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戦略コンサル、ベンチャー投資を経て考える、スタートアップの不確実性の超え方

Ubieにジョインし、BizDev(事業開発)という役割で、走ってきて1年が経とうとしています。
スタートアップにて”事業を開発していくこと”が自分の中でも少しづつ分かりかけてきたタイミングなので、エントリーしてみようと考えました。
端的にいうと”不確実性が高いことへの乗り越え方”が少しだけ分かってきました。

戦略コンサル(BCG)3年⇨ベンチャーキャピタル(D4V)2年とアドバイザリー業務が長かったですが、自分のヘルスケスタートアップ(Ubie)で事業サイドに回ってみての楽しさや葛藤などをつらつらと書いてみたいと思います。

最近、コンサルからスタートアップへのキャリアチェンジは自分の周りでもよく聞くようになっていますが、“実際、どんな感じやねん”というのが少しでも伝われば嬉しいです。

<<こんな方に読んでほしい>>
・スタートアップへのキャリアチェンジを考えられている方
・コンサルなどのアドバイザリー業務をされていた方でスタートアップに興味のある方

1.自己紹介

まずは、自己紹介。
(本論ではないのでご興味ない方は、
"3.Ubieの中でBizDev(事業開発)として働くこと"
まで読み飛ばしてください!)

京大理学部物理→修士卒業
・数少ない原理原則からあらゆる事象を解明する物理がとても好きでした
・修論が元となりNaturePhysicsに掲載れました。
新卒でBCGへ入社
・かなり甘々な軸ですが、”社会的にインパクトが出せそう”、”優秀な方々が多そう”と感じたのがBCGに入社した理由です。
・新卒で入社するのに”最高の環境”であったと思います。
・挙げると切りがないですが、”プロフェッショナルとしてのマインド形成”が最も大きかったと思います。いまだに自分の価値観に大きな影響があり、大変感謝しています。
D4Vへの転職
・大企業のコンサルをする中で、素晴らしい企業に出会うたびに、こんな会社作った人(創業者/起業家)への関心が高まりました。そうした会社を0から作っていくようなスタートアップ業界に興味が湧きました。
・どちらかというと、自分がオーナーになるというよりは、魅力的な会社がどんどん生まれてくるような環境づくりをしていきたいな考えていました。
・そんな折に、BCGの先輩がベンチャーキャピタルの立ち上げに携わられていると聞き、もうこれは行くしかないとスタートアップ業界に飛び込みました。

2.スタートアップに投資するという仕事

ここで初めてスタートアップという業界を知ります。
スタートアップの大テーマが

"不確実なことをどのように乗り越えて大きくなるか?"

であり、また、ベンチャーキャピタルの仕事が

"不確実性の高いことにチャレンジする起業家を投資することで支援する。不確実性を乗り越え大きくなった際にリターンを得る"

であることを当時は1ミリも理解できてませんでした。

ベンチャーキャピタルという仕事には具体的には大きく、以下の業務があるのですが、入社してすぐに、②の業務において、自分は手痛い経験をしました。

①投資案件をソーシングする(見つけてくる)
②ソーシング案件を評価(デューデリジェンス)し、投資する
③投資した案件をフォローアップする(バリューアップとか言います)

②投資をするかどうかの検討(デューデリジェンス:以下DD)の際に、コンサル時代にいくつか本格的なDDを経験した自分は、得意げにエクセルや市場調査、顧客ヒアリングなど定量的なデータをかき集め始めました。
D4Vは当時、シード期のスタートアップにも投資をしており、自分が投資を検討していたのはまさに”ド”シードでした。
もちろん、市場調査や事業計画の蓋然性を検討することは重要ですが、それだけに閉じてしまっていました。
創業者がどんな世界が来ると思っていて、何にベットしていて、組織に対してどのような想いがあって、また人として信頼できるかなど、シードにおいては、”創業者”が極めて重要。それなのに、エクセルを主に眺めていたわけです。
そんなきっかけから、創業者の方や先輩キャピタリストから
“結局は、不確実なことにチャレンジする人に張るんだ”ということを学びました。
(余談ですが、創業者がいくら優秀でもマクロ環境には抗えないこともあるので、市場調査などが意味がないと述べているわけではありません。)


Ubieとの出会い

Ubieの阿部、久保とはスタートアップのイベントでプレゼン発表していたのがきっかけで知り合いました。
とんでもなく面白いビジネスだと心が震えたことを今でも覚えています。

そして二人と話して見ると、とんでもなく大きなミッションを考えていて、”これこそが起業家なのか。”と感じました。
事業計画や資本政策などは、はっきりいうとめちゃくちゃ。しかし、それを補って余りある光を感じ、すぐに先輩キャピタリストに相談し、自分の人生で初めてソーシングした案件を投資委員会に上げました。
二人の先見性を投資委員メンバーも感じ、無事投資することができました。

