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書籍「図解 やさしくわかる強迫性障害」の感想

書籍名:図解 やさしくわかる強迫性障害
著者名:原井 宏明、岡嶋 美代
出版社:ナツメ社
単行本:160ページ
発売日:2012年5月

これまで強迫性障害に関する様々な本を読んだが、その中でも特にお勧めしたいこの本。私がこれまで読んだ強迫性障害関連本の中ではナンバーワンの本で、本当に役に立ったので著者さんに感謝している。
基本情報から実践的な治療法、再発したときの対処方法まで書かれており、これ一冊を読めばOCDについてはかなりの知識を得ることができる。

病気に関する本は、難しすぎる言葉や長すぎる文章で読むのが大変なものが多い。しかしこの本は文章が簡潔かつ具体的で理解しやすい点もとても良いと思う。
文体やイラストなどの雰囲気も明るく読みやすい配慮がされており、病気の苦しい内容や辛い経験談なども重苦しくならずにすらすら読める。

脳の自己防衛システムが不安に反応している

第1章では強迫性障害とはどんな病気なのか、どのような症状があるのかなどについて詳しく解説されている。
この病気についてほとんど知識がなく、初めてこの手の書籍を読む人にも理解しやすい内容になっている。
個人的に興味深かったのが「OCDが起こる原因とは?」(P.20)

私たちの脳には、災難から身を守るための自己防御システムが備わり、昔からそのシステムを働かせて、身を守ってきました。
・・・中略・・・
昔の人間は、人間を襲う天敵、戦争、感染症の流行など、リアルな危険にさらされていたため、常に脳の防御システムが活発に活動していた
・・・中略・・・
現代は、脳の自己防御システムを働かせるリアルな危険がなくなり、その反動で、ありえない不安や恐怖など余計なところに自己防御システムが働いてしまう
引用元:「図解 やさしくわかる強迫性障害」P.20〜P.21

たしかに、戦争中の兵士は毎日が本物の危険だらけの状況なので、OCDなんかになってる場合じゃないのだろう。戦いの最中に落し物が気になっても、地面を凝視してその場に立ち尽くしていたら命が危険だ。
また、縁起強迫の兵士が敵の拠点から逃げ出す時に、扉を出る瞬間の時刻がいつも避けている数字だったとしても一度戻ってやり直すわけがない。

せっかく安全で清潔なありがたい環境の中に生まれてきたのに、強迫性障害になってしまうと有り得ない些細な不安にまで自己防衛システムが過剰反応してしまうという。
現代のように安全で清潔な環境となったのは人間の進化の歴史の中ではかなり最近のことらしい。この環境の変化に人間の脳が完全には対応しきれていないのだろうか。

暇な時間は強迫観念の餌!

「便利な社会がOCD発症の温床になっている」(P.22)では以下のように書かれている。

現代は、インターネットの普及や家電製品の進化で、人間が体を動かしてやる仕事は減り、時間を作ることができます。暇になると、色々なことを考える余裕ができ、これが強迫的な発想の呼び水になります。「暇は強迫の餌になる」ということです。
引用元:「図解 やさしくわかる強迫性障害」P.22

自分のケースと照らし合わせても、これは非常に納得できるものだ。
どうしてあの頃(もっと昔ではなく)、自分が強迫性障害を発病したのだろう?ということを考えると、その頃は自分にとって、それ以前よりも生活や時間にかなり余裕が出来た頃だったのだ。

時間に余裕があって自由に暮らすというと普通は恵まれたことだが、慌ただしくバタバタと毎日に追われて生きたほうが強迫観念が発生する隙は出来にくいのかもしれない。

わずか数日で不潔恐怖・洗浄強迫を克服する方法も

第2章と第3章では実際に強迫性障害を治療するための知識や、治療方法について解説されている。
その中でも不潔恐怖・洗浄強迫のエクスポージャーと儀式妨害「6日間のプログラム」(P.104)や「3日間の徹底集中トレーニングで早期治療する」(P.110)は不潔恐怖を数日間というかなりの短期間で一気に克服するための方法。

荒療治のような方法ではあるが、「治療中は洗浄強迫がどんなに苦しくても絶対に治す!」という強い意志が固まっている人にはかなり参考になるだろう。


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