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【子育て難しいんじゃ】もう1人でブランコ乗れるんだとさ

「もうブランコ一人で平気なんだよ!」

ちびぞうはもう一人でブランコに乗れるようになったらしい。


正直、あっという間に大きくなったという事はない。毎日大変と気遣いのパレードラン。30歳以上年齢が開いている事もあることからこちらの常識のようなものも相手には通じない。私は昭和生まれ。この子は令和をときめく時代の最先端。泣きの一手で押し切られることもある。子供とは実に難しい。




できることが増えていくと親の手を煩わせる事が減っていくので成長は喜ばしい事だ。そういえばアレもできるようになったしこれもできるようになった。


嬉しいのだが、ブランコは何故か寂しかった。


ご飯をお箸で食べられる事、トイレに一人で行ける事、シャワーを顔にかけても怯まない事。歩ける事、走れる事、立つ事。

生活していくにあたってのところは成長を素直に喜べる。生きていく。いや、これから生活していくにあたっての必要な事は私たちが教えてあげてちびぞうを一人前にしていくのだ。親を見て学び、子はそれをトレースしていく。


しかしまぁ、ブランコなんぞ親が乗る姿はほとんど見せない。多分幼稚園かなんかで友達がやっているのを見たのだろう。自分の小さい時はブランコで遊ぶって言ったら大半が暴力と無責任の塊みたいな遊び方だったからあんなひどいことにはなっていないと思うのだが・・・


とかく、生活に必要でもないような。でも親の手を借りないとできなかったようなこと。これが一人でできる。なんて言われると「ずーっと小さいままじゃないんだな」なんて当たり前の事を考えてしまう。ずーっと小さかったら困るし。新しく何も覚えようとしなかったり、物事を改善できないのは本当に本当に困るっていうのは頭で理解しているのだけれど。



それでも「今のこの可愛さがずっと続いてくれればいいのに」という矛盾に満ちた気持ちを抱くようなことは増えた気がする。



そんなアンニュイな気持ちで発言を聞いていたものの。蓋を開けてみたら「どうして父はブランコ乗れるアタイをみてくれないんじゃ!」と毎日怒り出してしまうようになったらしい。やはりバカなのか。


私はちびぞうの発言に「そんなわけなかろうもん」なんて言わなかったし。っていうか平日ど真ん中だし。夜公園に行くわけにもいかないし。


朝一番。ちびが私の体を揺する。

「なぁ、わしがブランコ一人で乗れるとこ。見たない?」

ここまでくると狂気。私は悪い夢でもみているようだ。おやすみベイビー。しかし顔面を張られたのでこれは現実。この痛みと眠気は現実のものらしい。朝一番っつても4時じゃん今。朝っていうか夜だよ?夜に大人と子供でブランコやってたら110番されちゃうでしょ。珍しいもん。


「今は・・・ちょっと・・・」


眠気により語彙力が著しく低下している私にはそれが精一杯だった。


するとちびは「どうして、あたし一人でできるんだよ?」とブランコの事しか考えられていない。ルッカッミー!!!(look at me!!!)である。ブランコを取り巻く環境が普段お主がやっている状況と全く違うんだって。暗いんだって。気づいて欲しいんだって・・・今日仕事なんだって。


仕方がないので「じゃあ日曜日!絶対に見るから・・・」と約束を交わし布団に戻ってもらう。言質とったり・・・と不気味な表情を浮かべ彼女は眠りについた。近所の公園のブランコでやつの溜飲を下げるしかない。っていうか速く土日来て欲しい。子供の成長スピードと同じくらいの感じで来て欲しいわ。毎日尋問はきついって・・・




そして来たる日曜日。


意気揚々と公園に降り立ち。でかぞうとちびぞう3人でブランコへ。ちびがいそいそとブランコに乗る。本当に一人でできてる。

昔はよっこいしょと持ち上げたもんだけど。そうかぁ・・・

目を細めて見つめていると



「んじゃ押して」



と、ちびぞうは言う。

アレ!?ちびぞうさん???一人でできるもんじゃなかったの?


困惑する私をよそに一向に漕ぎ出す気配がないちび。一人でブランコできるってのは着座ができるようになったって意味だったのか?わっかりづらい・・・


グッと背中を押す。昔は小さかった背中。手を広げて押せるようになった。
彼女の小さな手は力強く持ち手を掴む。よく見ると確かに足が漕げていない。アンタそれは一人で乗れるとは言わんのよ。全く。


押すたびに黄色い声をあげて、キャッキャと喜ぶ。でかぞうはもうとっくに一人でブランコは乗れるし、高々と軽快にブランコを楽しんでいる。


ブランコ一つ。背中を押して子供が喜ぶ姿を見る。多分すぐにでもこの子はブランコの漕ぎ方を覚えるだろう。そして私が背中を押す必要もなくなる。

成長は嬉しく、寂しく、望ましく、歯がゆいものだ。


一人で漕げるようになったら、うんと誉めてやろう。そして妻にもうんと感謝を言おう。うちの子は元気にやっている。




しかし、その日から毎週公園に行き「ブランコを押せ」と指示を食らうようになった。お前。最初の発言なんだったんだ。ただブランコ乗りたかっただけか。よくわかんないぞ。子供。成長しなさい。


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