見出し画像

女流棋士よ、もっともっと対抗型を指しとくれ*将棋*

消えた戦法の棺桶

最近じゃあ猫も杓子も角換わり、ときどき相掛かり、忘れたころの矢倉雁木なんて風情だ。
プロ棋士には何か大切なものを、忘れ、て、いませんか、と恐る恐る問いたい。
まあオレからして横歩取りを忘れていた訳だけど、居飛車屋だってきっと忘れかけてる。
横歩は、消えた戦法の棺桶に片足ぐらいは突っ込んでるはずだ。
だが、もっと大切な忘れものがある。
消えた戦法の棺桶に片足ズッポリ突っ込んでいるけど、何故かアマチュアに絶大な人気を誇るアレだ。

振り飛車である。

振り飛車なら男性棋士でも指すのではないか?

ここでは読者から、こうした手裏剣風味のプチするどい質問が予想される。
確かに飛車を振る棋士は、いるにはいる。
A級棋士の中にも、思いがけず飛車を振ってくれる棋士が増えて喜ばしい限りだ。

しかし、彼らは油断ならない。
ややもすると、彼らは角換わりを指しちまう。
佐藤天彦九段だから振り飛車だとタカをくくっていると、いきなり角換わりの最新型とか本当にやめて下さい。
もう、富岡新手のあたりからわかんない。そもそも升田定跡からして怪しい。ぶっちゃけ木村定跡だってよくわかんねえ、なんかだか定跡の勢いに誤魔化されてる気もする。



腰掛け銀と早繰り銀の微妙な関係

話しを戻そう。
俺は角換わりが嫌いなんじゃない、大嫌いなんだ。
だけど、角換り早繰り銀の佐々木勇気新手には、心底たまげたよ。


これには声を失った。
なんたって、今打った△37銀がタダだ。掛け値なしのタダだ。ホームラン級のタダ捨てだ。
しかも、これは大昔、棒銀戦法という書籍で先手大優勢の結論がでた同一局面だ。
そこから40年ほど、その結論が覆らなかった。 
ひいては棒銀戦法の著者は石田和雄九段であり、佐々木勇気八段のお師匠さん。
つまり、青は藍より出でて、藍より青かったってこと、きっとお師匠さんも嬉しかったんじゃあないかなあ。
オレの解釈では、
この佐々木新手により、角換わり早繰り銀における先手大優勢の変化がくつがえった。
超訳すれば、角換り早繰り銀は後手がいいんじゃね、となった。
そこで角換わりの先手番は、藁にもすがる思いで腰掛け銀に活路を求めたんじゃないかな。
あくまで超訳。
ここから、現下に続く、棋士の角換わりの奴隷状態が始まったと。


憩いから憂いの角換り

佐々木勇気八段が天才だということは既に述べた。
飛車を振るプロ棋士が増えてきて喜ばしい限りだが、突如、寝返るから油断ならないことも既に述べたはずだ。

NHK杯で、ああこのカードならば、今日は振り飛車だなあ、まさに日曜憩いいこいのひとときだよね、、とテレビの前で悠洋優雅ダラダラと過ごしていることもある。 

そんな時に限って、
角換りの超最新型だよ、コンチクショウ。
日曜憂いうれいのひとときに早変わりだよ、コレまた。
最近では、アノヒトタチ以外はファンの空気読んで、流石にNHKでは角換り一辺倒はやめるようになっている。
だけどまあ、まだまだ多いよね。


対抗型を観る叡智

じゃあ、居飛車 vs 振り飛車、の折檻型じゃなかった、対抗型を確実に観る方法は存在しないのか?
 存在する。ある
ここで本題とようやく繋がって嬉しい限りだ。

対抗型を確実に観る方法、
それは、
女流棋士の対局を観ることだ。

野郎どもと違って、女流棋士の振り飛車屋比率は、直近でも上昇トレンドにあるし、まだまだグイグイ上がってる。
まあ最近、女流棋士がこれでもかと増えてよう解らんが、きっとそれはいいことだ。

しかも、女流は相手が振ったらば柔軟に対抗型とする、対抗系屋が多い。
たまに相振りになるけど、それはそれで良い。
じつのところ俺はそっちの方が良い、まあ飛車を振ってくれたら対抗型や相振りや性別や日経平均やスタグフレーションなんて超越ぶっとんで良い。
しかも、振り専の女流棋士きしのかがみはまずもって裏切らない。

振り専門だから、藪から棒に角換りに走ったりしない。
霧島酒造杯女流王将戦だったっかな?
アレは本戦ののっけからテレビでやってくれるから、見応えがある。
本戦からして振り専が多く、対抗型やら相振りで山紫水明、目の正月だ。
しかも、タイトルホルダーが西山さんだから、タイトル戦も自ずと振り飛車がらみで見逃せない。


女流棋士よ、美味しいとこだけもってけ

根本的に、文明において誰かのツケは誰かが払わななければならない
プロ棋士の中で、魅せるを放棄した誰かが居た場合、他の誰かが魅せなければならない。
勝つと魅せるのトレードオフ両雄並び立たず
それは、まあまあ解ってるつもりだ。
魅せるよりも勝つ、或いは、勝つよりも魅せる。
ここで葛藤が起こる。
少なくない男性棋士が、勝つを拾い、魅せるを捨てた。

だが、本当にそんな美味しいところを捨ててよかったのだうか。
女流棋士ばかりが、魅せるという美味しい果実を拾っていいのかねえ。

はやくもAIは爛熟期をむかえている。「人類の強さ」の意味は希薄される一方だ。 
いきおい「魅せる」の意味がドンドン濃度を増している。

どうかなあ、いまや本当にプロと云えるのは、女流棋士のほうなんじゃないかなあ。

パラダイムシフト勝つと魅せるの逆転現象が起きたのに、環境に適応しなかった種は滅ぶ。
図らずも、魅せるを一手に引き受ける羽目になった女流棋士が、将棋界隈を背負っているんじゃないか、と想うんだ。

だから、女流棋士には、もっともっと矜持をもって飛車を振って欲しい。
あなたたちは、素晴らしい仕事をやっているんだから。


では、また。

この記事が参加している募集

将棋がスキ

この経験に学べ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?