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ジェンダー意識を刺激される今どきのアニメといえばコレ!


GWは外出を自粛して、普段なかなか観られない長編アニメを一気に観てやるぞ〜!と決めていました。

前もって選んでいたわけではないのですが、奇しくもジェンダー意識について考えさせられる作品もセレクトしていたので、それらの作品紹介も兼ねた考察です。

どれも作者がそうしようとしてジェンダー意識を盛り込んだのか、偶然そうなってしまったのかまでは定かでないのですが、まずは誰が見てもその辺りがわかりやすく描かれていた『呪術廻戦』から。



『呪術廻戦』は、メインキャラが高校生で呪術師という設定のダーク・ファンタジーです。

グロいシーンや描写も頻々と出てくるし、リアル系の絵柄も含めてどちらかというと苦手な部類の作品なのですが…敬遠してたのが嘘みたいに、最後まで一気に観てしまったくらいどハマりしてしまいました!

この作品の何が「推し」かって、ひとことでいうと、女子が強くて口もガラも悪いところです。

腕組み&鋭い目つきに高飛車で偉そうな物言いだったり、言葉遣いも態度も荒っぽくてコワかったりと、男ウケしそうな可愛い系要素を潔くスッパリ切り捨てた女子高校生たちがじつにカッコいいのです。

この作品には「両手を組み合わせたお願いポーズで大きな目をウルウルさせて上目遣いに男を見上げる」ような女子はひとりも出てきません。

でも、じつは女性目線で見ると、どの女子も男に媚びないだけでちゃんと女の子してるところはしてるし、それぞれに可愛いところもあるのです。
その上で男子と対等に張れるぐらいの強さもある。そこがまたいいんですよね。

姉妹校には「性格に難あり」の女子以外に、男ウケしそうな素直で可愛い性格の女子もいるのですが、そんな女子でもミニスカじゃないのがこれまたよろしい。

その手の“可愛こチャン”ですらも、有名人にミーハーはしても男目線は特に意識していない、可愛こぶらないところに作者のジェンダー意識を感じさせるのです(勝手な解釈かもしれないけど)



なのでアニメ放映中から『呪術廻戦』は、一部(か多数派の?)男性ファン達のあいだでは、女の子が可愛くないとかガラが悪いとかコワいとか散々に言われてたみたいです。

実際にリアルでも話題になってて、あんまり好きなタイプの作品じゃなさそうだし、だから今まで敬遠してたんですよね。

いわゆる消費コンテンツレベルでしか女子を測ることができない残念な男は、この国にはおじさんだけでなく若い世代にもかなりいるようですから。

わたしもですが、そういう人達をターゲットにした作品に不快感をおぼえる女性は少なくないと思います。

これは願望なのかもしれないけれど、今どきの小中学生ぐらいまでなら、家庭でよほど偏った教育をされてない限りは、強くてカッコいい女子をそのまま受けいれられる子も少なくないと思いたいのですけどね。

高校生ぐらいになると、二次元も含む女子を見る目に“ファンタジー・フィルター”が欠かせなくなる男子があからさまに増えてくるように思います。

しかし『呪術廻戦』には、そんなフィルター装備の青少年やエロ親父らが期待するような「巨乳で露出過多のおとなしくて可愛い系女子」も「下着が見えそうなミニスカにいかにもな女の子走りや女の子パンチで非力さを強調する」どこまでも男に都合よく、何でも言いなりの無抵抗主義の“可愛い女”は、あっぱれなことに一切登場しないのです。

『呪術廻戦』の世界では男も女も対等で、性別に関係なく仲間の一員として扱われ、もちろん男子にかばってもらわなくても女子も普通に強い。
非力さを自覚していれば強くなろうと必死に足掻いている。

仲間は女子だからかばうんじゃなくて、性別とは関係なくお互いにそれぞれ役割分担している仲間としてフォローし合う関係です。

そんな女子たちを対等の仲間として扱いながらも、さりげなくかばってあげる男前な男子がいたり、内心じゃ(やっぱコワ〜い)とか思ってるんだろう男の子心理まで見事に描かれてるんですよね。

『呪術廻戦』は、ジェンダー問題に関心が高まっている令和の時代にふさわしい作品だと思います。


特筆すべき点は、この作品に登場する女子高校生呪術師が、ただ単に男まさりで強いだけの女の子という描かれ方をしていないところです。

◆呪術師は実力主義だと言われるけれど、それは男だけで女は違う。
◆女の呪術師は実力があっても可愛くなければナメられる。
◆可愛くても実力がなければナメられる。
◆女の呪術師に求められるのは実力だけじゃなく、完璧であること。

これは作中で出てくる、姉妹校の女子の言葉ですが、思わず(そうそう!呪術師でなくたって、今の世の中は大抵そうなのよ!)と叫びたくなりました。

このへんのリアリズムは、何の疑問も配慮もなく女の子の服が脱げたりスカートがめくれたりする演出を描いてしまう作者や、それに大喜びする男性ファンにはわからないだろうけれど。

その種のシーンをおもしろがり、期待する男性心理の奥底には、女性とはそういう対象であるべきだという偏った思い込みがあるわけです。

この対極に位置するのが少女マンガの“王子様”で、女性に都合よく美化された彼は、世の大多数の男性からすれば「そんな男いねぇだろ(爆)」な非現実的な存在のはずです。

ならば、何でも言いなりの純真で内気な巨乳の美少女だって、女性目線で見ると「そこまで男に都合のいい女はいないでしょ」な非現実的な存在だって、どうしてわからないのか不思議でなりません。

もしや…わかってても自分都合でスルーしてます?

