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産業廃棄物に新しい命を吹き込み環境保全に貢献する日本ダスト

“廃棄物に新しい命を”をテーマに、産業廃棄物の有価物化・リサイクル・無害化などあらゆる角度から多面的なアプローチをおこなう日本ダスト。焼却や埋め立てによって処分される廃棄物を減らすことで、CO₂削減を実現することから、「低CO₂川崎ブランド’22」に認定されました。リサイクルをテーマに環境保全に貢献する日本ダストの事業とは——。
 

(写真左から)日本ダスト株式会社 渡邉佑介さん、吉野治郎さん

“ゴミの処理”ではなく“製品を作る”という気持ちを大切にしています

 ——まずは事業概要から教えてください。

吉野さん:“廃棄物に新しい命を”をテーマに、産業廃棄物の収集運搬・処分をおこなっています。今年で創業53年ですが、約50年前というと公害の問題が深刻になってきた頃で、どの会社も廃棄物の処理に困っていたそうなんですね。そこで、廃棄物を安全に処理するサービスとして事業がスタートしました。 

——具体的にはどういった流れの作業になるのでしょうか? 

吉野さん:産業廃棄物をコンテナ車で回収して、重機や人の手で選別したものを破砕し、金属原料やプラスチック原料、ガラス原料などへリサイクルしています。食品廃棄物は平塚にある工場で作業をおこなっていまして、容器は洗浄してマテリアルリサイクル(※1)し、内容物はメタン発酵や豚の餌にリサイクル処理しています。廃棄物を焼却したり埋め立てるよりもCO₂の排出量が27%削減できるということで、昨年、川崎市から「低CO₂川崎ブランド’22」に認定いただきました。

 渡邉さん:私は前職が食品業界なのですが、その時は“食品を廃棄しない”という考え方だったので、廃棄したあとのことは考えたことがなかったんですね。でも、この会社に入社して、焼却や埋め立てをするのではなく徹底してリサイクルに繋げることに衝撃を受けました。 

川崎市では、ライフサイクル全体でCO₂削減に貢献する川崎発の製品・技術、サービスを「低CO₂川崎ブランド」として認定。日本ダストも昨年、「低CO₂川崎ブランド’22」に認定された。

——食品の容器自体もリサイクルされるということで、未開封の瓶や缶詰など、そのままの状態で引き取るそうですね
 
吉野さん:もともとは破砕の設備しかなかったのですが、容器をリサイクルするための洗浄工程を加えて、破砕機自体もグレードアップしたことで、様々な容器で製品化された食品のリサイクルが可能になりました。
 
食品を販売している企業さん自らが中身を瓶や缶から出して容器を洗浄するって大変なんですよね。我々の場合でも、味噌やハチミツなどドロドロした食品の容器は、機械では上手く洗浄出来ずに手作業でおこなうほど手間がかかるので、製品状態のまま引き取るようにしています。
 
渡邉さん:食品工場で大量に出る野菜のクズって、簡単に堆肥化や動物の餌に処理できるんです。でも製品状態の食品は、ひと手間必要で簡単にリサイクルできないので、製品状態のものを容器ごと引き取ってリサイクルするというのが弊社の特徴ですね。
 
——食品の取り扱いは平塚の工場でおこなっているそうですが、こちらの川崎工場では、どういったものを?
 
吉野さん:木やプラスチック、紙、金属、ガラス、ゴムなどの混合廃棄物です。集まった廃棄物を重機と人の手できっちり選別して破砕しています。
 
渡邉さん:皆さんのご家庭でも“燃えるゴミ”と“燃えないゴミ”を分別していると思いますが、それで言うと、ひとつの箱に色々な種類の廃棄物を集めるイメージですね。集めたものを工場に運んできて分別し、種類別に細かく破砕するという流れです。先程お伝えした食品と同じで、顧客様のほうで分別が必要ない上に、ほぼ100%リサイクルできるのが弊社の強みです。
 

