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【俳句小説】抜け殻からサナギ #2

朧月わたしの輪郭はゆらぎ

緊急入院したわたしは、亡くなったこどもを産んだ。

お腹の中にいるこどもを「はる」と呼んでいた。

はるは生きていたこともあったから、なにかの理由でその人生を終えたのだろう。

退院してから抜け殻のようにぼんやり過ごしていた。出張の多かっただんなは、それでも温かく見守ってくれていたのだと思うし、本人も同じく辛かったと思う。

生まれて初めてのひきこもりは、

友達に知られたくない

という、摩訶不思議な理由だった。

みんながショックを受けるのが忍びない。という表面的な理由の裏側に、可哀想とか、気の毒だと思われたくない。負けず嫌い気質もあったのだろう。

出産予定日の春ごろに、同じ時期に妊娠していた友だちは出産していたし、どうして自分だけ、という想いもあったから。

そんな人生で経験したことのない、ぶよぶよした感情を持て余していた。

ある日、ひきこもっていたわたしにだんなは

外に出てみたら

とやさしく言ってくれた。

近所の雑貨屋でアルバイトをはじめてから、少しずつ人と話したり、元気を取り戻していった。

でもそれは、受け入れたというより、忘れたふりを決め込んで、こころの奥深くにしまい込んでいったのだった。

#小説 #エッセイ #俳句小説 #俳句 #幸せとは #復活

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