消費コンテンツ化しているのは美少女戦士だろうと王子様だろうと同じことなので、突き詰めればどっちもどっちという話じゃあるんですけどね。

でも、女性の目には、美少女のほうが王子様よりも不本意な扱いをされているように思われてならないんですよね。


また、わたしはこの呼び方あんまり好きじゃないのですが、いわゆる“腐系”の方々のあいだで人気のアレも、やはり同様の消費コンテンツだと見ています。

男性向けコンテンツなら、ロリだ熟女だ人妻だといったバラエティに何の疑問も持たないのに、女性たちが架空の世界で男にコスプレして(?)愉しむのには難癖をつけるという辺りが、わたしなんかは理解不能なんですけどね。

女性むけという時点で、アレは別の何かを投影したファンタジーの一種であることは歴然だし、巷にあふれる男性向けコンテンツとなんら変わらないシロモノだと思いますけどね。

世に溢れるAVや成人向けの男性雑誌やマンガなんかを、女性たちはそこまで迫害してますか?
大半の成人女性は、アレはある種のファンタジーだと割り切って見逃してあげているのでは?

なので、AVと同種の腐むけコンテンツにいちいち過剰反応しているひと達を見かけると、「あのさ〜アンタらが大好きな女の子がやりたい放題されるコンテンツだって、女目線で見ると相当キショいし低俗だし不快なんだけど」と言いたくなってくるんですよね。

「やりたい放題は男の特権だとでも言いたいわけ?寝言は寝て言いなさいよ」って反論されて当然だと思ってます。実際そうなのですから。

これまでAVなんかでさんざん女性を消費コンテンツ化しておいて、今度は自分たちが同じことをされると逆上するというのはおかしいと思うのです。

わたしの見るところ、偉そうな物言いで彼女らに辛辣なことを言ってる奴ほど、男性向けの似たような過激なコンテンツにどっぷりハマってる可能性大なのは見え見えなんですけどね(笑)

『呪術廻戦』を観ながら、頭の隅のほうでは、ずっとそういう思考が次から次へと渦をまいていました。


ここで終わってしまうと、『呪術廻戦』を知らないひとには意味不明だろうから、もう少し補足します。


『呪術廻戦』の主人公は、おバカで一生懸命がウリの「最強ど素人」というありがちなキャラ設定なのですが、このタイプの主人公には、ものすごく共感するか、逆にイライラさせられるかの2択だったりしませんか?

リアルだとまた違うのですが、フィクションだと断然わたしは後者です。

いくら初心者だといっても、ちょっと考えられないようなミスをしたり、優柔不断だったり途中で逃げだそうとしては仲間に説得されて戻ってきて、最後には最強を見せつけたりするタイプの主人公はノーサンキューなのです。

でもこの作品の主人公の虎杖(いたどり)君は、そういう次元にはいないというか、まったく該当しない初心者主人公なんですよね。

左が主人公の虎杖 悠仁(いたどり ゆうじ)君で、右は彼を呪術師の世界に引っ張りこむきっかけをつくった伏黒 恵(ふしぐろ めぐみ)君。

虎杖君には暗い過去もなく、彼はいじめられっ子でもオタクでもイジられキャラでもありません。
素のままで身体能力は人間離れした最強レベルだし、明朗快活で誰とでもすぐ友達になれちゃうタイプで、ほんとうは呪術師なんかとは無縁の人生をおくるだろう人間なんですよね。

その彼が、伏黒君と出会って、なりゆきでムニャムニャしてとんでもない奴がホニャララして(ネタバレするから秘密)、その先で出会う人々に影響を受けて呪術師らしくなっていくわけです。

普通の人間ならさっさと逃げだすような場面でも、彼は「そっちへ行かないほうがいいのになぁ」という道ばかり選んでしまう主人公なのですが、アニメだけでは明確にはわからないのだけど、彼がそうするだろう気持ちだけは不思議に伝わってくるというか、わかる気がするんですよね。

善人すぎるからか、わざわざしなくていい苦労を背負いこんで、しかもそれを苦労だとも不運だとも思うことなく、彼はいろんなものを自分の中で割り切って消化してしまえるタイプなのです。

彼は、もっと明るく健全なスポーツまんがやアニメの主人公にならよくいるタイプなんだけど、グロい描写も多いダークファンタジーの主人公にはいそうでいなかったちょい珍しいタイプかも?

だから最強キャラである某先生が某作品のカカシ先生に激似だとか、男2女1のスリーマンセルのパクり疑惑とか、主人公の仲間のクールなエリート優等生くんがまだ大蛇丸に毒されてなかった頃のサスケっぽいとか、HUNTER×HUNTERもちょい入ってるよね?…なんてことは、まったくどうでも良くなるぐらい『呪術廻戦』はおもしろいのです。

グロいところはやりすぎなぐらいグロいのに、女子の描き方が秀逸でリアリティにあふれているせいか、見ていて苦痛だったり嫌な気分にはならない。

アニメ『呪術廻戦』をまだ観てないなら、観れば原作を読みたくなるのは保証します。

じつは原作ではすでに……ここから先は秘密です。


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