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「年上の部下」とうまく付き合うたった一つのコツ

自己紹介:いち

マネジメント職になったけど、年上の部下がいる。
どのように接すればばいいのかわからない。
お互いに遠慮して、うまく仕事が噛み合わない。

私は29歳の時に初めて自分のチームを任されたのですが、当時7名いたチームメンバーの全員が「自分より年上」でした。そんな中、マネジメントの本を読み漁り、色々な方から話を聞き、失敗もしながらも、4年間年上の部下の方々と向き合う中で最重要のポイントが見えてきました。

年上の部下とうまく付き合うたった一つのコツ、
それは「徹底した役割分担意識」です。

「徹底した役割分担意識」とは
・マネジャーとプレイヤーは担う責任と役割が違う、とお互いに正しく認識する
・お互いに自分の役割で最高の結果が出せるよう集中する
・上下関係ではなく、プロとプロの対等な依頼・信頼関係であると意識する


つまり、マネジャーとプレイヤーは上下関係の意識を持つのではなく、マネジャーは、管理の役割を担っている一人のチームメンバーである、という認識を、マネジメント側の自分、そしてマネジメントされる側のメンバーが正しく持てるかが重要となります。

これから皆さんがマネジメント職となり、年上の部下と一緒に仕事をすることになる可能性も大いにあります。同時に、自分自身の上司が「年下」である可能性もあります。

そのような状況で、いかに最高のパフォーマンスを上げるチームを作れるか、ということを自分の経験をもとにお話しできればと思います。


年上の部下がいるのが当たり前の時代

年下上司、年上部下、と聞くと、まだ他人事のように聞こえる方もいるかもしれませんが、産業能率大学が2017年に実施した「第4回上場企業の課長に関する実態調査」によると

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課長に絞ると、年上の部下を持つ課長は50.9%
https://www.sanno.ac.jp/admin/research/fm3fav0000000qy6-att/kachou2018.pdf

となっており、現在ではマネジメント職につくと、当たり前のように年上が部下として存在するという状況です。

私も含め、年功序列というルールの中で生きてきた年数が長い人にとって、意識的にこの変化と向き合わないといけない時代になりました。


年上をマネジメントするときの2つのやりづらさ

マネジャー時に私がぶつかった問題は大きく2つです。

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【年上の部下マネジメントのイメージ図】
①自分が「年下である」ということに気負ってしまう
②相手が「年下上司」に対して構えてしまう

私が最初にマネジャーになった時には、この図の左下の状態でした。自分自身もマネジャーになったことで浮き足立っている状態、チームメンバーも、自分より年下の上司が来たし、どんなやつか分からないので様子見、という状態で、「全く噛み合わず」うまくいきませんでした。


徹底した役割分担意識を生み出す2ステップ

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【STEP1:まずは左上にシフト】
この状態から脱するには、まずは左下から、左上に行くこと。相手はコントロールできないので、自分自身が落ち着く。マネジャーという立場を意識しすぎて浮き足立つのではなく、マネジャーの仕事と役割は何か、ということを冷静に意識することからスタートします。

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【STEP2:次に右上にシフト】
マネジャーの重要な仕事の一つである、チームメンバーの理解と対話。これを通じて、右上にシフトしていきます。自分のことを伝え、相手を理解することを通じて、「自分は理解されている」という実感を相手に持ってもらう。そうすることでようやく、フラットな役割分担ができる関係に持っていけます。一人一人との対話が必須なので、人数が多いほど時間はかかります。しかし、マネジメント業務としては、必須のプロセスです。

これらのプロセスを通じ、相手と自分は上下関係ではなく「組織内でのフラットな役割分担の関係である」とお互いが共通認識を持つことができます。この意識を持つことこそが「年齢」という目に見えない壁を打ち破り、お互いに協力関係を築くための鍵となるのです。

自分はマネジャーとして最適な業務環境と機会を提供する役割。相手はプレイヤーとして得意領域で価値を最大限発揮する役割。お互いが尊敬を持ってプロ領域に徹することができる、この相互理解による気持ち面での環境づくりが、成果を出せるチームに非常に重要なことなのです。

この意識をお互いに持っている状態がベースとしてできたら、あとはそれぞれの環境で、自分なりのマネジメントスタイルを確立していきながらマネジャーとして成長していくことになります。

では、もっと具体的に、今まさに年上の部下との向き合いで困っており、即効性のあるアクションはないか?という方に向けて、私がこの4年半、年上のチームメンバーとともに仕事を続けてきた経験を振り返って今思う、5つの効果があったアクションをお伝えします。


今すぐできる!年上部下との関係改善の5つのアクション

【年上部下との関係改善の5つのアクション】
①徹底的に教えてもらう
②徹底的に歩み寄る
③プレイヤーとしての価値を示す
④今までのやり方と違う、自分なりの選択肢を提示する
⑤マネジャーしかできないことを最優先でやる

