ここが変だよ世界のプレーオフ -ロマンと情熱が詰まった勝負の世界-
久しぶりのnote投稿になってしまいました。KMSKデインズでのシーズンが終わり、結果はレギュラーシーズン3位(自動昇格と勝ち点差1)、昇格プレーオフ決勝で敗退となりました。
今までJリーグを約20年間観てきた中でも、いつもなぜか一番心惹かれるのが残留争いや昇格争い、そして昇降格プレーオフでした。私自身は物心ついたときからガンバ大阪サポーターなのですが、一番魂を込めてガンバを応援したのは、2014年に三冠(リーグ、ルヴァンカップ、天皇杯)を取ったシーズンよりも2012年に残留争いをしていたときであり、一番スタジアムに通ったのも2013年にJ2にいた時でした。また、自分が応援するクラブに限らず、毎年昇格争いと降格争いは注目して動向を追いかけてきました。
さらに今回、今度はクラブスタッフの立場で昇格争いを経験しました。来年は1部で戦いたい、戦えるのかもしれないと、希望と願いを持って1年間戦ってきた結果、最終的に突きつけられた敗退という現実。2部で1年闘うことの大変さをクラブスタッフとして経験した上で挑むプレーオフは、Jリーグファンとして観るプレーオフとはまた違った景色でした。
J1、J2、J3さらに下部カテゴリーまで多岐に渡るカテゴリーで活躍された橋本英郎さんが引退時のインタビューで「どのカテゴリー、試合が一番心に残っていますか?」というような質問に対して、「東京ヴェルディでJ1昇格プレーオフで敗退したこと」と答えられているのを見て、やっぱりそうだよなと妙に納得したことを覚えています。たった数試合の天国と地獄を明確に分ける昇降格プレーオフには、たくさんのロマンと面白みが詰まっています。
そして、KMSKデインズで働き始めるまでは、昇降格プレーオフといってもJリーグしか追いかけていなかったのですが、今回ベルギーの昇格争いを経験し、ヨーロッパ他国のプレーオフにも興味を持ち、経過を追いかけてきました。その中で、リーグのフォーマットを見ていくと、各国多種多様であることに気づき非常に興味深かったので、せっかくなので今回記事としてまとめてみようと思います。
プレーオフには人々の注目を集める商業的な意味合いがあり、各国リーグの工夫が感じられる反面、レギュラーシーズンの結果をうまく反映していないと物議の対象になることも。いかんせん2部リーグに関することなので、日本語・英語で見つけられない情報も多く、チーム名やフォーマット等間違いや抜け落ちがある可能性もあるかと思います。その場合は学びとした上で修正させていただければと思うので、もし気づかれた方はそっと教えていただければ幸いです!また、プレーオフにはベルギーの優勝決定プレーオフなど昇降格プレーオフ以外のものも存在しますが、今回は昇降格プレーオフに絞っている点、ご了承ください。
それでは、自らの闘うベルギーリーグと、今回特に興味を持った近隣オランダリーグを中心に、各リーグのプレーオフ紹介を始めます!
ベルギー🇧🇪
【フォーマット】
自動降格
1部下位2チーム
自動昇格
2部上位2チーム
プレーオフ
2部3位と6位、4位と5位がそれぞれH&A。
その後勝者同士が再度H&A。
最後にその勝者が1部16位とH&A。
【2023-24シーズン】
自動降格
オイペン、RWDM
自動昇格
ベールスホット、デンデル
プレーオフ
KVコルトレイク(1部16位)、KMSKデインズ(3位)、ロンメルSK(4位)、ズルテ・ワレヘム(5位)、パトロ・アイスデン(6位)
プレーオフの末、1部のKVコルトレイク(1部16位)が残留
【コメント】
当事者なので偏った意見になりますが(笑)、いざ自分たちが3位でプレーオフを迎えると、2部3-6位で行われるプレーオフにおいて、レギュラーシーズンの上位クラブへのアドバンテージがほぼない(H&Aの2試合目が必ずホームになるだけ)のはかなりの違和感を感じました。Jリーグだと引き分けの場合上位が勝ち進めるレギュレーションなので、それに慣れてしまっていたせいかもしれません。
ドイツ🇩🇪
【フォーマット】
自動降格
1部下位2チーム
自動昇格
2部上位2チーム
プレーオフ
1部16位 vs 2部3位(H&A)
【2023-24シーズン】
自動降格
ダルムシュタット、ケルン
自動昇格
ザンクトパウリ、ホルシュタイン・キール
プレーオフ
ボーフム(1部16位)、デュッセルドルフ(2部3位)のプレーオフ結果、1stレグ0-3、2ndレグ3-0と劇的な展開となり、PK戦の末、1部のボーフムが残留。
【コメント】
