による審査評




(アナナス・アナム社公式サイト)


クリエイティブ・ストラテジー部門

The Breakaway, the first eCycling team for prisoners
Decathron/Sports Equipment
BBDO BELGIUM,Molenbeek-Saint-Jean他
Belgium

ベルギーのオーデナールデにある刑務所で、スポーツブランドのデカトロンが「ブレイクアウェイ(脱走)」という名のクラブを立ち上げた。これは受刑者のための初のeサイクリングチームだ。ベルギー司法省と刑務所内でのスポーツ・文化活動を促進する非営利団体の協力を得ている。

6人のメンバーは、バーチャル・サイクリングプラットフォーム「Zwift(ズイフト)」で"外の世界"の人々と一緒に走り、レースにも出場する。

バーチャルスポーツとブランドの力で、受刑者の社会復帰を支援する。「すべての人にスポーツへのアクセス」を提供するという、デカトロンのビジョンを体現している。


クリエイティブ・コマース部門

Thighstop
Wingstop/Food
Leo Burnett,Chicago
USA

2021年、鳥の手羽先のストックが全米で不足、価格は2倍に上昇した。手羽先料理を専門とするファーストフードチェーン「ウイング(手羽先)ストップ」は、新しい商品ラインナップ「サイ(お尻部分のもも肉)ストップ」を発表した。手羽先ほど価格高騰しなかったサイ部位を活用した商品だ。まさに苦肉の策である。

しかし、商品は大ヒットする。ヒップホップ界の大御所であり、ウイングストップのフランチャイズ店を経営する起業家としても知られるリック・ロスを起用したCMキャンペーンも行った(上の動画)。

年間で10%の売り上げ増などの成果が上がり、「サイ・ストップ」は定番メニューとなった。

以下は出品用のエントリーボード。

※この部門は今年、「クリエイティブ・eコマース」から「クリエイティブ・コマース」に改編された。


クリエイティブ・エフェクティブネス部門

CONTRACT FOR CHANGE
ABINBEV/Michelob Ultra
FCB CHICAGO+FCB NEW YORK
USA

米国で有機作物の生産に取り組む農家は、全体の1%ほどにすぎない。「安く、早く、大量に」の農業から脱し、オーガニックシフトしたい農家はさまざまな困難に直面することになる。

そこで「ミケロブ・ウルトラ・ピュアゴールド」は、CCOFほかの有機農法認証・促進機関とパートナーシップを締結、農家のオーガニックシフトを支援することにした。

支援活動を行うことは、原料となる有機栽培大麦の調達をスムースに行い、健康志向のビールとしての認知を高めることにもつながる。

「CONTRACT FOR CHANGE(チェンジのための契約)」プロジェクトでは、有機農業への移行を希望する生産者と3年間の契約を結んで資金面で支援、技術指導も行う。3年間の移行期間が終了した時点で大麦を購入する契約になっている。

※「クリエイティブ・エフェクティブネス」は、過去にエントリーされた施策のその後の「成果」にフォーカスして評価する部門。「CONTRACT FOR CHANGE」は昨年、PR部門グランプリなどを受賞している。

モバイル部門

Real Tone
Google/Real Tone
Google Mountain View+T Brand Studio,New York+Wieden&Kennedy,Portlandほか
USA

歴史的にカメラ技術は、ダークな肌色を正確に表現してこなかった。テクノロジーにまでバイアスが反映されていたのである。

すべての人にとってより公平な色調を提供すべく、Googleは著名な専門家たちと協働し、すべての人種の肌色のニュアンスをより美しく、そして忠実に表現するインクルージブなカメラ「Google Pixel 6 with Real Tone」を開発した。

上の動画はアーティストのリゾを起用したコマーシャル。エントリーボードも上げておきます。


イノベーション部門

One House to Save Many
Suncorp Group
Leo Burnet,Sydney
Australia

記録的な洪水や山火事、暴風雨に見舞われるオーストラリア。多くの住宅が被害を受けている。2020年だけで、13万4000人もの人が住居を失った。それに伴い、住宅保険料も高騰している。

オーストラリア最大の保険会社のひとつとして知られるサンコープは、あらゆる異常気象に耐えうる強靭なプロトタイプ住宅「ひとつの家」をジェームズ・クック大学、CSIRO(科学産業研究機構)などと2年がかりで共同開発。

アートディレクター集団のグルー・ソサイエティ、広告会社のレオバーネットの協力も得て、このプロトタイプ住宅の優れた性能を伝えるドキュメント映像「多くの人を救うひとつの家」を制作した。

そのほかオンライン体験イベントを実施するなど、自然災害に強い家づくりのヒントを提供。自宅が被害を受けた場合に、以前より強い家への改築をサポートする新保険商品もリリースしている。

ブランド・エクスペリエンス&アクティベーション部門

The unfiltered history tour
Vice Media/British Museum
Dentsu creative,Bengaluruほか

初日のラジオ&オーディオ部門に続いて2つ目のグランプリ。解説は以下のバックナンバーに。

ブランド・エクスペリエンス&アクティベーション部門の審査員長は、佐々木康晴さん(電通/Chief Creative Officer)。日本に戻ったらじっくりお話うかがってみたいと思います。

いろんな取材をしていると、またたく間に夕方に。今年の「マーケッター・オブ・ザ・イヤー」を受賞しているABInBev社の限定商品「Can of Cannes(カンヌ缶)」ビールが配られていました。

Can of Cannesビール

いいすね、ビール。では、今日はこんなところで。


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