①徹底的に教えてもらう

とにかく、徹底的に教えてもらうことから関係作りが始まります。今の仕事の現状、お得意の現状、パートナー会社の現状、過去の経緯や経歴、仕事の進め方、など。

相手は仕事の先輩であり、かつ人生の先輩でもあります。自分にないものを必ず持っています。これらを、マネジメントという立場で、相手を理解するというプロセスを通じながら、相手の時間を無償でもらって学ばせていただくという非常にありがたい(=とてもラッキーな)権利をマネジメントは持っています。ぜひ徹底的に対話して、教えてもらいましょう。

②徹底的に歩み寄る

2つ目は、特に違う文化の中に自分が飛び込んだときに有効な方法です。私の場合、中国という異国の文化に飛び込んだこともあり、中国の文化、言語、中国式のお作法や考え方などほとんどわからない状態からのスタートでした。

中国のこともわかっていない若造が、、、という意識を少しでもほぐすためには、中国の状況に対して学ぶことが必須でした。言語、文化、歴史、地理、全てを一気に学ぶことはできませんが、学びの片鱗が会話の中で出てくることで、「この人は私たちのことをよく理解しようとしている」ということを相手に感じてもらうのが非常に重要です。

①が自分個人に興味を持ってもらえている、と感じてもらうためのやり方で、②は、もっと広い視点で、私たちの時代や文化に向き合ってくれている、理解しようとしてくれる、と感じてもらうことで親近感を持ってもらうためのやり方となります。

③プレイヤーとしての価値を示す

今の時代、純粋なマネジャーは存在せず、私も含め大部分のマネジャーが「プレイングマネジャー(=プレイヤーをやりながら、管理業務もする)」を担っている状態かと思います。

「優しくていい上司」というだけでは、チームメンバーはついてきません。特に年上の部下は、マネジャーの「プレイヤーとしての能力」を非常によく見ています。

マネジメント層になった時こそ、自分のプレイヤーとしての強み、能力を非常に強く意識しながら仕事を進めるべきです。私は「プランナーとしての企画力」「一つ一つの資料の質」「お得意のキーマンとの関係構築力」「プロジェクト推進力」を自分のプレイヤーの強みとして定義し、この領域ではメンバーの誰にも負けないと自負できるような状態になるよう常に意識・努力しています。

自分のプレイヤーとしての能力発揮に対する真摯さと徹底、これはマネジャーになったからこそ意識すべき重要なポイントとなります。

④今までのやり方と違う、自分なりの選択肢を提示する

特に年上の部下は、これまでの仕事の進め方など、長年自分がやってきた「最適解(=一番自分が効率的・効果的と思っている業務方法)」を持っています。しかし、それが必ずしも最適な方法とはいえない場合があります。

マネジャーとして、改善した方が良いと思うことがあれば、「マネジャーの自分が思う、新しいやり方の選択肢を、根拠とともに提示すること」は必ずやるべきです。ポイントは、そのやり方でやるよう「指示命令をする」ということでなく、選択肢を渡して、「相手に選んでもらう」ことです。

自分が最適だと思った施策は、実は気がついていない穴があり、それが原因で今はやっていない打ち手かもしれません。しかし、一番最悪なのは、自分が最適だと思う施策を無理やりやらせること、ではなく、自分がより良い方法があると思っていながらも、遠慮して伝えないこと、です。マネジャーとしての自分の発言は、必ず相手に気づきを与えます。これは、相手が年上、年下問わず、マネジャーとして必ずやるべき仕事となります。

⑤マネジャーしかできないことを最優先でやる

これは非常に悩ましい課題であり、重要な課題です。誰がもプレイングマネジャーを求められる中でぶち当たる壁は、「プレイヤーの仕事」と「マネジャーの仕事」において、重要度と緊急度が高い仕事が同時に来た場合、どちらを優先すべきか、という問題です。

極論はケースバイケースですが、私は「マネジャーの仕事」に最優先で取り組むべきであると考え、行動しています。

お得意への提案が明日に迫っており、企画書を集中して書きたい、しかし、チームメンバーから、トラブル対応の相談が来た。この場合、私は、集中力が切れるリスクを背負ってでも、必ず、チームメンバーとの対話、トラブル解消に時間を使うようにしています。

その理由は、「マネジャーがマネジメントの業務よりプレイヤー業務を優先することは、職務放棄であるから」です。最初に述べた通り、マネジャーとプレイヤーの関係は、徹底した役割分担が基盤にあります。プレイヤーは、マネジャーが、きちんとマネジメント業務をこなしているからこそ、安心して自分の専門業務に集中できるのです。

自分がプレゼンターをしているなど、物理的にどうしても対応できない時はやむを得ないですが、それ以外は、マネジャーとしての業務を優先。これは自分の業務判断の際の指針に置いて行動しています。


以上が、私がこれまで4年半マネジメントを試行錯誤しながらやってきた中で得られた学びでした。少しでもお役に立てることがあれば嬉しいです。

*個人的には「上司」「部下」という言葉表現自体が、上下関係の象徴であるので、使っていて非常に違和感がありましたが、文章をわかりやすくするため、あえてこの言葉を使っています。ご了承ください。

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