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【寄席エッセイ】脳みそをフル回転させて出した結論で最終的には損をする。
ご飯を選ぶことが昔から下手くそだという自覚がある。
お昼ご飯の時間。皆が意気揚々とランチに向かう中一人浮かない顔の私。どのお店で食べたら良いか?CPUがフル回転しすぎて浮力を生み、ノートパソコンがドローンの如く浮かび上がってしまうんじゃないかってくらい、私の頭の横から空気が漏れて、頭の中のディスクが・・・
とかく私はご飯を選べない。
まず、昔からの貧乏癖が大きく影響している。時代が変わったのにも関わらず脳がそれについていっていないので、ハンバーガーはいつまでも100円ぐらいで買えるものだと思ってしまうし、牛丼はいつまでも280円のままで固定されてしまっている。
ランチにお金をどれぐらいかけていいものか?朝ごはんって家で食べたほうが安く上がるに決まってるよな?いまなんてお惣菜買って家でおにぎり握ってきた方がそれでも安く上がるよな?
定食の値段。850円から私の嫌な虫が緊急出動の消防車の如くけたたましく鳴り響く。
「おいおい!ブルジョアかよ!ローンがまだウン十年残ってるのに。いいご身分だなぁ!!!」
こんなやつに火事の現場を任せるわけにはいかない。口が悪い。
そもそもブルジョワジーの意味もよくわかっていないんだけれども常にこんな感じである。感覚だけが取り残され、どうアップデートしたらいいか分かっていない。
コンビニに入り、おにぎりとお茶を買ったら500円。だったらお店で食べたほうがまだいいかと思うものの、定食は800円。800円か。800円かぁあああ・・・
ため息なのか私自身そのものが半透明になってエクトプラズマってるような感覚。その思惑を毎日のように繰り返し続けるともうご飯を食べるのがだんだんとめんどくさくなる。せこい。
ただご飯を食べないって言っても体は生きようとするみたいで、すっげえ腹がなる。めちゃくちゃ腹なるんだよ。私。お風呂の栓抜いた時の最後の方みたいな音すんの。「ズゴゴゴゴゴッ!!!ギュッ!」みたいな。
お昼抜くと午後の会議で絶対腹鳴るから。午後一で風呂掃除のモノマネを腹で始めるやつなんてそんな怒られちゃうじゃあないですか。怒られるならまだいいよ。腹鳴らすな!ってサ。
でもみんな生理現象だから何も言わないんですよ。お腹なっても誰も突っ込まねえの。大人だから突っ込まないのはそりゃあ当たり前なんだけど。
ずーっとお腹を鳴らしてる狸。オープンコードを午後ずーっと鳴らしてるやついて誰も突っ込まないって、もうなんかそれはもののあわれなんですわ。哀愁漂ってるんすわ。かわいそうなんすわ。飯が食えないうえに誰にも声かけられないってもういっそそのまま飢えて昇天した方がいいんじゃないかしら。
体はでかいのにエネルギー不足が音となって表現される。腹をポンポコ鳴らすんじゃなくて、ズゴゴゴ!ギュ!なのよ。公の害かよ。
もちろん。企業はおいしく安く食べものを届けようとしてくれるし、値段には値段なりの理由があって、材料の事とかそういうの考えたら千円以上するのは当たり前なんですよ。だから時代に自分がちゃんと合わせていかんとダメなんです。ただ単純に「たっけぇ!」って思わずに高い理由をきっちり理解したうえで「やっぱりおいしいな!」って食べながら思えることが大切なのであって。
それが私は食べてるあいだずっと「1000円か」とか考えてんの。マジで。行儀悪いけど食べながらスマホいじってる方がまだ世の中の為になってると思う。まぁスマホ見ながら食べる人あんまり好きく無いけど。
あとご飯を食べないと、口というか腹というかなんとも言えない不快なにおいが漂うらしいんです。その昔私に嗅覚が明確に存在していた時確かにそれを感じたことがある。そのおっさんも一日一食しか食べないらしく、なんとも言えない口臭をというかアレな感じを漂わせていた。
その人にはその人の食生活があり、健康法があるのはもちろん否定する気はない。ただあの香りを自分がばらまくとなると話は別だ。それはちょっと自分だったらどうにかしないとなと思う。
