ゲームが無料になって20年
PCオンラインゲームはアメリカで生まれた。それが韓国で人気となり、2000年ごろ続々とオンラインゲームを開発する会社や運営サービスする会社が生まれた。
ソウルは日本のファミコンブームのときのような感じで、ゲームを作りたい人、ゲームでビジネスをしたい人の熱気がすごかった。そのころKOCCA(韓国コンテンツ振興院)のセミナーで1時間ほど話をしたが、300人ぐらいの参加者があり、質疑応答は講演時間より長く1時間以上あった。
ソウルとプサンには何度か調査で訪れた。学生ベンチャーや仲間同士でゲーム会社を作ったケースは結構あったが、靴販売店など異業種からの参入もあった。1980年代の日本のように多くのゲーム会社が誕生していた。日本と比べてベンチャー率は高かったと思う。
当時のオンラインゲームのビジネスモデルはサブスクリプションモデル(だいたい月額課金)だった。オンラインRPGの世界を仲間たちとパーティーを組んでプレイするという特質上いったんユーザーになると、自分だけがほかのゲームに移ることは難しかった。韓国のゲーム会社はどこもその問題に悩んでいた。
新規のタイトルが苦戦を強いられたところに現れたのがアイテム課金だ。今ではおなじみのビジネスモデル。
ユーザーは、基本無料でゲームをプレイできる。ゲームをほかの人より有利に進めたい人、早く進めたい人は、強い装備や武器、能力や機能アップできるアイテムを購入する。
韓国でこのシステムを最初に導入したタイトルはわからないが、日本で最初にこのシステムを導入したのは、ネクソンの『メイプルストーリー』だったと思う。2023年末だ。
2004年になると、韓国のアイテム課金タイトルをリリースした会社が複数現れた。当時国内のオンラインゲーム市場調査に関わっていたので覚えているが、この年アイテム課金ゲームは、『MU -奇蹟の大地-』『スカッとゴルフ パンヤ』など12タイトルあった。
オンラインゲーム会社同士が月に1度ぐらいの頻度で集まり情報交換を行っていた。同席させてもらったことがあったが、ほかの会社と異なるビジネスモデルでビジネスをしようと考えている会社の社長は、売上に対する不安を口にしていた。サブスクリプションモデルが主流の時代だ。
ユーザーに無料でゲームを提供するために、スタッフの人件費、サーバー代、事務所家賃などの固定費、広告宣伝費と多額の先行投資をしなければならない。リスクは大きかったし、成功事例はまだなかった。
一般の課金モデルとは異なるゲームをプレイすると、いつ料金を取られるのかわからない、そんな半信半疑のユーザーも少なからずいたと思う。この課金モデルはいきなり広がったわけではない。しかし、2004年中ごろからユーザーに少しずつ認知され、安心してプレイできることがわかると、年末ぐらいから着実にユーザーが増えた。
そのころアメリカの大手ICT企業が韓国や日本を中心に、この新しいビジネスモデルについて調査を行っていた。その中の数社のヒアリング調査に協力したことがある。
そして今。ほとんどのスマートフォンゲームがこのビジネスモデルを採用している。だが、アイテム課金という言葉自体はすでに過去のものになっている。
世界中でこのビジネスモデルは一般化し、業界ではフリー・トゥ・プレイ(F2P)モデルとして認知されている。
このモデルが日本で普及して今年で20年。これからどのような新しいビジネスモデルが生まれるのだろうか。
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