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この怪作は見て欲しい!映画「アリスとテレスのまぼろし工場」感想

 10月1日(日曜日)に福山コロナワールドで映画「アリスとテレスのまぼろし工場」を鑑賞
 当初は恋愛作品だろうと敬遠していたのですが、ネットの評判の良さに気になり見てみました。
 敬遠していたのが悪かったです。
 とても良かった。
 そんな映画「アリスとテレスのまぼろし工場」の感想を書いて行きます。

怪現象の町を見る

 今作は架空の町である見伏(みふせ)が舞台だ。
 この伏見にある製鉄所が爆発事故を起こした日から見伏は町の外に出れず、孤立した状態となる。
 どうやら時間の進行も止まったようで、冬のがずっと続く。
 住民は元の世界に戻る時に備えて、異変が起きた日から変わらないように気を配るようになっていた。
 そんな世界観が舞台だ。
 この怪現象、空が割れる現象が起きるものの、それを製鉄所から発生した特異な煙で直ると言う事も起きている。
 そして、製鉄所に閉じ込められている少女が居る。
 謎が幾つも散りばめられている。
 作中ではこの現象についての推測や変化が見られるので、怪現象が起きるミステリーやパニック作品が好きな人には刺さりそうな気がする。
 見ていて思ったのは、この怪現象はSCPみたいだなと思えた。
 SCPはオリジナルの怪現象などを創作するネット上のコミュニティだ。
 このSCPが好きな人にも刺さる、いや、かなり刺さる内容だと思う。
 恋愛の場面が苦手でも、この見伏で起きている怪現象は何か?を見るだけでもかなり面白いですよ。

田舎で君たちはどう生きるか?

 この作品の舞台となっている見伏は地方の町だ。
 大きな製鉄所がある事で町の経済が成り立っているような町だ。
 主人公の菊入正宗ら少年達はそんな見伏の衰退を感じているように語るシーンもある。
 とはいえ、見伏から出て新たな進路に向かうと言う話は無く怪現象で孤立状態の中で行き詰まりを感じているようだ。
 東京どころか、その地方の都会よりも小さな町に魅力を感じないのはよくある話ではあるものの、何処かで「この町から出られない人生なのでは?」と言う絶望感を抱いているであろう事は主人公の正宗からは見られる。
 作中の自分について書く調査票のような書類に将来の夢を子供も書かされる。親の事業を継ぐなど無難な事を書く一方で、別の夢を本当は追う者も居る。
 しかし、閉じた町の中では叶えられないのでは?と不安になる。
 正宗も伏見を出て、色々と勉強してイラストレーターになりたいと語る場面がある。
 地元の町に縛られて希望や夢が叶わないと思う少年達の絶望感、これに対する答えを正宗は終盤で語ります。
 自分の住む地域から出られない変わらない自分
 それが孤立化した町の中でより確定する。
 更に変化をしてはならないと言うルールがある。
 こうした心境になる世界で「誰かを好きになる」と言う変化が恋愛要素として盛り込まれている。
 変化をどう受け止めるか、変化を進めるか止めるか、その時に自分はどう振る舞うか。そうしたテーマがあるように見えました。
 これが正宗が怪現象へ立ち向かう原動力にもなるのだからすばらしい演出だった。

個人的なところ


 個人的な良いところ
 登場するキャラの絵柄が何か見覚えがあると思ったら、キャラクターデザインがアニメ「クロムクロ」のキャラクターデザインをしていた石井百合子さんだった。
 「クロムクロ」でもそうだったけど、閉じた唇の描き方に独特さがある。
 主人公の正宗の父親を演じるのが、「鎌倉殿の13人」で北條時政の息子である北條時房を演じた瀬戸康史さんだったのが驚いた。
 作中では扇動者として描かれる佐上衛を演じた佐藤せつじさんの怪演ぶりは見て行くにつれて楽しくなってきましたね。
 なにより語らねばならないのは中島みゆきさんによる主題歌「心音」が作品が終わる余韻に浸るのに凄く良い!
 思っていたよりもかなり満足度の高い作品でした。
 
 


 

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