きちっとしたドイツらしく、シンプルでオーガナイズされたフォーマット。ドイツは2部リーグでもいつも満員近く注目が集まる(例えば23-24シーズンにはシャルケが平均観客数年間61,000人を記録)ので、わざわざ奇抜なフォーマットを取り入れたり、昇格プレーオフに絡むチームを増やさなくても十分に集客ができるからと推察。
ポルトガル🇵🇹
【フォーマット】
自動降格
1部の下位2チーム
自動昇格
2部上位2チーム
プレーオフ
1部16位 vs 2部3位(H&A)
【2023-24シーズン】
自動降格
ヴィゼラ、シャヴィス
自動昇格
サンタ・クララ、ナシオナル
プレーオフ
ポルティモネンセ(1部16位)vs AVS(2部3位)
→2戦合計4-2でAVSが1部昇格、ポルティモネンセは2部降格
【コメント】
至ってシンプルで分かりやすい形式。
オランダ🇳🇱
【フォーマット】
自動降格
1部下位2チーム
自動昇格
2部上位2チーム
プレーオフ
2部3-8位と1部16位の7チームでH&Aのトーナメント
1回戦(H&A):2部の3位と8位(A)、4位と7位(B)、5位と6位(C)
2回戦(H&A):A vs B、C vs 1部16位
3回戦(H&A):2回戦の勝者同士
【2023-24シーズン】
自動降格
フォレンダム、フィテッセ
自動昇格
ヴィレムII(勝ち点79)、フローニンゲン(勝ち点75)
プレーオフ
1回戦
3位ローダ(勝ち点75)vs 8位ブレダ(勝ち点56)
8-1で8位ブレダが勝利
4-1でFCエメンに勝利
4位ドルトレヒト(勝ち点69)vs 7位FCエメン(勝ち点57)
3-2で7位FCエメンが勝利
5位ADOデンハーグ(勝ち点63)vs 6位フラーフスハップ(勝ち点63)
5-4で5位ADOデンハーグが勝利
2回戦
1部16位エクセルシオール vs 5位ADOデンハーグ
9-2でエクセルシオールが勝利
7位FCエメン vs 8位ブレダ
4-1で8位ブレダが勝利
3回戦
1部16位エクセルシオール vs 8位ブレダ
1stレグ:6-2でブレダが勝利(エクセルシオールにレッドカードが2枚の大荒れ。1回戦といい、ブレダは相手を木っ端微塵にする特殊能力でもあるのか。。)
2ndレグ:4-1でエクセルシオールが勝利(まさかのエクセルシオールが4-0で一時6-6に持ち込むも、最終的に1点を奪ったブレダが2戦合計7-6で勝利)
→ブレダが1部昇格、エクセルシオールは2部降格
【コメント】
上記、説明が長くなってしまいましたが、実はこのオランダ2部が今回の記事を書こうと思ったきっかけです。3位ローダは実は最終節から一つ前の第37節、あと1節を残して昇格が決まったかと思い、試合終了と同時にファンがピッチに流れ込んでお祭り騒ぎ。しかし、同時刻の別試合で0-1で負けていたフローニンゲンが後半90+5分に劇的な同点弾を決め、ローダの昇格決定を阻止。すると奇しくも最終節は2位のローダと3位のフローニンゲンの直接対決。結果的にこの試合を3位フローニンゲンが制し、ローダと同勝ち点の得失点差で上回り、大逆転で2位自動昇格。こんな展開で自動昇格を逃してしまった3位ローダは気合を入れ直してプレーオフに挑むも、一回戦でレギュラーシーズンで勝ち点が75と56と19も離れている8位ブレダに1-8で大敗。ローダにとってはあまりにも残酷すぎる結果となった一方、8位ブレダはその後も快進撃を見せ、1部16位のエクセルシオールとの試合も7-6で制して快進撃の1部昇格。賛否両論あると思いますが、何とも奇妙で魅力的なプレーオフでしょう・・・。
イングランド🏴
【フォーマット】
自動降格
1部下位3チーム
自動昇格
2部上位2チーム
プレーオフ
2部3位と6位、4位と5位がH&Aで2試合ずつ
その後勝者同士が一発勝負
【2023-24シーズン】
自動降格
ルートンタウン、バーンリー、シェフィールドユナイテッド
自動昇格
レスター、イプスウィッチ
プレーオフ
リーズ(3位)、サウサンプトン(4位)、ノリッジ(5位)、ウェストブロムウィッチ(6位)のプレーオフの末、サウサンプトン(4位)が昇格
【コメント】
日本で一番注目されているプレミアリーグが絡んでいるので、ご存知の方も多そう。レスターの一年での復帰、エド・シーランの地元であり彼がスポンサーを務めるイプスウィッチの昇格など話題に尽きない。プレーオフ進出チームもプレミアで見たことのあるチームばかりなので、比較的馴染みやすい。最後の一試合がH&Aでなく、ウェンブリーでの一発勝負なのが特徴。リーズとサウサンプトンの最終決戦にはFAカップを超える85,814人の観客動員数を記録するなど、イングランドでも大注目の一戦となった。
