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「ゴジラ-1.0」がヒットした見る側の背景

 ヒット作となった映画「ゴジラ-1.0」
 ゴジラが日本で有名な作品でありキャラクターであるとはいえ、公開1週間で劇場への動員数100万人、興行収入10億円突破と初週のスタートは凄い勢いだ。

 ゴジラが日本で誰もが知るキャラクターであるし、70周年を迎える長い歴史がある。
 果たして今回の「ゴジラ-1.0」のヒットは大御所ゴジラが今までの積み重ねた知名度と人気だけなのか?
 半分はそうでも、少し違うのではないかと思う。
 今回は多くの人々が「ゴジラ-1.0」を見るに至る背景を考察します。

「シン・ゴジラ」以降のゴジラシリーズ



 2016年(平成28年)に公開された「シン・ゴジラ」
 2004年(平成16年)の「ゴジラFINAL WARS」から12年ぶりの新作ゴジラ作品となった「シン・ゴジラ」は現代の日本にゴジラが現れたらをシュミレートした作品としてヒットした作品になりました。
 この「シン・ゴジラ」は2011年(平成23年)の東日本大震災や外交安全保障問題と言う現実に起きた大災害と、有事への危機感が、政府を中心としたドラマで描かれた「シン・ゴジラ」の人気に繋がったと言えます。
 「シン・ゴジラ」から「ゴジラ-1.0」までゴジラ作品は東宝の実写映画としては、7年の間が空きます。
 しかし、その間はアメリカで「ゴジラ~キング・オブ・モンスターズ~」(2019年・令和元年)と「ゴジラVSコング」(2021年・令和3年)が公開されています。
 モンスターバースシリーズと称する新たなアメリカ版ゴジラ作品は、「シン・ゴジラ」より前の2014年(平成26年)の「GODZILLA ゴジラ」から続いています。
 特に「ゴジラ~~キング・オブ・モンスターズ~」はキングギドラやモスラ・ラドンと他のゴジラ作品の怪獣が登場した事と、ドハティ監督の大きなゴジラ愛が話題と好評を呼んだ。
 日本でも、アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」や「Fate/Zero」で人気が高まった虚淵玄をストーリー原案と脚本で起用した映画「GODZILLA」三部作を2017年(平成29年)から2018年(平成30年)にかけて公開した。
 また、テレビアニメ「ゴジラS.P(シンギュラポイント)」を2021年(令和3年)に放送された。
 こうして振り返ると、「シン・ゴジラ」から「ゴジラ-1.0」までの7年間でアメリカで製作された映画2本、日本で製作されたアニメの映画が3本・テレビアニメが1本と合わせて6つの作品が公開や放送されていたのです。
 こう考えると、ゴジラの知名度が薄くなるような事は無かったと言えます。

戦後日本と言う舞台に馴染んでいた



 「ゴジラ-1.0」の舞台は終戦後の日本だ。
 今から80年以上前の昔が舞台となる。
 現代と違う光景に価値観であると、見る観客の理解が追い付かない心配がある。
 しかし、近年において公開や放送されている作品が「ゴジラ-1.0」を見易くしていると言える。
 2016年(平成28年)に公開された映画「この世界の片隅に」
 片渕監督は調べに調べた戦前・戦中・戦後の呉市や広島市の描写を込めて作品を作った「この世界の片隅」はヒット作となり、2019年(令和元年)には新たな場面を追加した「この世界の<さらにいくつもの>片隅に」が公開された。
 ヒットと話題となった「この世界の片隅に」は戦中・戦後の暮しに対する解像度を上げた作品になったと言えます。
 また、戦中・戦後の世界観や登場人物が出る作品が馴染むのに大きな役割を果たした作品がある。NHKの連続テレビ小説だ。
 2010年(平成22年)放送の「ゲゲゲの女房」や「カーネーション」(2011年・平成23年)・「ごちそうさん」(2013年・平成25年)・「あさがきた」(2015年・平成27年)・「わろてんか」(2017年・平成29年)・「まんぷく」(2018年・平成30年)・「カムカムエヴリバディ」(2021年・令和3年)など、戦前・戦中・戦後はもとより、明治時代や大正時代も描かれたドラマがこんなに放送されていた。
 今年も幕末生まれで「日本植物学の父」と称される牧野富太郎を主人公にした「らんまん」が4月から9月にかけて放送
 先月からは「ブギの女王」と言われた戦後の歌手、笠置シヅ子をモデルにした主人公のドラマ「ブギウギ」が放送中だ。
 「ゴジラ-1.0」の舞台は見慣れない光景では無いし、その当時を生きる登場人物へ共感できる素地は見る側にあったと言える。

 「シン・ゴジラ」以後も絶えず作られていたゴジラ作品
 かなり昔とはいえ、見る作品として馴染がある戦中・戦後の舞台
 こうした観客の背景が、山崎監督が手掛けた「ALWAYS 三丁目の夕日」や「永遠の0」でヒットと好評を博した実績と上手く重なったと言えるのが「ゴジラ-1.0」がヒット出来た理由の一因ではないかと考えます。

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