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SESエンジニアが待機になったときの給与条件について

お客様からいただく単価でエンジニアの給料が決まる『単価評価制度』を導入するSES企業が増えてます。

特にこれまで不遇な環境にいたエンジニアの場合、単価評価制度を導入している企業に転職するだけで給与が大幅にアップするケースも珍しくありません。

『公平性』のある制度ということも相まって、この『単価評価制度』は多くのエンジニアから好評を博しています。

そんな『単価評価制度』ですが、多くの人が見落としがちな点があります。

それは『待機になったときの給料条件がどうなるのか』という点です。

『単価に基づいた評価』を導入している企業において、例えば待機となった場合——すなわち『単金:0円』となった場合はどうなってしまうのでしょうか?

多くの方が見落としてしまいがちなこのポイントについて、代表的なパターンをいくつかご紹介したいと思います。

『単価評価制度』を導入しているSES企業において、待機になってしまったなどの理由で『単価:0円』となった場合に給与がどうなるのか……。

エンジニアの単金が『60万円』であった際のシミュレーションを交えながら、代表的な4パターンをご紹介いたします。

ひとつ目のパターンは『待機期間中の給与が0円になってしまう』というものです。

『給与をゼロにするなんてこと、合法的にできるの?』とお考えになる方もいらっしゃるかと思いますが、『無期雇用』ではなく『有期雇用』にすることによって実現することができます。

要は『参画している案件の契約期間ごとに有期雇用契約を締結する』という形になるので、『案件に参画していない=雇用契約が存在しない』という形となり、結果待機などの場合は『給与0円』になるのです。

会社側としては待機等による雇用リスクがゼロになるため、エンジニアへの還元率を大幅に高めることが可能です。

稼働時の給与が高額になりやすい反面、待機時に収入がゼロになってしまうため、ハイリスク/ハイリターンであるとも言えるでしょう。

【単金60万円の場合における給与例】

稼働時の給与:月給45万円(賞与なし)
待機時の給与:月給0万円

続いてのパターンは『待機になった場合は休業扱いとなる』というものです。

待機中は『休業手当』が支給されることとなり、平均賃金の60%が支払われることになるのですが、休業手当の計算上、実質的には『月給の4割ほどの給与』になってしまう点に注意が必要です。

【参考:休業手当の計算例(月給40万円の場合)】

<STEP #1:平均賃金額の算出>
月給40万円 ÷ 3か月(90日) = 13,333円

※事由発生日以前の3ヶ月間において、その労働者に支払われた金額の総額をその期間の総日数(暦日数)で除した金額となる

<STEP #2:休業1日あたりの金額を算出>
13,333円 × 60% ≒ 8,000円/日

※平均賃金額の60%が1日あたりの金額となる
※実際には小数点第2位未満を切り捨てる

<STEP #3:休業期間に応じて手当金額を算出>
8,000円/日 × 休業期間中の所定労働日数(ex. 20日) = 手当金16万円

※この例では1ヶ月待機となったと仮定して算出(所定労働日数:20日)
※円未満の端数は四捨五入にて処理する

参照:https://jsite.mhlw.go.jp/oita-roudoukyoku/content/contents/000668422.pdf

会社側としての雇用リスクはゼロではないものの依然低く抑えられるということもあり、還元率を少し高く設定することができるようになります。

雇用者側からすれば収入がゼロになることはないという安心感はありますが、月収に大幅な変動が生じる可能性が残されます。

そのため給与体系をしっかり理解し、必要に応じて収入減への備えをしておく必要があることでしょう。

【単金60万円の場合における給与例】

稼働時の給与:月給41万円(賞与なし)
待機時の給与:月給16万円

続いてのパターンは『待機等になった場合は基本給のみが支給される』というものです。

仮に『月給40万円』のエンジニアであると仮定した場合、その一部を基本給(例えば『20万円~25万円』)として設定し、残りの部分を手当(例えば技術手当など)の名目で支給します。

