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goodware.ブランド立ち上げまでの道のり

こんにちは、KWです。
記事に興味を持っていただきありがとうございます。
今回は、東京都大田区町工場の加工技術を活かした日用品ブランド goodware. の立ち上げまでの道のりを紹介します。


ちょうどいい、これで十分、心地よい。
goodware.は、ものづくりにおける「作り手」と「使い手」の双方にとってちょうどいいと思える「良い塩梅」を探る日用品ブランドです。ものづくり上の制約をポジティブに変換し、個性として仕立て上げることで、簡素な作りが醸し出す健康的な美しさを追求します。

現在商品化第一弾として、「バネクリップピン」の販売を準備中です。
大切な紙に穴を開けず、バネに挟んで留められる画鋲です。

ピン_1


goodware.立ち上げの経緯
もともとは僕が30歳になるタイミングで、プロダクトデザインという自分の職能を、勤めている会社だけでなく社会に直接つなげられないか?と考えたのがきっかけでした。
僕自身が東京都大田区に住んでいること。大田区には約3500社の町工場があり、ものづくりの文化が根付いていること。勤めている会社の創業地(本社)が大田区であること。がリンクして、大田区の町工場と何か出来ないか?と考え始めました。

自分が所属しているリコーのデザイン部署では、商品デザイン業務の他に将来を見据えた先行デザイン研究も行っています。業務比率は8:2くらい。
2017年度下期の先行研究テーマを上司が検討していたので、ダメ元で「町工場とものづくりがしたいです」と企画書を書いて提案したところ、「面白そうじゃん」とOKをもらい、リコーデザインの先行研究テーマの一つとして活動することになりました。


2017年度 ものづくり力の強化
研究テーマ名を「ものづくり力の強化」としました。通常の製品開発では扱うことのない様々な加工技術を勉強して、デザイナーとしての引き出しを増やすことをゴールとしています。
早速活動開始!とは言ったものの、町工場の方々とのコネクションはゼロです。ためしに大田区産業振興協会へ連絡すると、協会が認定している「優工場」を受賞した町工場であれば紹介できますと回答をいただきました。
優工場の受賞企業リストを見たところ、精密挽物加工を得意とする有限会社矢澤製作所さんが目に留まりました。矢澤製作所さんは、作家の田添かおりさんが手がける指輪ブランド「町工場リング」の製作をしていて、僕たちの活動にも協力してくれるかもしれないと思ったからです。
という事で早速矢澤さんにアポを取って会社へお邪魔し、活動概要を説明しました。最初は怪訝そうな様子でしたが、無事協力していただけることになり、工場見学を経て技術サンプルを作製。
矢澤製作所ではΦ32以下の丸棒の旋盤加工を得意としているので、その特徴を活かした極小サイズのマトリョーシカを作製しました。微細な加工精度を手元に置いて眺められてかわいいです。

マトリョーシカ_3


2018年度 異業種プロフェッショナルとのコラボレーション
2017年度の活動は社内メンバーからの評判も良かったため、次は規模を拡大して展示会を開催しよう!ということになりました。リコーのデザイナーが大田区町工場の保有する加工技術を活用してデザインした作品を発表する場になります。
展示会は大田区町工場の加工技術の魅力を周知するだけでなく、リコーデザインの持つ価値観を表明する場でもありたいと思ったので、展示テーマはリコーデザイン内になんとなく漂う特有のセンスを拾い上げて「GOOD ENOUGH.」としました。
good enoughは直訳すると「十分に良い、結構間に合う、通用する」という意味ですが、デザイナーが陥りがちなミクロ視点の過剰な美観を求めることなく、加工技術の制約と向き合って量産しやすいものづくりを実践しましょう、というメッセージを込めています。

展示会に協力していただく町工場を矢澤さんに紹介していただき、計8社とのコラボレーションが実現しました。

有限会社矢澤製作所 / 有限会社INB / 株式会社ヒタチスプリング / 有限会社ふじさん / 株式会社武原製作所 / 三和精機製作所 / 有限会社ピースリー / 株式会社エポゾール

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2019年度 GOOD ENOUGH.展開催
2019年9月に、リコーのデザイナー9名と大田区町工場8社による展示会「GOOD ENOUGH. -Small Factories and Ricoh Design-」を丸の内のギャラリー「GOOD DESIGN Marunouchi」で開催しました。
切削、旋盤、板金、ばね、めっき、ワイヤーカット、ディップ成形など、各町工場が保有する様々な加工技術の特徴を活かした作品計24点を発表しました。
展示会には大勢の方にお越しいただき、町工場の魅力やリコーデザインの取り組みを広く伝えることができたと思います。

GE_会場_1


2020年度 goodware.ブランド立ち上げ
展示会にお越しいただいた来場者の方々から、ありがたいことに商品化希望の声を多数いただきました。
商品化することで町工場の魅力をより身近に感じていただけるし、僕もかねてより社内の製品デザイン業務では経験できない「売る」や「届ける」を自分でもやってみたいという気持ちがあったので、商品化することを決めました。
展示会までの活動はリコーデザインとして行ってきましたが、販売となるとリコーとして売るには難易度が高いことが判ったため、個人活動(社外副業)としてブランドを運営していくことにしました。活動名もそれに伴い GOOD ENOUGH. から goodware. に変更しています。(商標出願中です!)
冒頭でも触れましたが、商品化第一弾は展示会で最も人気のあった「バネクリップピン」で決定しました。今は量産準備中で、3/末に発売できるよう進めています。お楽しみに!

次回はバネクリップピンの詳細を紹介します。

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