#023 平均寿命はどうやって計算するの?
平均寿命は現在何歳かご存知でしょうか。
2023年の厚労省の発表によると、男性は81.05歳、女性は87.09歳なのだそうです。コロナの関係で老衰が増え、2年連続で寿命は前年を下回っているそうです。
ということは、平均寿命分を全うできると仮定すると、30歳の男性は残り51年、30歳の女性は残り57年生きることができます。60歳の男性は残り21年、60歳の女性は残り27年生きることができます。平均寿命からの差引なので、当然もっと長く生きるかもしれないし、早くに亡くなってしまう可能性もあります。
ここで、3つ関心がありました。
50年後の平均寿命は何歳なの?
平均寿命=自分の余命として良いの?
そもそもどうやって計算しているの?
平均寿命の計算方法
調べてみる前に、まずは想像してみたいと思います。どうすれば平均寿命を計算できるのでしょうか。
パッと思い浮かんだのは、その年に亡くなった方の死亡時年齢を平均する。最もシンプルで計算もしやすそうな指標です。たとえば、2023年1月1日〜2023年12月31日までに亡くなった方の年齢を集めて平均するような手順です。計算の実現可能性も高そうです。
しかし
よくよく考えてみると期待している数字と少しずれていることに気づきます。「平均寿命」が知りたいということは「あと何年生きることが出来るのか?」ということに関心があります。今年亡くなった方の平均年齢は、果たして余命の計算に役立ちますでしょうか。
例えば、2020年生まれの赤ちゃんは、2020年の死亡時平均年齢と同じと推定できるのでしょうか。
寿命が変動しない数字なら、死亡時平均年齢=平均寿命と仮定できます。しかし、幸運なことに平均寿命は医療の発達により伸びてきています。200年前は人生50年だったのに対して現在は人生100年時代と言われています。
ちゃんと計算するなら・・・
2020年の平均寿命をちゃんと計算するなら、2020年生まれの人が全員亡くなった時にその死亡時年齢を計算するのが1番納得感があります。
最大の問題点は、2020年生まれの人が全員亡くなってからでないと計算できない点です。しかも、そのころには2020年生まれの人の平均寿命には誰も関心がないです。1900年の平均寿命はかなり正確に計算することができますか、この統計値に関心を持つ人はあんまりいないでしょう。
平均寿命ってどうやって計算しているの?
いよいよ難しくなってきました。世間的にはどうやって平均寿命を計算しているのでしょうか。厚労省の資料を見てみます。
一つの数式が出てきました。
x歳における平均余命は、
x歳の生存数
x歳生存者の残り生存年数の和
で計算できるとのことです。x歳生存者の残り生存年数の和は、以下のグラフにおけるx→∞区間の積分値で求めることができます。
政府は、
年齢別の生存者数
年齢別の死亡率
と言う統計値を持っているので、x歳の人があと何年生きることができるのかを計算することかできるのです。
なるほど。こう言うふうに平均寿命を計算しているのですね。納得しました。
平均寿命は生きた統計値
平均寿命の計算方法について、納得はしました。しかし、いまいち腑に落ちない点があります。この方法は完璧ではないような気がするのです。
たとえば、画期的な治療法ができて、世界中から癌がなくなり、1人も死ななくなった場合どうなるでしょうか。
こちらのグラフの線はどんどん右側に伸びていき、x歳生存者の残り生存年数の和は増加していきます。そうすると、たったいま計算した平均寿命と未来のある時点で計算した平均寿命は違う数字になると思います。
この予測のずれは、遠い未来ほど不確実性が高まるでしょう。
5年後のx歳生存者の残り生存年数の和を予測すること
50年後のx歳生存者の残り生存年数の和を予測すること
とでは難易度が大きく異なるからです。
平均寿命は生きた統計値です。長生きする人が増えれば伸びますし、戦争で若い人が亡くなれば大きく縮みます。
そうすると、30代男性の自分の平均余命は、もしかしたら50年かもしれないし、60年に伸びているかもしれない。ひょっとしたら平均寿命が100年になっていることもあるかもしれません。
江戸時代の平均寿命は30-40歳と言われています。200年経った今、平均寿命は2倍以上に伸びています。ということは、これから先200年で平均寿命が120歳とかになっている可能性は完全に否定はできないでしょう。25年で世代交代すると仮定すると、孫の孫と会える可能性だってあるのですね。面白い!
医学を発展させて、死ぬリスクを低減していく努力を積み重ねることで、平均寿命の予測ができない世界をつくりたいですね。
50年後にまたこの記事を振り返ってみたいと思います。
おしまい
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