小学校理科を指導要領から考える【毎週水曜日更新】

はじめに

 これまでゆったりと小学校学習指導要領について書いて参りました。
(第一回→https://note.com/katsushikakap/n/nb8821fd1b80f
今回から遂に、単元ごとの実験について切り込んでいこうと思います。
早速、小学校第三学年「風とゴムの力の働き」について一緒に考えていきましょう。

1、「風とゴムの力の働き」の概要

 まずはこの単元で何を学習するのかを学習指導要領から引用して
確認しましょう。

風とゴムの力の働きについて、力と物の動く様子に着目して、それらを比較しながら調べる活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のことを理解するとともに、観察、実験などに関する技能を身に付けること。
(ア)風の力は、物を動かすことができること。また、風の力の大きさを変えると、物が動く様子も変わること。
(イ)ゴムの力は、物を動かすことができること。また、ゴムの力の大きさを変えると、物が動く様子も変わること。
イ 風とゴムの力で物が動く様子について追究する中で、差異点や共通点を基に、風とゴムの力の働きについての問題を見出し、表現すること。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編

本単元は5年生の「振り子の運動」につながる学習としての立ち位置でもある。
 理科教育としては、「比較する事」「観察、実験などに関する技能を身に付ける事」「差異点と共通点」「問題を見いだす力、解決しようとする態度」の育成が
狙いである。

2、「風の力の働き」を考える

(ア)風の力で動く物をつくり、物に風を当てたときの風の力の大きさと物の動く様子に着目して、それらを比較しながら、風の力の大きさと物の動く様子との関係を調べる。これらの活動を通して、差異点や共通点を基に、風の力の働きについての問題を見いだし、表現するとともに、風の力は、物を動かすことができることや、風の力の大きさを変えると、物が動く様子も変わることを捉えるようにする。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編

 指導要領より引用しましたが、とりあえず難しい話しを省いて、
「風で物が動く」現象を観察、実験すれば良さそうだと考えました。
 
 日常生活で風の力を使って動く物から実験を考えていきましょう。
飛行機、ヘリコプター、ヨット、風力発電、扇風機(?)、竹とんぼ…ってところでしょうか。思いついた物の中で「風の大きさで動きが変わる」を分かりやすく伝えることができそうな物に絞って行きましょう。
ちなみにですが、良く利用されるのは「風で動く車のキット」ですね。商品として風、ゴムや電気の力の学習の時に使えたり、夏休みの工作にも早変わりと便利なのは間違いないです。男の子はだいたい好きなやつですね。
とはいえ、現実に帆を張った車は走っていないのでもっと実体験に基けるような、日常で目にした時に、親にちょっと自慢したくなる様な学習教材にするなら
よし、飛行機でいきましょうか!

3、紙飛行機で風の働きを学ぼう

 そんなわけで紙飛行機を折って、風の力を感じて行きましょう。
まず、飛行機と風の学習的な関係性ですが、「揚力」と「流線型」といった部分になるかと思います。揚力という言葉を授業で使う必要はないですが、「風が物を浮かせる力」に注目できて単元の目的に合っているかなと思います。また、発展的な内容かもしれませんが、紙飛行機の「昇降舵」に触れ、見えない風をどの様に人が操るのかを小話にするのも楽しいかもしれません。
風を操る話しを始めれば、野球やサッカーでボールを曲げる事を風の働き(マヌグス効果)の説明もできるので子ども達も楽しめるかもしれません。
 扱うものはおもちゃですが、学べる題材が多岐に渡るので個人的にはベストだと思っています。体育館で誰の紙飛行機が一番遠くまで飛ぶか競争とかしたくないですか。
さらに、この後のゴムの学習にも繋がって行きます。

4、「ゴムの力の働き」を考える

(イ)ゴムの力で動く物をつくり、ゴムを引っぱったり、ねじったりしたときの元に戻ろうとする力の大きさと物の動く様子に着目して、それらを比較しながら、ゴムの元に戻ろうとする力の大きさと物の動く様子との関係を調べる。これらの活動を通して、差異点や共通点を基に、ゴムの力の働きについての問題を見いだし、表現するとともに、ゴムの力は、物を動かす事ができることや、ゴムの力の大きさを変えると、物が動く様子も変わることを捉えるようにする。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編

 基本は「風」が「ゴム」に変わっただけなのですが、日常生活でゴムが直接働く物ってイメージしづらいですよね。ゴム自体は色々な形で使われているので体験的な学びは難しくないのですが、「ねじったりした時の動き」をどの様に学習に組み込むかが課題に思います。
 ねじったゴムが戻る力で使えそうな物は、扇風機を工作で作ったりするのが無難そう。というかその程度しか思いつきませんね…
じゃあ、ねじった力で羽を回す竹とんぼ作るか

5、竹とんぼと紙飛行機カタパルト作って学ぶ

 教材のモデルですが、アルフォンス・ペノーが制作したヘリコプターの構造モデルがイメージです。ライト兄弟がお父さんにこのヘリコプターおもちゃをもらったことで、二人の空への憧れに影響を与えたとも言われていたりします。
工作で作ることも容易ではありますが、演示実験として学校に一つあれば十分だともいます。

Wikipedia「アルフォンス・ペノー」

 体験的に学ぶ教材としては、先の紙飛行機を飛ばすためのカタパルト(発射装置)をゴム動力を用いて使うのが良さそうです。
紙とゴム、セロハンテープがあれば作れてお手頃ですし、紙飛行機と合わせて使うことで単元内で無駄が少ないかなと思います。

6、「風とゴムの力の働き」のまとめ

 紙飛行機を学習に用いることで、体験的で楽しい学びを得られる工夫ができた様に思います。
当記事では、
・風で動く物を作り、動きを観察する。(紙飛行機を作り、飛ばす)
・風の大きさで動く(紙飛行機を扇風機やエアコンの風に乗せる)
・ゴムをねじった時の動きの力(アルフォンス・ペノーのヘリコプター)
・ゴムを伸ばした時の動きの力(紙飛行機カタパルトを作って飛ばす)
の目的をクリアできたと思います。もちろん、説明ありきの題材なので教科書には書いていない知識が必要になり、一朝一夕では行かないですが授業をする前の準備、片付けの時間等はこれまでよりも楽できる様になるのではないかと思います。

7、おわりに

 そんなわけで今回は「風とゴムの力の働き」を考える事ができました。思ったよりも長くなってしまいました。紙飛行機を用いた実験は実際に私が行っている教室でも行い、目に見えない風の力を体験する教材として好評でした。記事を書きながら、簡単に用意できる物を使用する分、説明するための知識が必要なんだと思いました。ただ、教科書にはない視点でアイデアを提案できたので良いと思っています。

毎週水曜日更新予定、次回は2月28日更新!「指導要領第3学年 光と音の性質」を考えていきたいと思います。

当記事、当シリーズは全文無料でお読みいただけます。
コメントや応援いただけますと幸いです。

ここから先は

0字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?