見出し画像

【かつらのお話: 簑】


簑。とても大切な材料

【簑(みの)】
鬘の毛量を増やす為の材料です。

こんにちは。京都時代劇かつらです。

今回はかつら材料の【簑】のお話です。

【簑】は、絹の太糸に蝋引きし、特製の簑編み台と言う木製の台に糸を2本掛け人毛を編んでいき製作します。

太めの絹糸二本に編み込んでいく

藁で出来た昔の雨具
【簑】
の雰囲気とよく似ています。

今回のお話には、二種類の簑があります。

【中寄せ簑】と【裏簑】です。

中寄せ簑:髱簑

中寄せ簑は髱簑とも呼び、中心に毛が寄るように編んであります。
女形や、立ち役の髱に使います。

裏簑:鬢簑

裏簑は鬢簑とも呼び、互い違いになるよう編んであります。
女形や、立ち役の鬢に使います。

そして立ち役の簑より女形の簑の方が毛の長さが長く

【立ち役の中寄せ簑】

【立ち役の裏簑】

【女形の中寄せ簑】

【女形の裏簑】

とそれぞれ分かれています。

女形裏簑
女形中寄せ簑

映画やテレビの時代劇の場合、この簑の編んだ粒が見えては困りますから見えない所に見えないように付けて、毛量を増やし髪形を持続させます。

女形や町人などの鬢や髱の膨らんだ髪形にはこの簑が使われていますが、武士等の かっつけの鬘(鬢や髱が膨らんでいない髪形)には簑は使いません。
見えない所に見えないように付けても編んだ粒が形に影響してしまうからです。

この【簑】の歴史は古く、前回ご紹介した歌舞伎の【羽二重鬘】が出来る前の時代から、鬘に使われてきました。
細かく簑編みした人毛を直接地金に付け、生え際として使っていました。

【簑の鬘】と呼ばれていて、今でも歌舞伎で使われています。また文楽の人形の鬘も生え際は簑になっています。

歌舞伎では荒事と呼ばれる

『暫』の鎌倉権五郎の車鬢の鬘や

『車引』の松王丸、梅王丸、桜丸の鬘など

時代物の演目でより古典的な趣を演出しています。

また、女形の【簑の鬘】は額に紫帽子と呼ばれる小さな布を当てて生え際を隠しています。

簑では女形の生え際が上手く表現出来なかった名残だそうで、この紫帽子がまた時代物らしい雰囲気を一層演出しています。

世話物と呼ばれる歌舞伎のお芝居は、江戸時代、正にその時代のお話なので今で言う現代劇。

リアルを出すのに【羽二重の鬘】

古典的な時代物とは言うなれば、江戸時代の時代劇でしょうか。【簑の鬘】は、そんな演目に使われる事が多いのです。

生え際の作りで現代的、古典的な雰囲気の違いを出す。

実は現在の映画やテレビの時代劇でも似たような事があるのですが、それはまた別の機会に。

どうぞお楽しみに。

※当noteでご紹介する写真は、全て筆者撮影のオリジナル写真です。
被写体及び他者撮影の写真を使用する場合は、全て許可を得て掲載しています。
当noteの文章・写真の転載、加工、二次使用はなんびとにも許可しておりません。ご注意願います。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?