小津、黒澤、山田
山田洋次さんがインタビューで、とても面白い話をしていたのを覚えている。
山田監督が松竹に入社したばかりの頃、
松竹では小津監督が、東宝では黒澤監督が映画を作っていた。
山田さんは、すごいなぁ、と、黒澤監督にあこがれていたのだそうだ。
カメラワークとか脚本とか、色々な面で、とても惹かれていたのだとか。
それにひきかえ、我が社の小津監督ときたら、、、、。
カメラは置いたまま動かない、
ストーリーは、何も起こらない、
起こってもせいぜい娘が嫁に行くくらいのものだ、と。
しかし、自分が映画を監督する様になり、年齢を重ねていくにつれ、
小津監督の凄さが身にしみたという話だった。
ある日、山田さんが黒澤明監督の家に遊びに行ったとき、
「こんにちわー、山田です」と玄関で声をかけると、
二階から黒澤監督が、「おー、上がってこい」と。
2階に上がっていくと、黒澤監督がじーーーーっとビデオを観ていたのだそうだ。
何を観ているのかと思ったら、「東京物語」だったかな?、とにかく、
小津監督の映画を観ていたのだそうだ。
黒澤さんも、こういう映画を作りたいんだなぁ、と、思った、
山田洋次さんが、インタビューで、そんな話をされていたのだった。
若い頃の、小津監督をけなすところの話が笑えるのだった。
カメラは置いたまま、
ストーリーはせいぜい娘が嫁に行くくらいのもの、と。
自分は歌舞伎が好きなのだが、歌舞伎を観た事が無いという人から、
歌舞伎ってどんなの?と聞かれる事が有る。
どんなの?っつったってあんた、いろんなのだよ、と言うのだ。
どんなストーリーか、聞かれるのが一番困る。
歌舞伎のストーリーを説明するほど馬鹿馬鹿しい事は無いのだ。
ストーリーだけ説明しようものなら、「なんじゃそりゃ」と言われるだろう。
要するに、ストーリーなどどうでも良いのだ。
こういう演技を見せたい、だから、こういうストーリーにしよう、
というだけの事であって、ストーリーより演技が大事なのだ。
この、若いもんには解らん様な、味わいというのか、行間というのか、
そんなものが小津映画の良い所なのではないだろうか。
なので、小津映画を観て、良いと思ったらもう、
あなたは年寄りなのかもしれないのだ。
そうか、自分は10代の頃から年寄りだったのだなぁ、、、。
そういえば確かに、若いときからじじむさいものが好きだったのだった。
何も起こらない。
せいぜい娘が嫁に行くくらい。
人間の人生というのは、こういう事なのではないだろうか。
人間の幸せというのは、こういう事なのではないだろうか。
大宇宙を駆けめぐって、敵と戦い、
一人で何十人もの敵と戦って勝利したり、
マシンガンをぶっぱなし、派手にカーチェイスをしたり、
そんな事が人間では無いのだろうと思うのだ。
人間の幸せは小さいものなのだと思う。
人に話したら、「なんじゃそりゃ」と言われる様なものなのではないのだろうか。
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