法律答案の書き方について

第0 はじめに

はじめまして、令和3年に予備試験、令和4年に司法試験に合格した者です。

今回は、法律答案の書き方をテーマに記事を書きました。

司法試験の勉強をしていく中で、予備校の講義や基本書を活用すれば、合格に必要な知識を学ぶことができます。
しかし、事案をどのように処理し、答案を書いていくかについては、自分で問題演習をし、参考答案を分析するなどしなければ学ぶのが困難だと感じていました。

そこで、今回は、事案をどのように処理し、答案を書いていくかを中心に記事を書いていこうと思います。

私自身が受験時代にこんな記事があれば良かったと思う内容を書いているので、受験生の方は時間があるときに読んでみてください。

目次
第1 法律答案の作成プロセス
 1 問題文を読む=事案の把握
 2 答案構成をする
 3 答案構成に沿って答案を書く
第2 法律答案の形式
 1 ナンバリング
 2 法的三段論法
 3 文章
第3 終わりに

第1 法律答案の作成プロセス

1 問題文を読む=事案の把握

⑴ 時系列を意識する
問題文を読む際には、時系列を意識することが大事です。問題文には事実が記載されていますが、その事実がどのような順番で発生しているかを整理しましょう。
時系列の違いによって法律関係そのものが大きく変わることがあるからです。
例えば、XがYに騙されて絵画を売ってしまったため、Xがその売買を取り消した事案においては、取消し前にYが第三者Zにその絵画を売ったのか、取消し後にYがZに絵画を売ったのかで、法律関係が大きく変わってきます。

⑵ 関係図を書く
司法試験や予備試験、法科大学院入試で出題される事案は、多数の当事者が複数の行為を行うことが多く、複雑です。そこで、登場人物の人数や当事者同士の関係性を整理するために、関係図を書くことをオススメします。複雑な事案を自分なりに整理して理解できる点で有益です。また、そうすることで、文章を書く際に、主体(誰が)や客体(誰に対し)、行為(何をする)が書きやすくなります。
例えば、私は、民法の問題を解く際には、「X→Y」という関係図を用います。これは、XがYに対して債権を有するという意味で用いており、そのまま答案に使える表現になっています。他にも、「X⇒Y」は、XがYに対し特定の法律行為を行ったという意味で用いており、「⇒」の上に「S」(Sale)と書いてあったら「売却した」という意味になり、答案では、「Xは、Yに対し、~を売却した。」と表現することになります。

2 答案構成をする

⑴ 答案構成の意義
答案構成とは、答案の方針や内容を簡単にまとめたものをいいます。答案を書くための地図のようなものであり、その詳細さは人によって異なります。

⑵ 答案構成のメリット
答案構成をするメリットですが、まず、予め書く内容を整理するので、読みやすい答案が作れる点が挙げられます。これは、試験委員が読みやすく好印象を抱かせられる点と、論理的な答案と感じさせられる点でメリットになります。

次に、途中で書く内容を変更しないので、矛盾したことを書きにくいというメリットがあります。答案を書く時間は、少なくとも、法科大学院入試で30分程度、予備試験で50分程度、司法試験で90分程度です。このように長時間答案を書いていると、途中で何を書いたか忘れてしまうことがあります。これはあくまで私の実感ですが、論理的に矛盾する内容を書くと一気に点数が下がる可能性があります。そこで、論理矛盾のリスクを減らすために、答案構成をすることを推奨します。

さらに、答案構成の時点で、書く内容を大まかに整理して書いていくので、実際に答案を書く際には、スラスラと書くことができ、結果的に時間短縮になるというメリットがあります。少なくとも、何も考えずに答案を書いては後々に修正し答案を書くという書き方よりかは、答案構成をして書いた方が早く書けると思います。

