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SES業界 今昔物語 〜SES業界の『これまで』と『これから』〜

これからのSES業界は、どのように変化していくのでしょうか。

『流れを知り、予測し、先手を打つ』ということは、他社よりも優位に立つために必要不可欠な要素です。

他社よりも優位に立てられるなら、会社の業績も良くなります。そしてそれが社員の待遇向上にも繋がってくるのです。

そのような状況を考えると、『経営者のみならず社員にとっても重要な観点である』と言えるかもしれませんね。


1. ITエンジニアの70%はSESエンジニア

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まずはIT業界全体に目を向けてみましょう。

現在、日本のITエンジニアは100万人を超えています。このうちの70%が準委任や業務委託、派遣などによってお客様先で働くSESエンジニアです。

日本には解雇規制があるため、仮に仕事が無くなったり業績が悪化したとしても簡単に解雇することができません。

そのため特に大企業では正社員を増やしにくい状況となっており、業務委託や派遣などが増える原因となっています。

2. SESを撲滅するための唯一無二の方法

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たまに『SESが無くなればエンジニアの労働環境が良くなる』というご意見をお持ちの方をお見かけいたします。

しかし、7割以上がSESで働くエンジニアであるという現実を見るに、その主張を実現するためのハードルは決して低くはないというのがおわかりいただけるはずです。

もし本気で『SESを無くしたい』と考えた場合、正社員登用のハードルを下げる必要がありますから、国会議員になって解雇規制を撤廃する必要があります。

それによりSES企業は消滅するでしょうが、大企業の正社員になっても簡単に解雇されてしまう未来が待っています。

これでは根本的な解決になりませんし、そもそも解雇規制撤廃法案が易々と可決成立するとも考えにくいですよね。

そういったことを考えた結果、『まずはSES業界が内側から労働環境を良くしていく必要がある』との考えに至ったのです。

3. SES業界が不人気な理由

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IT業界全体のお話はこれくらいにして、SES業界に目を向けてみましょう。

20〜30年前からIT需要は大幅に拡大し、それに伴ってSES企業の数も急増しました。

雇用は増えたものの待遇面の改善がおろそかになった結果、労働環境はどんどん悪化していきます。

その結果、世間からは『ITエンジニア職は3K(きつい、帰れない、給料安い)だ』などと言われたり、『IT土方』などと揶揄されるようになりました。

当然のごとく、SES業界の人気は長い間低迷することとなります。

SES企業に所属していたエンジニア達も『会社に所属したままでは労働環境が一向に改善されない』と見切りをつけ、フリーランスに転身するエンジニアが増えていきました。

4. 『フリーランス』で働く人の心情

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2021年の現時点で、フリーランスエンジニアは20万人以上います。『SESエンジニア』の2~3割がフリーランスなのです。

IT業界におけるフリーランス率の高さ。その大きな要因のひとつが、『SES企業の労働環境の悪さ』にあります。

これまで、SES企業では「自分で案件を選ぶ」ということはできませんでした。キャリアプランを自身で描くことができなかったのです。

それに加えて待遇面も良くないわけですから、『フリーランスになったほうがよい』と考えることは自然なことだと思います。

先ほど『フリーランスエンジニアは20万人以上』と申しましたが、それらの方の中には『しかたがなくフリーランスになった』という方も多いのではないでしょうか。

フリーランスになれば案件を自分で選べますし、待遇面も改善されます。

しかし、厚生年金などの福利厚生はありませんし待機時の収入がゼロになるわけですから、安定性に欠けるというデメリットがあります。

先に述べた通り、他の業界に比べSES業界はフリーランスで働く人の割合が高いわけですが、その大きな要因は『労働環境の良いSES企業が少ない』というものでした。

しかし、ここ5年ほどでこの風潮に変化が起きてきました。

5. 『新SES企業』の誕生

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IT需要が右肩上がりに増加していくのに伴って、ITエンジニア不足が日に日に深刻化している昨今。

