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死期を運ぶトロイの黙時録/スマートウォッチの掟

スマートウォッチが流行している。
かくいう筆者も愛用者の端くれだ。
このスマートウォッチが「死期」を宇宙クラウドに運んでいく。

神を超え、バイタルを知るもの


スマートウォッチは利用者の睡眠時間や歩数などをつぶさに知らせてくれる。
そのためにはアプリをインストールし、その上で手首にスマートウォッチを付着しなければならない。
そうすることで、スマートウォッチは利用者の心拍、体温などの身体情報を24時間体制で緻密に計測し様々なアドバイスを表示してくれる。

いまや、我々の身体情報をカミよりもよく知っているのがスマートウォッチ。
そしてその向こうにいるAIひいてはIT企業なのだ。

我々のバイタルは彼らに完全に把握されている。



死期は丸裸

AIは理屈を理解しない。
AIはパターンを理解する。

こうだからこうなる、という理屈は理解しない。
およそこういう場合にはおよそこうなる、というパターンを理解する。

因果関係でなく、相関関係で物事を把握するのだ。

スマートウォッチプラスαの膨大な利用者情報ビッグデータによって、
「誰が」「どういう身体情報の時に」「あとどれだけの時間で」「どのように」死ぬのか、までを彼らは把握した。

つまり、利用者の死期は丸裸なのだ。

まだ死なないぞ、という勝ち気な読者もいることだろう。

だが、スマートウォッチAIの射程と情報量はとても広く大きい。
健常者であっても、わずかな心拍の歪みと睡眠の軋みから、その掛け算によって「ああ、こいつあとこれくらいだよね」ということを高い精度で予想する。

因果律と医者の予想は概ねにおいて裏切るが、
相関関係とビッグデータは押し並べて裏切らないのだ。


考えて見て欲しい。
これほどまでに人々の身体状況が筒抜けになっている時代があっただろうか。
24時間肌身離さずスマートウォッチを装着し、心拍、体温、血圧、呼吸のすべてを精緻にクラウドに吸収させている。
そんな歌舞伎者が大量に出現した時代が、現在なのだ。



相関関係と掛け算で、死期は分かる

ビッグデータによって、人間がどういう心拍パターンの時に死にやすいのかが分かる。
ビッグデータによって、人間がどういう体温パターンの時に死にやすいのかが分かる。
ビッグデータによって、人間がどういう血圧パターンの時に死にやすいのかが分かる。
ビッグデータによって、人間がどういう呼吸パターンの時に死にやすいのかが分かる。

ビッグデータによって、人間がどういう金遣いの時に死にやすいのかも分かる。

ビッグデータによって、人間がどういう文言を検索した時に死にやすいのかも分かる。

・・・
・・

これらの凄まじいパターン数を掛け算することで、AIは非常に精度高く人々の死期を予期できる。

MATANAは知っているよ。



身体情報バイタル争奪戦 波昂し

個人情報商品の収集合戦が中と米を中心になされている。


「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「どのように」…といった基礎的な個人情報はすでに囲い込みが概ね終了した。
スマホの配布・普及が終わった時点で終了したといっても過言ではないだろう。

あとに残ったのはより細かな個人情報。


平時ではなく有事の個人情報。
マクロではなくミクロの個人情報。


中と米、
国家と企業、

個人情報をめぐる二つの対立軸。



個人情報商品の争奪戦は早くも正念場を迎えている。

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