⑶ 答案構成のやり方=法的思考プロセス
 では、答案構成のやり方を説明していきます。まずは、①答案構成をするまでに頭で何を考えているかを説明し、②考えたことをどのレベルのナンバリングで書くかを考えていくことになります。そこで、①答案構成をするまでに頭で何を考えているか、すなわち、どのような法的思考プロセスを経ているのかについて説明していきます。法的思考プロセスの基本は以下のとおりです。

問題を解決するための条文を探す

条文の要件を抽出する

要件に事実を当てはめる

全要件を充足すれば効果が発生する=結論

 この過程の中で、一見して結論を出せない場合、それがいわゆる論点であることが多いです。また、論点や判例の勉強をする際は、当該論点や判例がこの過程の中のどこで問題になっているかを把握するようにすると勉強になると思います(書き方については第2の2⑵参照)。

 次に、②法的思考プロセスをナンバリングに落とし込みます。ナンバリングは基本的に以下の構造で問題ないと思います。

1 問題提起
⑴ 要件①
ア 規範(定義)
イ 当てはめ
ウ 結論
⑵ 要件②
⑶ 要件③
⑷ 結論

3 答案構成に沿って答案を書く

答案構成ができれば、最後はそれに沿って答案を書くことになります。最初のうちは、思うように文章が書けないと思います。ゆっくりでもいいのでちゃんと文章を書くトレーニングを積んでいきましょう。根性論的になりますが、ここだけは淡々と書く練習を積み重ねるのが近道です。

第2 法律答案の形式

1 ナンバリング

第1→1→⑴→ア→(ア)の順で書くのが基本です。

2 法的三段論法

大学や法科大学院では法的三段論法を学ぶと思いますが、私の経験上、法的三段論法には以下の2種類あると思います。少なくとも、司法試験対策の観点からは、以下の2種類を押さえておけば十分だと思われます。

⑴ 広義の三段論法(要件→当てはめ→効果)

・要件①②③を満たす場合は効果Aが発生する。
・本件では、~であるから(事実)、要件①②③を満たす。
・よって、本件では効果Aが発生する。

⑵ 狭義の三段論法―いわゆる論点の処理(規範→当てはめ→結論)

・B(要件①)とは、C(規範)をいうと解する。
・本件では、~であり(事実)~であるから(評価)、Cといえる。
・よって、B(要件①)といえる。

3 文章

⑴ 接続詞を使うことで読み手に予測可能性を与える
「確かに」「しかし」「そこで」「また」「さらに」「したがって」「よって」等の接続詞を使って文章を作りましょう。まずは、基本書や予備校テキスト、論証集等を読み、どのような流れで接続詞が使われているのかを分析しましょう。

⑵ 短文で書く
確かに、「~であり、~で、~であるところ、~であるため、~であると考える。」というように、つい長文で書きたくなるかもしれません。しかし、そこはグッとこらえて、短文で書くように努めましょう。試験委員は、採点の際に、初めて答案の文章を読みます。それゆえ、なるべく短文で書き、接続詞を多用した文章の方が読みやすく印象が良いです。

⑶ 誰が、誰に対して、いつ、どこで、何をしたかの順で書くと読みやすい
例えば、売買契約締結の事実を文章にするのであれば、「Xは(誰が)、Yに対し(誰に対して)、令和4年4月16日(いつ)、K市で(どこで)、本件土地を代金1000万円で売った(何をした)。」などと表現することになります。
個人的なおすすめは、大島本の請求原因事実や抗弁事実の言い回しを覚えることです。予備試験を受ける場合、口述試験の段階で、請求原因事実や抗弁事実の言い回しを覚えることになり、そのおかげで文章力が格段に上がると思います。

第3 終わりに

いかがだったでしょうか?

答案の書き方を軽視し、知識に重点を置く受験生はいると思うので、答案の書き方にこだわるだけで、そんな受験生と差をつけれるのではないかと思います。

今回の記事が少しでも受験勉強の参考になれば幸いです。

それでは!


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