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書籍の改訂版が発売されたので、Webディレクションを問い直してみる。

2017年に共著で執筆しました「Webディレクションの新・標準ルール 現場の効率をアップする最新ワークフローとマネジメント」の改訂版が発売されました。
初版の発売以降、重版を重ねて今回の改訂版に至ったわけですが、ご購入いただいた皆さまありがとうございます!!!

この書籍を執筆してから3年経ったのですが、その間に4冊の書籍執筆に関わり、様々なシーンで登壇の機会をいただくことがありました。
今回、改訂版執筆にあたりあらためて自分の執筆パートを読み返してみたのですが、いま口にしていることと大きくは変わっていないことを確認できました。
もちろんディレクションという点で言えば、自分自身の考え方が変化していることもありイチから見直したいところはあるものの、改訂版という枠組みの中ではそこまで大きく変える点はありませんでした。
そのため、私の執筆パートではそこまでの変更点はありません。
掲載しているサービス/ツールの変更や一部の記述変更、またコラム等の追加が今回の改訂版での対応となります。
もちろん、他の著者のパートでは変更となっている箇所も多々ありますので、ご覧になっていただければと思います。

この3年の間に自分を取り巻く環境や、業界においては様々な変化がありましたが、この機会にWebディレクションについてあらためて考えてみたいと思いました。

Webディレクターという肩書きを持ったことはない

「Webディレクション」の書籍執筆に携わっているものの、私は「Webディレクター」という肩書きを持ったことはありません。
(そもそも私の名刺には肩書きを入れていないのですが)
ちなみに私が対外的に必要となり、便宜上使ってきた肩書きは以下のようなものがあります。

・クリエイター
・クリエイティブディレクター
・ディレクター
・デザインストラテジスト

自身が関わる領域が、制作〜ディレクション〜コンサルティングと変化してきたことによって変わっています。
(ディレクション自体は20年ほどの経験があります)
「Webディレクション」の「Web」のように対象領域を示した肩書きを使ったことがないのは私が関わってきた大半のプロジェクトが複数領域に跨がるものであったこともありますが、Webディレクションって何だろ?と疑問符が消えなかったためでもあります。

Webディレクションの範疇は組織やプロジェクトで異なる

Webディレクションの範疇については様々なシーンで論議されるところではありますが、それは所属する組織やプロジェクトによって定義されるものであるため、組織やプロジェクトごとに変わるものだと考えています。
ディレクションの本質としては「ディレクション」の語源である映画監督(ディレクター)から、企画・制作・編集を含めた総合的な演出を担うことです。そのため幅広い知識を求められることが多いですが、プロジェクトの「目的を達成するために必要な課題を見つけ、その課題を解決するためのプロセスを設計し、実行していくこと」がディレクションです。
言い方を変えると成果物ではなく、成果物に至るまでのプロセスをつくるのがディレクションかもしれません。
そして最終的な成果物はチームメンバーと一緒につくりあげていくものです。


ディレクションは誰が行うものなのか
結論から言うと「プロジェクトに関わるメンバー全員」と考えています。
(クライアントワークの場合は、このメンバーにはクライアントも含みます)
そもそもなのですが、ディレクションという曖昧な言葉で括ってしまうのも乱暴なのでプロジェクトのプロセスにおけるタスクはきちんと分解し役割分担することで、その曖昧さをなくすことが必要です。
この曖昧さをなくすことで、ディレクターのタスクを明確にすることや、タスクを抱え込んでしまうことを解消できるのではないでしょうか。

ディレクターはファシリテーターでもある

ディレクターはその人によって適したスタイルがあります。
プロジェクトをリードする人もいれば、チームメンバーの自主性を尊重し、それを促す人もいます。何事においても、その人によって得手不得手があるので、それを認識して、自分のスタイルに合わせたディレクションを行えばよいかと考えています。
逆に言うと、その自分のスタイルが出せない場合はディレクションすることは難しいかもしれません。
ディレクターがパフォーマンスを発揮するために、自分のスタイルを認識し、そのスタイルをどうすれば出せるような状況をつくることができるか、を考え実現することが必要になります。

ミーティングやワークショップにおいて場をつくり、場を進める立ち位置の人をファシリテーターと言いますが、ディレクターはこの立ち位置になっていることが多いのではないでしょうか。
ディレクターの価値はファシリテーターのようにプロジェクトにおける「場のデザイン」にあると考えています。
プロジェクトの目的を明確にし、その目的達成のために取り組む課題を見つけ、それをプロジェクトメンバーに共有する。
そして、その課題を解決するためのプロセスを設計し、必要なタスクを明らかにし、プロジェクトメンバーとともに進めていくのです。
ファシリテーター同様という点でもう一つ付け加えると、私はディレクターは主役ではないと考えています。
このことについては、以下のnoteを参照してもらえればと思います。

Webという領域は他の領域に融けていく

すでにWebという領域はそれ単体で成立するのではなく、様々な領域に融け込んでいるように思います。
様々な領域で展開するWebサービスがその顕著な例でしょう。
企業やサービスを成長させるためには何が必要となるのか。技術から考えるのではなく、企業の存在価値やサービスが顧客に提供できる体験と価値、そういった点から考えていく。
その体験と価値を伝えるための手段と実現方法の一つがWebとなります。
Webディレクションに関わる人たちには、そのWebという言葉や領域に囚われることなく、サービスやプロジェクトにおいて求められることを見定めてもらえればと思います。

コーヒーを飲みながら書いていることが多いので、サポートいただけたらコーヒー代として使わせていただきます!