稼働時は『基本給+手当』の満額を受け取ることができますが、待機時などの場合は『基本給』のみとなるため、月収に変動が生じる可能性があります。

あくまでも減少するのは『所定の手当分のみ』(企業により異なる)となるため、これまでにご紹介したパターンに比べれば安定した収入をキープしやすいという特長があります。

また、この給与体系を採用している起業の場合は、給与の総支給額だけではなくその内訳にも着目しておくと良いでしょう。

【単金60万円の場合における給与例】

稼働時の給与:月給40万円(賞与なし)
待機時の給与:月給20~25万円

最後のパターンは『月給は変動させず賞与で調整する』というものです。

稼働時か待機時かに寄らず毎月の収入が一定となりますので、これまでにご紹介したどのパターンよりも安定していると言えます。

反面、『賞与で調整される』という制度設計の都合上、他のパターンを採用している企業に比べて月給は低くなりやすいという側面もあります。

生活の安定性が高く、年に1〜2回まとまった金額を受け取ることができるという意味では、賞与を貰える方が嬉しい方安定性や安心感を重視されている方にマッチしやすい制度設計と言えますね。

また、賞与込みの年収でいえば他のパターンを採用している企業と比べてさほど遜色ない場合もありますので、そういった制度や思想の違いを理解した上で比較検討されると良いかと思います。

企業側としても待機時のリスクを踏まえた上でエンジニアに還元することができるようになるため、『エンジニアへの還元』と『会社としての安定性』を両立させやすくなるというメリットもあります。

【単金60万円の場合における給与例】

稼働時の給与例:月給35万円(賞与60万円)
待機時の給与例:月給35万円

※給与と賞与の比率については会社によって異なる

これまで『単価評価制度』を導入している企業について言及して参りましたが、そういった制度を導入していない従来型のSES企業の場合はどうでしょうか?

細かいルールは各社によって異なるのは前提としても、新SES企業との大きな違いは『明確な評価制度があるか否か』という点であり、『待機になったら賞与が減額されるのは変わらない』という場合がほとんどであると考えます。

場合によっては、何かの損失を補填するために個人ではなく全体の賞与をこっそり減額して調整する……という事例もあるかもしれませんね。

いずれにせよ、その評価プロセスや計算式が不透明である以上、なにがしかの理由で賞与が減額になっていたとしてもエンジニア側からは確認が難しいケースが大半なのは変わらないことでしょう。

それよりもヤバイのは『高還元率で待機になっても100%給与保証!!』を謳っている場合——つまり『いかなる場合でも月収や賞与の減額が無い』と言ってる会社です。

『還元率の高さ』と『待機時の保証』はトレードオフの関係にあります。

客観的かつ論理的に実現可能なスキームが示されているならさておき、それらなくして「高還元かつ100%給与保証」と標榜している企業があるとすれば『嘘をついている』『すぐに倒産する会社』かのいずれかであると言えます。

絶賛売り手市場とも言える今のご時世において、エンジニアが待機になる可能性は低いと言えます。

実務経験が一定以上あるエンジニアであればなおさらであり、実際弊社の2022年期における稼働率も99.6%と高い水準を実現できています。

そのような時勢を活かし年収アップを目指すエンジニアは多々見受けられますが、万が一待機となったときの時のことを気にしている方はあまり見受けられません。

しかし、いつ何が起こるのかは誰にも予測できません。

仮に不景気が訪れたとすれば、SES各社はその稼働率を大幅に下げることになるでしょう。

現に東日本大震災のときは稼働率90%ほどまで下がったと言われており、リーマンショックでは80%まで下がったと言われています。

もし不景気になって稼働率が下がり、待機になってしまったら……。

不景気のときこそお金が必要となりますが、その時『月給が下がってしまう』ことを許容できますか?

不景気になってから転職活動をスタートしても、基本的に良い条件を貰うことは難しくなります。そうなってから転職を考えるのでは遅いのです。

好景気ともいえる今は目先の年収ばかりに目が行きがちではありますが、いざというときに備え待機時のことも考慮しながら、しっかりと会社選びをすることをお勧めします。