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SES企業が抱える問題~未経験で採用した人材が離職してしまう~

右肩上がりに増加するIT需要に比例し、ITエンジニアの不足が日に日に深刻化している昨今、SES企業各社は激しい『エンジニア争奪戦』を繰り広げています。

そのような状況下では実務経験のあるエンジニアを採用することが難しくなるため、未経験者を採用し教育しているSES企業が多く存在しています。

SES企業の求人広告で『未経験者OK』という表記を目にすることも多くなってきたわけですが、未経験者採用を行っているSES企業においてよく耳にする『問題点』が存在します。

それは『未経験で採用した人材が離職してしまう』というものです。

ポテンシャルを見込んで採用し、給料を支払いながら研修を受けさせ、仕事が見つかってエンジニアとして活躍し始めるも、1~2年で退職してしまう……ということが起こっているのです。

実際私も面接をしていて、『技術力が付いてきたのに給料が上がらない。自社の評価制度に不満をもち転職を決意した。』というような転職理由を聞くことが多くあります。

何が原因でこのような事がおこってしまうのか。経営者の観点から回答させていただきます。

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その原因を一言で言えば、『教育コストをかけ過ぎているため、社員の給与が業界平均よりもだいぶ低くなってしまっている』というものです。

まず、『教育コスト』を大まかに試算してみましょう。

未経験者の人件費:29万円
         (月収23万円 + 交通費2万円 + 社会保険料4万円)
1ヶ月の研修費用  :20万円

上記の試算を正とすると、未経験者1人あたり49万円の教育コストが発生することになります。

もちろん、研修は1ヶ月では終わらないことがほとんどでしょう。

仮に3ヶ月の研修期間があるとすると、単純計算でその3倍——一人あたり約150万円の教育コストが発生する計算になります。

さらに、採用は1名だけとは限りません。

もし未経験者5名を採用したとすれば、それが5名分ですから……。およそ750万円の教育コストがかかります。

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この『750万円の教育コスト』は低いのでしょうか?それとも高いのでしょうか?

それは、その企業によって変わってきます。

中小零細企業——年間1,000万円以下の利益しかないSES企業からみれば、年間利益のほとんどを教育コストに使ったことになります。

そういう背景があるわけですから、たとえエンジニアが成長したとしても給与を上げるのは簡単なことではありません。

未経験者の教育に力を入れるのはさておき、そこにコストを使い過ぎてしまうと、未経験で採用したエンジニアの昇給幅だけではなくその会社で働く全社員の給与水準が下がってしまうのです。

そのような状況では、『ある程度経験を積んだ段階で転職しよう』と考えるエンジニアがいたとしても不思議なことではありません。

もちろん、そのように考えるエンジニアがいたとしても、実際に転職するとは限りません。

そもそも転職活動は心理的コストが大きいものです。また、年収アップが見込めるといってもそれが『0〜50万ほど』だとしたら、未経験の時から育ててくれた会社への想いの方が勝ることも多いでしょう。

では、年収の上がり幅が『50~150万円』ほどだったとしたら……。

いくら育ててくれた会社への想いがあったとしても、心が揺らいでくる人も多いのではと思います。

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そのような状況を踏まえた上で私なりの最適解を示すとすると、

社員の年収が『業界平均』以下になってしまったとしても、
その差を0~50万円以内に抑える

といった感じになります。

そうすることで、離職者を最小限に抑える事ができるはずです。

では、社員の年収をこの範囲に収められないとしたらどうすべきでしょうか?

私としては、『未経験者の採用人数を減らして教育コストを抑え、社員の年収を上げるべき』だと考えています。

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給与は『すべて』ではありません。しかし、とても大切なものです。

未経験者を採用していて離職率に悩まれているSES企業の社長さんに、やって頂きたいことが2つあります。

ひとつ目は『教育コストの適正額を決める』ということです。

私がもし『未経験者を採用して教育コストをかける』としたら、『営業利益の20%以内』に抑えます。

もしこれが50%以上使うとなると『会社としての先行投資が未経験者教育に偏り過ぎているのでは?』と考えます。

ふたつ目は『SES業界の平均給与を知る』ということです。

民間の調査会社やクチコミサイトなどの情報から、同業他社の平均給与を調べておきましょう。

そしてその情報を参考に戦略を立てていくのです。

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会社規模が小さいうちから未経験者を何名も採用し教育コストを使っていたら、会社の利益は大きく減ってしまいます。

それでは社員の給与を上げることなど到底叶いません。

どんなに多くのエンジニアを採用できたとしても、給与を上げることができずにエンジニアが転職してしまっては本末転倒です。

そうなってしまうとしたら、それは社長の経営手腕に問題があるといえます。

SES事業で未経験者採用をするのであれば、教育コストの適正額SES業界の平均給与を把握しましょう。

そうすれば、未経験で採用したエンジニアが離職する可能性を最小限に抑えることができます。