漫画:有栖サリ、夏目漱石作:こころ

〜あらすじ〜
私は海水浴場で先生に出会った。
異国人と対等に話す先生の姿が魅力的で話しかけるチャンスを窺っていた。
ついに先生と話すきっかけを得た私は先生の思想に魅了され自宅へも訪ねるようになった。
ある日、先生宅を訪ねると雑司ヶ谷の墓へ出掛けたと奥さんから伝えられる。
雑司ヶ谷の墓で先生と出会うも、
動揺した様子でなぜここへ来たか問われる。
ここには先生の話すことのできない友人の墓があった。
事情が知りたい私は奥さんに話を聞いたところ友人が亡くなる前と後で先生の性質が変わったことを知る。先生の過去を知り支えたくなった私は友人と何があったのか尋ねる。
先生は私の真面目な思いを汲んでくださり、話す時期が来たら話すことを約束してくれる。
一方、私の父が重い腎臓病を患っているため一度郷土へ帰ることへなった。
父の容体も危ない中、先生から私宛へ1通の封筒が届く。そこには先生の遺書として過去が認められていた。


◎感想◎
夏目漱石代表作の「こころ」、小説を一度読みえらく心に残ったため、漫画も購入してみた。
わたしが夏目漱石を好きな理由として、文章が気品に溢れているところである。
この「こころ」は人間の生死に対する重いテーマが描かれているにも関わらず、夏目漱石ならではの上品な文体で読了後も暗い気持ちにならず、高尚な感性で人間の生死について熟考することができるのが魅力である。
漫画版では有栖サリさんがBL漫画を中心に活動されていることもあり、前半は私と先生の関係が色っぽく神秘的に描かれているのでBL色がやや強いと感じた。
しかし、後半になるにつれ、原作の魅力と漫画の色気ある描写がうまく合わさり、どんどん世界観に引き込まれていった。
特に主人公の私が列車から先生宅に向かうまでの手紙を読む描写から最期の式場へつくまでの流れが秀逸であり、小説だけでは想像できなかった先生の棺桶に入った姿と夏目漱石の文体が美しくも儚い人間の生死を問う最大の見せ場になっている。
小説の「こころ」も再度読み直したいと思える漫画の完成度であり、一読の価値はある。

原作「こころ」についての感想も投稿予定です。

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