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確定申告の思い出「あなたはフリーランスではありません」にゃ🐾

ギリギリまでやりたくない確定申告だが、今年は例年よりちょっとだけ早く片付けた。付き合いも16年目になるが、スマホで完結できることの便利さよ。

さて、タイトルどおり確定申告の思い出である。
初めての確定申告のこと。
急に必要となったので、近所の税務署に赴いて配布書類をもらうことにした。紙である。電子申告をするには準備が必要で、区役所へ行って手続きするのも面倒で、手書きとなった。
経費を計上したかったので、青色申告になるのかと焦ったが、青色は事前に「青色申告承認申請書」の提出が必要だし、開業届を出して専業になるわけでもなかったため、種類は白色である。

白色申告は「収支内訳書」と「確定申告書」の2種類を提出する。
収支内訳書は簡単だが、これだって領収書を整理分類してあることが前提となる。
私は仕事も経理だったが、自分でも月の収支を作っていたので手間はかからなかった。どれを経費計上するか検討して、パソコン、モニター、図書費、消耗品費、交通費等を項目に上げた。パソコンは20万を超えていたので減価償却をした。
エクセルで作成した「収支内訳書」と直筆記入の「確定申告書」を持って、再び税務署へ行った。
色褪せた控えを見ると提出日は2月15日! 国税庁からお礼を言われてもいい優等生ぶりである。まあ、今は昔の話である。

◆あなたの職業は

事件は税務署の狭い受付コーナーで起きた。
アームカバー(腕抜き)をした職員さんがはんこを片手に、じっと用紙を検分した後、おもむろに顔を上げてこう言ったのである。

「フリーランスではないです」
「えっ? 違いますか? 経理が本業ですがアルバイトで、でも副業のほうが収入としては高くて、フリーランスかと」
 
突然の指摘にしどろもどろになりながら答えたが、ばっさり話を切られた。
やりとりの説明をすると「確定申告書」には〈職業〉が、「収支内訳書」には〈業種名〉の欄がある。
確定申告の理由は、小説コンクールで大賞をとり、賞金や印税を得たからだった。当時の私はフリーランスでやっていくのだろうと思っていた。専業作家というよりは、複数の仕事をこなしていくイメージだったのだ。

しかしよくよく考えてみれば、フリーランスでは何をしているのかわからない。それは働き方の形態であって、職業ではなかった。
しかも確定申告の職業欄は重要である。小さい空欄にさりげなく書かせるので、些末なことなのだろうと勘違いする。確定申告だから職業が所得税には直接影響しないし、私は個人事業税にも関係ないし。
と思っていたら、個人住民税には影響があったのである。
私の住むところは住民税が高いことで知られている。心を折るほどに!

職業欄一つで税金が変わってたまるか、と思ったが、正しく書かないと後でどんなペナルティをくらうかわかったもんじゃない。

そこで業種一覧なるものを確認したが、当然のことながら、生まれたてのヒヨコがいかなるカテゴリーに当てはまるかなんかは書いていない。近いのはサービス業だろうか? いやいや、ふつうに兼業作家か?

税金に関わるとあっては、こっちも必死。
職員さんにべらべらと状況を説明して、

「私の職業と業種名を教えてください」と迫った。
「・・・経理・文筆家でしょうかね」

へ? 字面おかしくない?
意表を突かれたが、晴れて私の職業は決定したのである。

◆賞金の税金

国はいかに国民から税を絞りとるかに専念しているから、こっちは抜け穴がないかと躍起になる。
あのとき一番気になったのは、賞金に対する税金である。
賞金は一時所得であるから、それに応じた所得税率で所得税をとられる。
計算して、はぁ、と溜息が出たものである。

経理をしていると、毎年税務署から送付されてくる封書があって、そこには『経理担当様』などと書かれていたりする。10年前のことである。
封筒の中には税に関する法改正情報や源泉徴収税額表が入っていた。
原稿料や印税の勉強のために目を通していくと、よく知るあの「賞」を見つけた。
これ↓

国税庁HPより

直木賞や芥川賞の賞金は源泉されないと知ったときの驚きたるや!
なんでも『受賞の経緯が、既に公表された候補作品の中から選考委員(第三者)により選ばれるものであり、「著作の対価」としての性質は有していない、源泉徴収の対象(原稿報酬)とはならない』そうだ。

納得である。
ちなみに出版した小説の印税は源泉徴収される。驚くほど高い。
それは確定申告の還付金という形で取り戻せるが、使わないほうが賢明である。何も知らずに、6月に届く住民税決定通知にがっくり肩を落とす人は多いだろう。私は計算が間違っているのではないかと、自分でも電卓を叩いたものである。(電卓はパソコンより早い)

まあ、税とはかくも人生につきまとうものである。
こちとら納税の義務で、窒息死寸前である。
そういえば、お代官様と庶民の闘いは、国税庁のホームページにある質疑応答事例で知ることができる。
読んでる人はいるだろうか?
いろんな職業の人が疑問をぶつけたり、これから自分がしようとしていることが、税徴収の対象になるや否やの確認に奔走している。
私は事例を読むたび、こんなものまで税金とるのかと、いちいち呆れたり憤慨したりして、ショートショートのように愉しむのである。
事例を二つ紹介するので、興味があったらぜひ覗いてみてほしい。




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