ベンチャーキャピタリストとしての付加価値とUbieへの転職

さて、ベンチャーキャピタルの業務を重ねていくうちに、
先程お伝えした業務の中で、自分は、③への関心が高まっていきます。

①投資案件をソーシングする(見つけてくる)
②ソーシング案件を評価(デューデリジェンス)し、投資する
③投資した案件をフォローアップする(バリューアップとか言います。)

③の仕事は、ベンチャーキャピタルの仕事でいうと、不確実なチャレンジをミニマイズし、投資先の事業に貢献することです。
自分がここに興味を持ったのは、投資先の方々と働くことで、この"乗り越える過程"にこそスタートアップの一番の楽しみがありしんどさもあるということが分かってきたからです。それを外部ではありながらも少しでも支援ができればという想いで仕事をしていました。
(当然①や②をこなすことも重要ですし、いちばん重要なのは①であったりします。)
③のやり方は、キャピタリストによって様々でした。
(1)自分の起業経験を活して、投資先の成功の確度を上げる
(2)自分の人脈を紹介して、投資先のビジネスに繋げる
(3)Deepな業界ナレッジを活かして、投資先に示唆を与えるなど

自分の場合できることは、上記いずれもそこまで強くなくて、、
とにかく一緒に考える、資料作る、営業に行くという寄り添うような形でした。
Ubieについても、代表二人+チームと一緒に海外市場調査にでかけたこともありました。

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(半ズボンがUbieの阿部、紺色のリュックが自分です。)

とはいえ、スポットでの付き合い方なので、


・変化量が多いスタートアップでは、1週間で状況が全く変わることもあり、キャッチアップできない
・実際に入りすぎると採用するまで抜けられなくなる
・最後の実装までをサポートできない

など関わり方として健全ではないと感じることが多くなっていきました。

自分自身がそのハードルを乗り越えて行くことこそが、自分の経験にも繋がり、ひいてはD4Vに転職した理由(参照:D4Vへの転職)であった、魅力的な会社がどんどん生まれてくるような環境作りにも寄与できるのではないか。そう強く感じるようになりました。

そんな想いを持っている中で、かねてより大好きだったUbie。
代表の阿部に想いをぶつけると、彼にも喜んでもらえたので、これは飛び込むしかないと確信しました。
2019年4月から正式にUbieにジョインしました。

3.Ubieの中でBizDev(事業開発)としての不確実性越え方(時間がない方はここからお読み下さい。)

さて、事業サイドに移ったことで、投資家の仕事における

“不確実性の高いことにチャレンジする起業家を投資することで支援する。不確実性を乗り越え大きくなった際にリターンを得る”

にチャレンジする事業側に回りました。ここでは、不確実性を乗り越えることが重要です。

そして、事業の観点から不確実性を乗り越えるのために大きな役割を担っているのがBizDevであると思っています。

事業として、不確実性を乗り越えるためには以下の要素が必要だと思います。

(1)ビジネスとして美味しそうな不確実性の高いテーマを見つける
(2)発見した不確実性の高いテーマに対して施策の実施/検証を行う
(3)施策の再現性を高めオペレーションエクセレンスチームに引き継ぐ
(4)1→100を最速で実現するオペレーションエクセレンスを実現する

このうち、Ubieでは、(1)~(3)をBizDev(事業開発)が扱うと考えています。

ひとつずつどのように乗り越えていくか自分の考えをまとめます。


(1)ビジネスとして美味しそうな不確実性の高いテーマを見つける

これは最も楽しい部分であり、事業開発の腕の見せどころだと考えています。

まずは、"美味しそうな"テーマとは何かを説明できればと思います。観点として重要なのは、"組織のアセットに繋がるリターンがあるかどうか"どうかだと考えています。
もちろん短期的視点のみに立つと、売上などの経済的なリターンが重要ですが、それ以外にも
・組織のナレッジが溜まる
・AI学習の精度向上に繋がる
など金銭には繋がらないが、中長期で考えると組織としては重要な視点がいくつもあります。
事業開発であるので、最終的には経済的なリターンを追求することはマストですが、その回収を第一に考えるのではなく、Ubieが中長期で大きくなるための布石が打てるかどうかが重要です。

次に不確実性の高いテーマを見つけるについて説明できればと思います。
ここであえて"不確実性の高い"としているのは、
不確実性の低いことにトライしても、リターンも並しか得られないことが多いからです。
初めから分かりきっていることはただ単にやればいいことで、事業を開発していることにはなりません。スタートアップは、不確実性の高いことにチャレンジし続けることによってのみ大きな果実を得られると信じています。
これは、Ubieのバリューの一つである"Giant Leap"を実現するためにも極めて重要です。