イタリア🇮🇹
【フォーマット】
自動降格
1部下位3チーム
自動昇格
2部上位2チーム
プレーオフ
2部5位と8位(A)、6位と7位(B)が上位チームのホームで1戦。
その後Aの勝者が3位と、Bの勝者が4位とH&Aで2戦。
さらにそれに勝った勝者同士がもう一回H&Aで2戦。
【2023-24シーズン】
自動降格
サッスオーロ、サレルニターナ、フロジノーネ
自動昇格
パルマ、コモ
プレーオフ
ベネチアFC(3位)、クレモネーゼ(4位)、カタンザーロ(5位)、パレルモ(6位)、サンプドリア(7位)、ブレシア(8位)
ベネチアFC(3位)とクレモネーゼ(4位)が勝ち上がり、最終戦の結果ベネチアFCがセリエA昇格。
【コメント】
一見複雑に見えるが、レギュラーシーズンの上位チームにしっかりとアドバンテージがありとても合理的。プレーオフに関しては商業的な盛り上げとレギュラーシーズンの結果を反映したフェアネスのバランスが重要だと思うが、個人的には最も納得が行く形式。ちなみに以前は3位と4位のクラブでプレーオフ、しかし3位と4位のクラブで勝ち点差が10以上ある場合プレーオフは行われず、3位のクラブの自動昇格という形式だったそう。こちらも良いフォーマットと思う。また、セリエB→Cへの降格に関しては、下位3チームの自動降格に加え、16位と17位がプレイアウトというH&Aの2試合を行って敗者が降格、勝者が残留する形。
フランス🇫🇷
【フォーマット】
自動降格
1部下位2チーム
自動昇格
2部上位2チーム
プレーオフ
2部4位と5位が1試合。
その後勝者が3位ともう1試合。いずれも上位のホーム開催。
更に勝ち上がったチームが1部16位とH&A。
【2023-24シーズン】
自動降格
ロリアン、クレルモン
自動昇格
オセール、アンジェ
プレーオフ
メス(1部16位)、サンテティエンヌ(3位)、ロデーズ(4位)、パリFC(5位)
メス(1部16位)とサンテティエンヌ(3位)が最終決戦
2戦合計4-3でサンテティエンヌが制し、サンテティエンヌ1部昇格、メス2部降格
【コメント】
イタリアに続きこちらもレギュラーシーズンの結果を反映したフェアなフォーマットに感じる。試合数が多すぎず、ちょうど良い形式だと思う。
スペイン🇪🇸
【フォーマット】
自動降格
1部下位3チーム
自動昇格
2部上位2チーム
プレーオフ
2部の3-6位でH&Aのプレーオフ。
【2023-24シーズン】
自動降格
カディス、アルメリア、グラナダ
自動昇格
レガネス、バジャドリー
プレーオフ
エイバル、エスパニョール、スポルティング、オビエド
【コメント】
Jリーグと形式は似ているが、H&Aで2戦あることが違い。サッカー文化が根強い地域においてホームとアウェイは大きな違いを生む。日本においてホームとアウェイという概念がどの程度重要視されているか?勝率に違いを生んでいるか?はもう少し調べたり考えたりしてみたいと思った。
スイス🇨🇭
【フォーマット】
自動昇格
2部上位1チーム
自動降格
1部下位1チーム
プレーオフ
1部11位 vs 2部2位(H&A)
【2023-24シーズン】
自動昇格
シオン
自動降格
FCスタッドローザンヌ
プレーオフ
グラスホッパー(1部11位)vs FCトゥーン(2部2位)
2戦合計3-2でグラスホッパーが残留
【コメント】
自国のサイズを客観的に認識した上で、身の丈にあった運営戦略を持っているように感じられるスイスリーグ。プレーオフも例に漏れず、最もシンプルで合理的な形式を採用。
【総評】
5大リーグは違いはあれどそこまで奇抜な形式となっておらず、一定レギュラーシーズンの結果を反映したフェアな形式になっている一方、オランダやベルギーが最も奇抜で変わった形を採用している。5大リーグに比べると少しファン基盤の劣るリーグならではの工夫をしている印象だが、少しプレーオフに比重がいきすぎている感も否めないか。
また、Jリーグのように昇格プレーオフが全て一発勝負の国は上記にはなく、それが過酷さとドラマを生んでいる側面はあるか。(年間スケジュールの都合もあるだろう)
以上が今回のリサーチ内容となります。日本での放映がない試合も多いのは残念ですが、いろんなストーリーが生まれ、ロマンと情熱の詰まった昇降格プレーオフにぜひ注目してみてください!
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