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予言を外した教祖/カルト信者の異常な行動【きまぐれエッセイ】

1954年、冷戦の最中で人々の不安が高まる中、心理学者のレオン・フェスティンガーは、あるカルト教団に潜入するという大胆な試みを行った。主役は自称霊能者のマリオン・キーチ。このカルトの信者たちは、彼女の予言に基づき、1954年12月24日に世界が大洪水で滅び、宇宙船が選ばれた者たちを救うと信じていた。

フェスティンガーは、キーチの信者として活動を共にし、信者たちの行動を細かく観察した。予言の日が近づくにつれ、信者たちは仕事を辞め、財産を売り払い、身も心も予言に捧げていった。そして運命の12月24日が訪れた。しかし、当然のことながら、何も起こらなかった。世界は平穏なクリスマス・イブを迎えたのだ。

ここで興味深いのは、予言が外れた後の信者たちの反応だった。普通なら失望して教団を離れるだろうと考えるが、実際にはその逆だった。信者たちはさらに強くキーチを信じ、予言が外れたのは自分たちの信仰の強さが試された結果だと解釈したのだ。

フェスティンガーはこの現象から「認知的不協和理論」を提唱した。人間は矛盾する信念や情報に直面すると強い心理的な不快感を感じ、それを解消するために認知を再構築しようとする。この理論は、なぜ人々が間違いや失敗を認めず、逆にそれを補強するような行動をとるのかを説明するものだ。

この研究は、心理学の世界に大きな影響を与え、現代における信念の持続や社会的な行動を理解する上で重要な視点を提供している。自分たちの信念が揺らぐ時、私たちがどのようにしてそれを正当化し続けるのか、改めて考えさせられる話である。


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川越つばさ
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