ので、やっぱりごはん食べなきゃいけないんだけど。コンビニ行くと・・・定食屋行くと・・・
ほら、うまくいかないんです。
先日。
朝ちょっと外出する必要があって、とある駅に降り立ったんです。研修先に着くにはちょっと時間がある。
でも駅前に朝空いているお店があんまりなくてそれこそ牛丼屋さんとかそういうのしかなかった。
お店の前に立ってメニューを眺めるといつもの病を発症。貧乏根性というか貧乏魂というか。もう信念だよね。絶対曲げられない戦い。
結局コンビニに行ってあーでもないこーでもないってお店を物色するわけで。
コンビニ滞在時間って短ければ短いほどうまく行くし、同じルートを通った時点でもうドつぼなんすわ。全く決められないの。前世で何か悪いことしたのかしらって思うんです。
ほんで冷凍のライスバーガーみたいなやつを手に取ったんです。お米に甘辛ダレのお肉が挟んである。お米も食えるし、肉も食えるし。今日はこれにすればさっきの牛丼屋よりも安く済むし、一般的な人の朝食位の予算より低いだろ。うんうん。
なんて思ってレジで買って。備え付けのレンジで温めて、お外で立って食べるわけです。
狸が外でライスバーガー食べてるんですよ。もちろん狸スタイルで地面に落ちたものついばんでる訳じゃないです。こちとら狸っぽい人間。直立してハンバーガー食べてる風にもそもそやってる訳です。珍しいっていうか怖いでしょう?
駅前に恐怖を刻み付ける私。この地は呪われてしまった。あんまり周りの目を気にしないようしてはいるもののライスバーガーはちょっとおいたが過ぎたか。
食べ終わって、うーん。もうちょっと食べたほうが良いか。足りない気がする。というわけで店内に戻る。
店員のぎょっとした顔。
「リターン・ライスバーガー」「恐怖の米挟み2(3D)」
いらっしゃいませとは言ってくれたものの、多分歓迎はしてくれていない。挨拶って大事だね。
ここでおコメを追加するのもちょっと炭水化物取り過ぎかなと思い(なんでそんな事いちいち考えてんだろ俺)唐揚げをチョイス。唐揚げの会計を済まし、店を後に。爪楊枝で一つ目の唐揚げを挿した時、思った
「あれ・・・今いくら使った?」
あ、もう牛丼超えてる。唐揚げをもそもそ食いながらそんなことを考える。金額とか時間とか、炭水化物がどうとかそんな事に頭を使っていたら、本来もっと安く済むはずだった食事に変にお金をかけてしまっている自分に気づく。
情けないやら情けないやら、これで唐揚げとライスバーガー美味しかったななんて考えられればいいのにそこに踏ん切りがつかず、なんともバツの悪い表情でもぐもぐとしている。狸が難しい顔して唐揚げ食べてるんですよ。あ。鳩が周りに集まってきた。同志よ。私の気持ちが分かるか。私の気持ちが分かるのはお前たちだけだ・・・
でも鳩達は唐揚げの衣が落ちてこねえかなって遠巻きにこっちを見てるだけ。なんだかそれに逆上していつも以上に丁寧にそりゃもう高級レストランで食べてるみたいなきっちりした食べ方しましたよ。この唐揚げ!何もこぼすまじ!!!ええい!紙袋についてる油も舐めてやろうか!!!
・・・だめだ。そこまでやったらもう四足歩行で研修に行かないとつじつまがあわなくなっちゃう。鳩が背中にのっちゃうよ。
お茶を買い忘れたので、またコンビニに入る。店員の顔。「まだ食うの?」いらっしゃいませも忘れさせるほどのインパクトを与えてしまったようだ。後遺症が残らないことを祈る。私、業務執行妨害でお縄についた方がいいんじゃないだろうか。
食べることは生きることである。これだけ多種多様な選択肢を与えられており、日本は世界が誇る食べ物のおいしい国であるにも関わらずそれに対して高いだの少ないだの、ギャースギャース五月蠅くなってしまう。さもしい。
比較してどうとではなく、ちゃんと選択してその中で自分の心を豊かにする事。お金という数字だけにフォーカスするのでなく、食べ物を食べられるという当たり前に感謝し過ごす事。
私はお金に踊らされ続けているせいで少々おバカになりつつあるようだ。この癖を本当にどうにかしたい。
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