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PMFは本当に「到達すればわかる」のか?

こんにちは。ユニフィニティーという会社の代表をやっていますかつらと申します。

今日は、近年のスタートアップにとっての最重要概念であるPMFについて、自分が事業を推進する中で感じたことを書いてみたいと思います。自分の中での整理のためでもありますし、PMFを求めるスタートアップ経営者の参考になれば幸いです。

PMFは、すればわかる?

PMF、プロダクト・マーケット・フィットとはすなわち、まずは小さくても自分たち独自の市場=顧客の集団を見つけてその人たち向けにプロダクトをフィットさせようという考え方です。逆に言えば、そうした市場にフィットするプロダクトがきちんと完成するまでは規模拡大に舵を切るべからずという戒めでもあります。

自分たちのプロダクトがPMFに達しているかどうかの判断は、スタートアップを経営する上で大変重要なものになります。なぜなら、市場にフィットしていないプロダクトは、例えどんなに優れていても顧客のハートをキャッチできず、最終的に売れないからです。スタートアップが失敗する原因の実に7割はPMF前に拡大を急ぎすぎてしてしまったことによるという説もあります。PMF判定はまさに生死をかけた意思決定になります。

それでそのPMFの見極めです。いったいどのように見極めるべきかという話なのですが、結構「すればわかる」みたいに言われることが多いです。

要するにPMFに到達すれば顧客の反応が目に見えて変わるので、体験した人はみな「ああここだな」とわかるということで、わりといろんなところに書いてます。出どころはこの辺りのようです。

And you can always feel product/market fit when it's happening. The customers are buying the product just as fast as you can make it -- or usage is growing just as fast as you can add more servers.
https://pmarchive.com/guide_to_startups_part4.html

引き合いが止まらなくなるそうですが、それ、本当か?という話です。


リテンションと引き合いの狭間

本当か?と思うのには、自分自身「ああここだな」感が全然ないという悲しい理由もあるのですがそれはいったん置いておいて、PMFを測るためのおすすめの指標がチャーンレートだったりするからです。

チャーンレートは、よくBtoBのSaaSで重視される、顧客のうち毎月何%くらいが解約するかという指標で、これが重視されること自体は非常に合点がいきます。顧客に求められ、実際に価値を提供できているプロダクトなら継続的に利用(リテンション)されていてそう簡単に解約されないはずであるからです。

そういう状態になれば新規の顧客を安心して獲得していけるでしょうし、逆にそういう状態にならない限りはいくら顧客を増やしても穴の開いたバケツに水を注ぐようなもの(無駄)です。だからまずPMFを目指そうというのもよくわかるし、PMF到達していたら解約率って減るはずだよねというのもわかります。

ただ、プロダクトを改善していっていい感じのものができたとして、じゃあすぐに引き合いがもりもりくるかっていうと絶対来ないですよね?

チャーンレートを見ながらきちんと顧客に価値を提供できるようにプロダクトを改善していこうというところまではよくわかるのですが、その延長線上にPMFがあって、それが「引き合いが止まらなくなること」を意味するとなると、若干の非連続性を感じてしまいます。


ユニフィニティーの場合

ところで、当社の製品はモバイル向けの業務アプリの内製開発という体験を提供するものです。日曜大工セットを販売するホームセンターみたいなものです。

背景にあるのは、より多くのデジタルデータを扱うためにはより多くのアプリケーション(インターフェイス)が必要になるが、それらをいちいち外注していては追い付かないというストーリーです。長らくその位置にはエクセルが君臨していましたが、デジタルトランスフォーメーション的な文脈でモバイルに注目が集まっています。

根幹はいわゆるアプリ開発ツールなので、以前は基幹システムなどを構築するSIerさん向けに提供していました。ただこれは、システム全体が巨大なためユーザー課金が開始するまでの期間が長期化する傾向が強かったり、ミッションクリティカルな案件だとツールとしての制約が許容されないのでいろいろ追加の対応を求められたりと、正直ビジネスとしてはあまりうまくいきませんでした。

なのでこのツールを、SIerさんではなくエンドユーザーさんに直接提供するようにしてみたのが今の状態です。当然ITスキルのレベルがガクッと下がるので、つくるアプリのターゲットを基幹システムのような本格的なものから、現場のちょっとした報告書みたいなものに変える必要がありました。また、バックエンドの構築も難しいので、既に契約しているクラウドサービスなどと連携して使ってくれということにしました。それでも足りない部分は内製を支援するサポートサービスでまかないます。

こんな感じで1年くらい、地道にユーザー企業を開拓してはツール活用の手ほどきを行いということを繰り返しながら、20社くらいのユーザーができました。大半の会社では少なくともひとつのアプリが運用に乗っており、解約になったのはまだ1社だけです。解約率みたいな指標にすると0.5%/月です。

また、契約までの期間や契約した後アプリが完成するまでの期間も、アプリ自体のサイズを小さくしたことに比例して大体4分の1くらいになっており、販売コストもかなり圧縮されてきています。実際の開発に際しては顧客側のリソースを使うわけなので、供給力的にも安定してきた感覚があります。

これらはまあまあいい線なのではないかと自分では思っているのですが、じゃあ引き合いがさばききれない程来ているかというと、全然そんなことはありません。頑張って頑張って新規リードが月に50件くらいでしょうか。

どうしたらいいのかなということでいろいろお客様の話などを聞いていて、当社のお客様は当社を探すときに全然検索を使っていないということに気づきました。要するに何となく困っているけど、解決策については検討もつかない状態。そういう状態だと何のワードで検索をすればいいかがわからないので、人間は検索をしないのです。まあそれだと当社を知る機会がないなと。

つまりなにが足りないかというと、自分が何が欲しいかわかっていない人に価値を伝える手段なんですよね。それはプロダクトではなくマーケティングという言い方もできそうですが、プロダクトの一部だと考えるとすると、利用前UX(ユーザーエクスペリエンス)というような言い方が近い気がします。要するに利用する前の、プロダクトの概要を知った段階における期待感が低い。というかゼロなんです。何だかよくわからないから。

PMF二段階仮設

ということを考えていて思ったのが、PMFは二段階に分けるとわかりやすいのではないかということです。

仮に最初のPMFをコアPMF、二段階目のPMFをホールPMFとしましょう。

コアPMFの方は、チャーンレートなどのリテンションによって測られるプロダクト自体のクオリティです。つまり、利用中の満足度にかかわる話です。

一方のホールPMFは、コア部分の価値が、知らない人にもちゃんと伝わるかどうかというわかりやすさです。利用前の期待感の話です。

顧客が価値を感じる瞬間が完全に当初からの狙い通りというケースだとあまり問題にならないと思うのですが、いろいろ試行錯誤しながらつくっているようなプロダクトだとこの2つって意外と違うものだと思うので、なかなかPMFがうまくいかないなという方は、分けて考えてみるといいのかもしれません。

コアPMFからホールPMFへと向かう際の主要なチェックポイントは、おそらく次のようなものになります。

• 顧客はどういう体験に満足感をおぼえているか
• それはプロダクトがどういう価値を提供しているからか
• その価値をはじめての人に伝えるもっともいい方法はなにか

従って、顧客インタビューなどを実施して学びを得たうえで、顧客が実際に問合せなどに至る率(コンバージョンレート)などをチェックしながら、マーケティングEメールやランディングページに配置するコピーや製品画像をアジャストしていくのがよいと思います。

よいと思いますというか、一番うまくいってないのが何を隠そう私だと思うので、とにかくやってみます(笑)

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