産業廃棄物を重機で選別している様子。このあとの細かい選別は手作業でおこなわれる。(写真家/映像作家のオーゼキコーキ氏制作の動画「ゴミを出さない事なんて出来ない僕らに出来る事」で作業の様子が見られます)  
工場の1フロアは、映像や雑誌の撮影などのロケ地としても実は有名なのだとか。

 ——ほぼ100%リサイクルできるという技術には驚きですが、自分が廃棄したものが、その後どうなっていくのかを考えることは、とても大切ですね。
 
吉野さん:そういった意味では、これまでにも小学校でリサイクルに関する授業をおこなってきましたし、昨年は川崎ブレイブサンダースさんに声を掛けていただいて、「カワサキ文化会館」でお子さん向けにSDGs教室をおこないました。
 
渡邉さん:その時は色々な廃棄物を見せて「これはリサイクルできるでしょうか?」といったクイズを出したあと、リサイクル化したモノを子どもたちに紹介したんです。そうすると意識の高いお子さんからは「脱炭素につなげるためにも分別って大事だね」と、こちらも驚くような言葉が聞けました。
 
取り引き先の企業さんも、以前は「ゴミを持って行ってくれてありがとう」だったところが、「うちから出たゴミがこんな風にリサイクルされるんだ!」というふうに意識が変わってきたのを実感しています。言ってしまえば、廃棄物が出なければ我々のような会社は必要ないんですよ。でも、廃棄物が出ないことはありえないので、受け入れたものは基本的にはリサイクルするという考えで事業をおこなっています。

廃棄されたものが形を変えてリサイクル原料に。環境の授業などで子どもたちに見せると「欲しい!」と興味津々なのだとか。

—— “ゴミの処理”ではなく“製品を作る”というイメージですね。
 
吉野さん:まさに作業員たちには、“製品を作っているんだ”という気持ちで仕事に携わるように教育をしています。品質を担保しないとクレームがきますし、次の処理工程で発火など危険なことも起こるので、品質を担保して製品として出荷することがリサイクルに繋がっていくのだということを伝えていますね。
 
——最後に、今後の展望を教えていただけますか?
 
吉野さん:今年の9月に川崎区の夜光という場所に新工場ができる予定です。そこでは日本で初めての2段式の破砕機を導入することで、さらにリサイクル率を上げることを目指しています。他社では処分できなかったものや、処分できても手作業のためにコストがかかっていたものもコンピュータ制御で破砕できるので、安全性も担保されますし、省人化も可能です。
 
渡邉さん:ロープや硬いタイヤなど今までは重機を使って小さくしていたものも、その破砕機があればそのまま破砕できるんですよ。日本ではまだ1台も導入例がないのですが、困りごとを解決するためにということで導入を決めました。
 
吉野さん:そのままの状態では処理業者に渡せないホースやタイヤが工場の裏のほうに何十年も置いたままになっているという話をよく聞くので、そういった困りごとが、この新工場で解決できればと思いますね。
 
廃棄って遠くに行けば行くほど運搬費が高くなりますし、運搬の距離が長ければ長いほど環境にも良くないですよね。そういった意味でも“廃棄は地場産業”という考え方が私にはあります。川崎で生まれ育った自分としては地元への恩返しの気持ちでこの仕事に携わっているところもありますので、どれだけ地域に貢献できるかをひとつのテーマに、今後も良い仕事をしていきたいですね。

(※1) マテリアルリサイクルとは(PETボトルリサイクル推進協議会より)

こちらの会社は吉野さんの祖父と父親が設立。川崎市で生まれ育った吉野さんは、「川崎で事業をしている同級生も多いため、そういった人たちと変わらず横の繋がりがあることが嬉しい」とのこと。 
前職が食品業界だった渡邉さんは、製品化された食品が徹底してリサイクルされることに衝撃を受けたそう。

書いた人・佐藤季子
編集プロダクション勤務を経て、音楽誌や演劇誌などエンタメ系の雑誌でライターとして活動。地元・川崎市では、麻生区の地域情報サイトロコっち新百合ヶ丘、小中学生で結成された麻生区SDGs推進隊(一般社団法人サステナブルマップ )の運営メンバーとして活動中。