『パルムの僧院』の簡単な感想

 スタンダールは日本でも格別知られたフランスの小説家ではないでしょうか。代表作『赤と黒』は「世界の十大小説」に入れられており、シンプルでまた奥深い題名が読書欲を刺激する作品です。この『赤と黒』と双璧をなす長編が『パルムの僧院』。たしか、村上龍氏の『限りなく透明に近いブルー』にもちょろっと登場しますね。
 この『パルムの僧院』は大変な傑作です……主人公のファブリス・デル・ドンゴは、『赤と黒』のジュリヤン・ソレルとは対照的に貴族で、幸福を追い求める若者です。若者らしい無鉄砲さでワーテルローの戦いに参加し、その後聖職者の道を歩むことになるものの、痴情のもつれから過剰防衛的殺人をしてしまい、逃避行の末に逮捕、投獄され、そこで恋に落ちて云々という大変な男です。このファブリスは感情に従って動くきらいがあり、それによって周囲の人物が振り回されているようなところがあるのですが、なぜだか嫌いになれない魅力を放つ主人公です。
 この小説は、バルザックが各章ごとに崇高が炸裂するとか言って褒めたと言いますが、確かに、崇高というか感情が昂るような感覚があります。特に、ファブリスが牢屋にぶち込まれてからはページを捲る手が止まらないくらい。私はファブリスと恋に落ちるクレリアがすごく好きですね。めちゃくちゃかわいいです。ただ、時代性か、男性に振り回されて不幸な目に遭う面もあり……
 また、スタンダールの小説の特徴の一つに、緻密な心理の描写がありますが、この小説でも登場人物の揺れ動く感情や止まらない激情が燃え上がるように描き出されていて読み応えがあります。『赤と黒』に比べ、戦場や宮廷の政治的な駆け引き要素が描かれている分、緊迫感のある、スリリングな描写も多くなっています。
 どこか寂寥感のある最後の頁を読み終えた際の、達成感と感動の入り混じった感覚は小説の醍醐味ですね!

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