またテーマを見つけるということに関しては、ありとあらゆるアンテナを張り、Ubieのビジネスに寄与しそうな事柄はとにかく何かできないかと思案する姿勢が重要です。

自分は、病院向けの事業開発をしているのですが、一見するとビジネスに関係がないとおもようなことから思わぬ発見があったりします。
例えば、
・営業した1病院の取り組みにより、AIの機械学習の精度が大きく改善するような施策を打つこと
・実は政策にも寄与するような事例を作るポテンシャル病院があって、政策サイドを巻き込んで施策が実施すること
・また、医療業界にいる会社の動向を観察しながら、アライアンスしたらお互いWinWinな事業が構築できそうな企業と連携すること
などを常に考えています。
情報アンテナ感度を高め、何かネタがありそうなら迷わず深ぼるということをしています。

(2)発見した不確実性の高いテーマに対して施策の実施/検証を行う

それでは、この”不確実性に対してどのように向き合うか”ということですが、重要だと思うのは、
“とにかくやってみて環境の変化量を学習し次に繋げること”です。

スタートアップの特徴は、環境変化が極めて大きい中で正解にいかに早くたどり着くかです。そのため、正確だと考える計画を精緻に立案し施策を打っても無駄骨に終わることも多いと思います。

というのは、
・環境が変わってしまって計画を立て直す必要が出てくる
・それにともなって打とうとしている施策も古くなってしまう
など、とにかく、施策には鮮度が重要です。

またやってみたことでしか得られない学びには、議論では出ていこないような結論が得られます。
どれくらい工数がかかるのか検討もつかないことに対して、いつまでもやるかやらないかを議論するのではなく、
“分からないことは分からないと諦めて、分かるための検証をミニマムで実行する”
方がより精度の高い意思決定ができます。

つい起こるかもしれない可能性のことを議論し始めてしまったり、実施する前の問答が長いと感じた時は要注意です。

とはいえ、何でもかんでもというわけだはなく、以下のようなケースでは慎重に検討する必要があります。
①インベストが大きい施策を実施する場合
 ー例:開発コストが極めて高いことなど
②不可逆性が高い施策を実施する場合
 ー例:新しく内部の新組織を作るなど 
上記のバランスに鑑みつつも、”やったらええやん”精神は大事にしないとスタートアップに欠かせないスピードが損なわれます。

(3)施策の再現性を高めオペレーションエクセレンスチームに引き継ぐ

もう一つ重要な観点は、不確実性が下がった際に再現性を高めていくということです。
基本的には施策を実施すると何かしら学習が走るはずですが、それをいかに組織に還元するかも重要だと思います。
例えば、ある施策を実施して成功したとして、その施策が本当に再現可能なのかどうかは検証したいところです。(特別な理由で成功したわけではないのかなど)
これができていないといつまでも施策のROIが評価できず、属人的な知恵にとどまってしまいます。
またUbieでは、UACという最強のオペレーションエクセレンスチームがあるので、ある程度再現性が高まった段階で彼らにパスをして、事業の拡張を担ってもらいます。
(下記も是非!スタートアップで、カルチャーが全く違う2つの組織を作った話)

(4)1→100を最速で実現するオペレーションエクセレンスを実現する
これに関しては、自分に全く知見がないので、他のメンバー(だれか書いてくれるはず)に譲ります。

4.Ubieの中でBizDev(事業開発)として感じること

自分は現在、病院事業のカスタマーサクセスや企業のアライアンスなどを担当しています。
カスタマーサクセスに自分が携わっているのは、まだまだUbie内では、組織としてサクセスに不確実性がある状態だからです。
※念のため。お客様へのサクセスは一定できているものの、組織としてのカスタマーサクセスの定義がまだされていない状態なのでBizをDeVしているという意味です。

最後になりますが、UbieのBizDevは改めて非常にエキサイティングです。
それは、以下の二つの観点から、達成すべき状態が定義しにくいからです。
①事業開発のタネとなるような材料が非常に多い
②その裏返しとして、捕まえるべき事業変数が多いため最適解が見つけにくい
常にUbieのあるべき事業を中長期で考えながら、足元のビジネスを実行していくことは本当にチャレンジングで、とても楽しいです。

とはいえ、もっと、やりたいことがめちゃくちゃ多い!

BizDevの仕事が落ち着くことはつまり、新しいビジネスの種も見つかっていないということなので、慌ただしいのは会社として健全な証拠でもあります。

まだまだビジネスの種を拾いきれていないので、ご興味ある方是非お話しましょう!

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