激しい『エンジニア争奪戦』に望んでいる各企業は、その採用力を高めるためにも『エンジニア満足度の向上』に力を注ぎはじめました。

その結果、エンジニアが案件選び、単価で評価されるSES企業——当社が提唱するフェアネス方式®に類する制度を導入している『新SES企業』が増えてきたのです。

企業ごとに若干の差異はあるものの、『新SES企業』では下記のようなしくみ/制度を導入しています。

・エンジニアのスキルや経験、ニーズなどに応じて寄せられた案件の中から
 エンジニア自身が好きな案件を選択できる
・案件面談後にお客様から参画依頼が来ても、
 エンジニア自身が参画可否を選べる
・案件の契約期間満了時に契約を継続するか離脱するかを
 エンジニア自身が決定
できる

『新SES企業』の登場により、SESでもエンジニア自身が自分のキャリアを自由に描けるようになったのです。

『新SES企業』の特長としてもうひとつ、『単価で評価される』というものがあります。

待遇面について従来型SES企業と比較すると、年収にして50~200万円UPする事例も少なくありません。

反面、待機になった場合は『単価0円』になるため年収が下がることもありますが、それでも従来型SES企業と比較すると年収水準は高いといえます。

6. SES業界が改善していくべき課題

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『新SES企業』が増えた結果、SES業界のエンジニアを取り巻く労働環境は劇的に改善されつつあります。

しかし、まだまだ改善の余地はたくさんあります。

例えば、『還元率の計算方式』

統一基準もなく各社バラバラなのが実情ということもあり、還元率を高く見えるように計算し公表する企業が増えています。

その結果、『どの会社が還元率が高いのか分からない』という状況を招いてしまっています。

他にも『財務状況の適性開示』という課題があります。

自社の財務状況に応じた還元率を設定するのではなく、エンジニアを採用するため半ば無理して高還元率を実現しているように感じられる企業が散見されます。

そのような企業の収益率は低いものとなりますので、SES業界に財務状況が不健全な『高還元率SES企業』が増えてしまっているのが状況です。

現にエンジニアへの還元率は公表しているものの財務状況をしっかり公開している企業はほとんどなく、求職者からしても『本当に給与の高い会社はどこか』、『安定している会社はどこか』が分からなくなっている状態です。

いくら還元率や給与が高くても、不景気になったら倒産したり減給になったりする不安やリスクを許容できる方は多くないですよね。

このように、このSES業界はまだまだ改善する余地がたくさんある状況ですが、このような状況はいつか改善されていくと考えてます。

7. 『新SES企業』時代がもたらす未来

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『新SES企業』が今後更に増えていけば、エンジニアの労働環境は大きく改善していくことが期待できます。

『新SES企業』として競合他社に負けぬよう切磋琢磨していく上で、本社業務の改善や効率化は避けては通れません。それらを推し進めていった結果、企業としての収益性も自ずと高まっていきます。

収益性が高まってくれば競争力を高めるために無理のない範囲で還元率を上げていく企業が増えていくでしょうから、エンジニアへの還元率も比例して高くなっていくはずです。

『新SES企業』では『労働環境の良さ』と『自由度の高さ』と『安定性の高さ』すべてを両立させることが可能になりますので、『フリーランス』で働くエンジニアの比率も減っていくかもしれませんね。

その流れの中で、志を同じくする『新SES企業』が手を取り合いアライアンスが形成されていけば、還元率の計算方式も統一されていくことでしょう。

これはまさにSES企業にとってもエンジニアにとってもWin−Winな世界と言えるのではないでしょうか。

一方で、従来型SES企業——特に『強み』を持たないSES企業は苦境に立たされることになるでしょう。

これが私の予測です。

もちろん私と異なる予測をされていらっしゃる方もいるでしょうし、今後この業界がどうなっていくかはその時が来るまで誰にも分かりません。

ただひとつ確かなのは、『SES業界の流れを正確に予測し、先手を打っていた企業がSES業界で大きな力を持つことになる』ということです。