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「アプリ×リアル」でお店に足が向く仕掛け


近年、デジタル化の進展により、オンライン書店が急速に広がっています。
実店舗ではなく、電子書籍で本をダウンロードしたり、amazonなどの通信販売で書籍を購入したりする方も多いのではないでしょうか。

大手書店の丸善、ジュンク堂書店、文教堂のアプリ「honto with」にはリアル書店にも足を運びたくなる「しかけ」がちりばめられています。この「しくみ」であるアプリ×リアル書店の連携によって生まれた、店舗への「来店動機」を生みだすしくみについて探っていきます。

hontoアプリを通した、足を運んでもらうための「しくみ」

「honto with」は紙の書籍・電子書籍を注文ができるだけでなく、リアル店舗との連携機能が充実しています。主な機能はつあります。

1:毎日ポイントが貯められる!~チェックイン機能

アプリのユーザーが「honto with」に参画する書店(丸善、ジュンク堂書店、文教堂)に訪れると「チェックイン」の画面が表示されます。
何も買わなくても、よく行くお店に立ち寄る=チェックインするだけでポイント(1ポイント=1円扱いで本が買える)が貯まるため、会社や学校からの帰りなどに「ちょっと立ち寄ろうかな」、「お店を覗いてみようかな」というきっかけになります。


出典:「honto with」 紹介ページより

このポイントは、お店に立ち寄る以外に「honto with」アプリの起動でも1日1ポイント貯まります。
つまり、お店でもオンライン=アプリでも接点を持つことでポイントが貯まります。ただし、使う時は50ポイント毎なので、意識して貯めることをおすすめします!
(この毎日チェックインの他、抽選への参加などのまめなアクセスで、何も買わなくても毎月80ポイント前後を貯めることもできるそうです。)

2:持ち運べる自分の本棚!~欲しい本リストと購入履歴の反映


出典:「honto with」 紹介ページより

「honto with」にはamazonのほしいものリスト同様、「欲しい本」のリストがあります。

「欲しい本」のリストへ追加した本は、ジュンク堂系列の店舗で購入すると「マイ本棚」へ自動的に移動され、アプリ内で一括管理できます。欲しい本のうちどの本を購入したかがわかりますし、二重購入も防ぐことができます。

もともと私は欲しい本をスマートフォンのメモアプリにリストアップし、購入して消しこむという管理をしていました。しかし、記入忘れや消し忘れが多く、ほとんど機能していませんでした。しかし、「honto with」を利用するようになってから、書籍の管理がぐっとしやすくなりました。

書籍は多くのルートや店舗で購入できるからこそ、一括管理しやすくなる該当書店(アプリで指定できます。)で購入したくなるのではないでしょうか。

3:通販よりも早い?~在庫検索と取り置き機能


出典:「honto with」 紹介ページより

「欲しい本」リストに追加した本は一括で在庫検索をすることができ、どの店舗で取り扱いがあるかを調べることができます。紙の本を「今すぐほしい!」時には、通信販売で購入して到着を待つよりも、自分で在庫を確保して買えるので、より早く入手できることもあります。

また、アプリを通してお店に取り置きも依頼できるので、在庫が少ない本は事前に取り置きしておくとスムーズに、確実に受け取ることができます。

このように「honto with」というアプリによって書店の機能(在庫確認や取り置きなど)がスマホを通じて活用できるようになっています。書店に電話をして、書店スタッフの方が問い合わせ対応をする手間を取らせることがないのもメリットです。

来店の動機づけから習慣化へ

来店の動機があれば、「ちょっと立ち寄る」が習慣になり、該当の店舗の常連客へ成長する可能性があります。
たとえば、カゴメ株式会社(ケチャップで有名な)が自社ブランドを購入する顧客を対象に調査をしたところ、購入金額上位2.5%を占めるヘビーユーザー(=常連客)が売り上げ全体の約30%を支えていることがわかりました。
(出典:『ファンベースなひとたち ファンと共に歩んだ企業10の成功ストーリー』日経BP 2020)

書店という業態がネット通販などによって減少傾向にあることはシェア型書店の話でも紹介しました。そのなかで「honto with」というアプリは現代人がつねに持ち歩くスマートフォンアプリによってタッチポイントを増やし、リアル店舗でお客さんの導線をつくっています。アプリを通して、生活動線中にある書店に来店する「習慣」をつくりだし常連客を増やそうとしているとも考えられます。

今回はアプリによって店舗に足を運んでもらうという大手書店の取り組みを紹介しました。
次回は来店を習慣づける方法について、コンビニで拡充しつづけている(あるアイテム)に焦点を当ててご紹介します。


編集猫 KAURU memo

「honto with」というアプリは、アプリ単体として存在するのではなく、実はリアルとネットの連携書店サービス「ハイブリッド型総合書店honto」の一部です。(こちらには奈良県で展開している啓林堂書店も参画しています。)

「honto with」の会員は2023年7月に800万人を突破したとのことで、さらに増えると予想されます。約800万人の会員とのコミュニケーションを丸善、ジュンク堂書店、文教堂という大手書店と、その中核になっている大日本印刷とそのグループ会社がどう育てるか注目です。お店の形は企業の枠を越えて進化しつつあるのかもしれません。


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